第9章 太陽系帰還編

第422話 太陽系の情報

 放浪惑星の闇シンジケート基地から重要な情報を手に入れた。それは太陽系の位置だ。太陽系はナインリングワールドから辺境部に向かって六千七十八光年の位置にあった。


 ナインリングワールドも辺境に近いのだが、それより数千光年も辺境に位置するという事は、ほとんど航宙船が行かない宙域だ。それに太陽系には跳躍リングがないはずなので、遷時空跳躍フィールド発生装置を搭載していない航宙船は行っても戻れない。


 天神族により保護星系に指定されていると予想されるので、宙域同盟において太陽系の情報がどのように記録されているのかを知りたいと思った。そこで星間ネットワークアクセス装置を使って宙域同盟統括本部の公式記録にアクセスしようとしたが、上手くいかなかった。


 太陽系の情報については規制されており、やはり直接宙域同盟統括本部へ行って調査しないとらちかないようだ。


「宙域同盟の統括本部へ行って、調べないとダメだな」

 私の言葉を聞いたスクルドがこちらに視線を向けた。

「しかし、統括本部へ行くにはイズモでも数ヶ月掛かるわよ。惑星改造計画を進めている最中に行けるの?」


 それを聞いて思わず溜息が漏れた。

「数カ月もプロジェクトを離れるのは難しいな。……直接太陽系に行ったら、問題になるだろうか?」

「保護星系には、宙域同盟が監視システムを設置しているそうでしゅ」

 サリオが教えてくれた。


「その監視システムに発見されるとどうなるんだ?」

「警告されて、それに従わないと宙域同盟軍が派遣されるそうでしゅ」


 もし宙域同盟軍が太陽系に現れるような事態になり、遥かに進んだ文明の産物である宙域同盟の艦隊が接近中だと地球人が知ったら、地球は未曾有みぞうのパニックになる。それを避けるには、宙域同盟がステルス機能を使ってくれる事だが、宙域同盟軍はそこまで配慮してくれるだろうか?


「ゼン。地球人が他の知的生命体の存在を知ったら、どこまで大騒ぎすると思う?」

 レギナが質問してきた。

「死人が出るほどの騒ぎになると思う」

「何で死人が出るのよ?」

 レギナが理解できないという顔をする。


 銀河宇宙文明の中で育ったレギナには、地球人の気持ちを理解できないのだろう。

「地球人は、自分たちの事を宇宙で特別な存在だと考えている。つまり唯一の知的生命体だと思っているんだ」


「あっはははは……」

 サリオが笑い出した。

「おいおい、笑うなよ。地球人は自分たち以外の知的生命体を知らないんだ。そう考えてもおかしくはないだろ」


 レギナが首を傾げた。

「でも、保護星系になっているという事は、天神族には会っているのでしょ」

「地球には、様々な宗教がある。その中には神が出てくるから、その中のどれかは天神族だったかもしれない」


 宇宙文明にも宗教は存在する。だが、宇宙がどれほど広大かを知っている人々は、宇宙を創造したのが神だとは思っていない。ただ進化の究極に位置するのが神なのだと考えている者が多い。


「誰にも見付からずに地球へ帰りたかったのだけど、この状況だと無理だな」

「それなら宙域同盟の許可をもらって、太陽系に行かないと無理よ」

 スクルドに言われて苦い顔になる。


「情報を得るにしても、許可をもらうにしても宙域同盟の統括本部へ直接行った方がいいな。それには惑星改造計画を進め、軌道に乗せないと」


 その日から惑星改造計画を全力で進めた。ちなみに、闇シンジケートの基地にあったアポート装置は、宙域同盟軍が回収したようだ。これで地球人が攫われるという事はなくなるだろう。


 メルカルナ星系に様々な種族が集まり始めた。そのほとんどは難民であり、頭の痛い事態だった。その難民のほとんどがナインリングワールドから移動してきた人々らしい。


 ナインリングワールドはさらに景気が冷え込み、氷河期が来るのでないかと冗談を言う人々も居る。このままでは死亡する者が出るという難民たちの訴えを聞いた私は、デルトコロニーの運営メンバーと話し合って北海道ほどの面積があるガイル島を難民に解放する事にした。


 ガイル島に航宙船が着陸できる宇宙港を建設した。と言っても、ただ広大な土地を平らに均して舗装しただけなのだが、毎日のように連絡船が着陸して難民を上陸させ始めた。


「ゼン、ガイル島で簡易住宅が不足していましゅ」

「ナインリングワールドのメーカーに、増産の依頼をしてくれ」

「了解」


「スクルド、食料の増産はどうなっている?」

「ゾロフィスでの食糧生産は、ぎりぎりね。農地の拡大が必要よ」

「予算を回すから、農地の拡大を急いでくれ。栽培するのはトウモロコシだ」


 この宙域で栽培されているトウモロコシは、二ヶ月ほどで収穫できる。その分、土地への負荷が大きいのだが、そこは農業機械と肥料による土壌改良で対応できる。


 忙しい日々が半年ほど続き、ガイル島の人口が五百万人ほどになっていた。あまりに急激な人口増加で足りないものだらけの状態だが、何とか生活できる程度には社会基盤の整備ができた。


「これで落ち着けるだろう」

 私は機動要塞からゾロフィスを見下ろしながら言った。

「やっぱり宙域同盟の統括本部へ行くの?」

 レギナが確認してきた。

「そのために頑張ってきたんだ。後は運営メンバーに任せればいい」


 我々は長旅に出る準備をしてから、初めて銀河中心部にある宙域同盟統括本部へ行く事になった。


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