第367話 ボルガート星系の開発
サラク支援協会のメラニー理事長から支援の要請があった数日後、デルトコロニーにワースクワール族の代表を招いた。
デルトコロニーに現れたワースクワール族は、身長百三十センチほどのリス人間の女性である。そのリス人間はペイン・サンドラという名前だった。レギナたちが言っていたように本当に可愛いという感じの種族だ。
「あなたがワースクワール族の代表という事で、間違いないのですね?」
確認すると、サンドラが頷いた。
「はい。ワースクワール族の代表として来ました」
「サラク支援協会から、ワースクワール族を支援するように頼まれたので、支援の方法を検討しています。まずワースクワール族について、教えてください」
サンドラの話によると、ワースクワール族の故郷の星は、エルヴァー帝国とワータイガー族の間に起きた戦争に巻き込まれて消滅したという。
またエルヴァー族か。外見はエルフなのに、全然平和的じゃない。まあいい、それより支援策を検討しなければ。
「ワースクワール族は、どれほどの船を持っているのです?」
「五千隻ほどになります。ですが、戦争の影響で仕事がない状況です」
それほどの航宙船があるのかと驚いたが、五千隻の航宙船があると言っても動かない航宙船が多いらしい。それらの動かない航宙船は、住居として使われているそうだ。
「なるほど。その五千隻の中でルオンドライブを搭載しているのは、何隻ほどです?」
「ルオンドライブですか。……確か八百隻ほどだと記憶しています」
「思っていた以上に多いですね」
「ですが、搭載しているだけで長年整備していないものが多いのです。実際に動くものは少ないはずです」
なるほどというように頷いた。
「デルトコロニーは、ボルガート星系の第四惑星で採掘事業を始めました。ワースクワール族には、物資の輸送をお願いしたい」
サンドラが頷いた。
「承知しました。ただ我々の船は整備が必要です」
「デルトコロニーは、数多くの整備ロボットを所有している。その整備ロボットを派遣しましょう」
「ありがとうございます。それに推進剤が必要です」
「輸送の支度金として推進剤を渡します。その推進剤でデルトコロニーまで来てください」
「承知しました」
ワースクワール族の船は、第七小惑星帯に集まっているそうだ。ちなみに、ワースクワール族の文明レベルは『E』である。遷時空跳躍フィールド発生装置は製造できないが、地球よりは進歩した科学技術を所有している。
私はワースクワール族に提供する推進剤を運ぶためのタンカー船を手配した。デルトコロニーまで来たワースクワール族の航宙船は、デルトコロニーが所有する整備ロボットによって次々に整備され、ちゃんと飛べるようになった。そして、十日もするとデルトアースとデルトコロニーの間を往復する仕事に就いた。
ワースクワール族の船が、整備されて運用されるようになってから、サリオに武装輸送船への改造が進んでいるかを確かめた。
「武装化が可能な輸送船八十隻の中で、終わったのは十二隻でしゅ。武装化の内容は、小型護衛艦のために量産しているクリムゾンレーザー砲と小型荷電粒子砲、それに小型核融合炉を設置しゅるというものでしゅ」
サリオの報告を聞いて頷いた。
「火器管制システムは?」
「標準的な火器管制システムを改造して組み込んだよ。それほど性能がいいとは言えないでしゅけど、武装輸送船としては十分だと思いましゅ」
「皆、良くやってくれているけど、ナインリングワールドの経済は、どんどん悪化しているようだな」
私が言うとサリオが険しい顔になった。
「取引先が連合のコロニーだけになったので、デルトコロニーも苦しいでしゅ」
「ボルガート星系の採掘事業が軌道に乗ったら、楽になるはずだ」
「それまで我慢しゅるしかないでしゅね」
デルトコロニーの生産能力とワースクワール族の輸送能力を使い、ボルガート星系の第四惑星『デルトアース』の開発が進んだ。『デルトアース』という名前は、私が命名した。
デルトコロニーの住民とワースクワール族は必死で開発を進め、やっとデルトアースにマスドライバー基地と宇宙港が完成した。
マスドライバー基地は、採掘した鉱石を精錬した後に宇宙に打ち上げる施設である。このデルトアースは地球の重力の四割ほどしかないので、マスドライバーで宇宙に金属資源を打ち上げる事も可能だった。
鉱山の開発は、ほとんどがロボットが行うようにした。その御蔭で効率が良い鉱山経営ができるようになった。そして、精錬工場もできるだけ自動化する。
採掘事業を始めて半年ほどで売上が上がるようになった。まだ黒字化はしていないが、一年もすれば大きな利益を上げるようになるだろう。
その頃になって周辺のコロニーの中で連合に所属しているところが、デルトコロニーを訪れるようになった。
この日はサテュロス族のロード・ゼリョスがデルトコロニーに来た。
「ロード・ゼリョス、お元気そうで良かった」
それを聞いた山羊のような顔をしたゼリョスが、溜息を漏らす。
「本気で言っているのですか?」
ゼリョスが質問してきた。
「申し訳ない。今のは単なる挨拶です」
「サウレコロニーは、経済危機に陥っています」
「それほど景気が悪いのですか?」
ゼリョスが力なく
「このままでは、破綻します。立て直しに協力してもらえませんか?」
「しかし、デルトコロニーは小さなコロニーですよ」
デルトコロニーは、四十万人のワースクワール族を支援しているコロニーだという事で有名になっていた。それを知ったゼリョスが、協力をお願いするために来たのだろう。
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