第248話 グレキ要塞

 レーザーキャノンとしては破格の威力がある太いレーザー光が、対ゴヌヴァ帝国同盟の駆逐艦に襲い掛かった。それを駆逐艦が展開した鏡面バリアが弾き返す。


 モバロ大佐は鏡面バリアがグレキ要塞の神雷光を弾き返したので、心の底からホッとした。

「撥ね返せたようだな」

 部下のミョルン大尉に言う。ミョルン大尉は情報分析官である。


「でしゅが、何発も受ければオーバーヒートを起こしましゅ」

「こちらからも攻撃しゅるべきだな」

 駆逐艦は回避運動をしているので、全ての神雷光が命中した訳ではない。命中したのは二割ほどだろう。


「グレキ要塞の正確な位置を測定し、その情報を送ったのだな?」

 モバロ大佐が確認した。

「しゅでに送ってありましゅ。計算では十三分ほどグレキ要塞の攻撃に耐えれば、鉄槌作戦が成功しゅるはずでしゅ」


 グレキ要塞から、雨のように次々と高威力レーザー光が降り注いでくる。それを回避運動と鏡面バリアで防ぎながら、同盟の駆逐艦が荷電粒子砲で反撃を始めた。だが、そのプラズマ弾はグレキ要塞のバリアにより、簡単に弾かれてしまう。


 グレキ要塞の位置を連絡してから六分ほどが経過した頃、一隻の駆逐艦の鏡面バリアに神雷光が命中し、バリアが大きく歪んだ次の瞬間に消滅して船体に突き刺さった。


「モバロ大佐、駆逐艦タリコルがロストしました」

 ミョルン大尉の報告を聞いたモバロ大佐が沈痛な顔になる。ロストした駆逐艦は、カーシー族が運用する駆逐艦だった。それからも味方の駆逐艦がロストし、モバロ大佐も焦り始めた。


 被害を出しながらも対ゴヌヴァ帝国同盟の駆逐艦は懸命に戦い、十三分が経過した。その時、一隻のフリゲート艦クラスの船が、突然グレキ要塞の前方に現れてバリアに衝突すると大爆発を起こした。


「失敗でしゅ」

 ミョルン大尉が歯を食いしばりながら報告する。

「まだ分からん!」

 モバロ大佐が怒鳴るように言う。その後、二隻目の突撃船が要塞の前方に現れてバリアに激突して大爆発。

「これで終わりじゃない」

 そう言った瞬間、バリアの内側に突撃船が現れてグレキ要塞に命中すると、外壁にめり込んでから大爆発した。


 グレキ要塞の一部も一緒に吹き飛び、グレキ要塞を包み込んでいたバリアが消失する。

「全力攻撃だ!」

 対ゴヌヴァ帝国同盟の駆逐艦は、全ての荷電粒子砲をグレキ要塞に向けて発射した。要塞全体にプラズマ弾が命中して爆発が巨大な人工構造体を包み込む。


 そして、要塞内部で大爆発が起きた。四隻目の突撃船が直接要塞内部に飛び込んで、大爆発を引き起こしたようだ。


「あっ、脱出ポッドです」

 ミョルン大尉が要塞から脱出ポッドが逃げ出したのを見て大声を出した。これは勝負が着いたという事を表している。それからも無事だったフリゲート艦やコルベット艦が逃げ出し始める。


 モバロ大佐たちは、それらの敵艦を攻撃して惑星ヴァズールに落とした。わざと惑星上に落ちるように攻撃したのだ。


 ゴブリンたちの故郷は、地獄と化した。駆逐艦の中には宇宙から地上の大都市を攻撃する艦もあり、大都市のほとんどが炎と煙に包まれる。


 グラギャス皇帝は、要塞内部の爆発で死んだようだ。


  ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


 ロードパレスでゴヌヴァ帝国の最期を聞いた。

「これでクーシー族も大丈夫だろう」

 それを聞いたサリオとソニャが、嬉しそうな顔をする。


「マスター、ゴヌヴァ帝国の問題が片付いたのなら、これからどうするの?」

 スクルドが質問してきた。

「そうだな。まずはデルトコロニーの組織再編かな。我々が居なくても発展できるような組織にする」


 地球探しと魔導師修行に専念したいので、デルトコロニーの運営を運営メンバーに任せるつもりだった。


「ジャロル星系を購入したから、デルトコロニーの運営は厳しいと思うが、頑張って欲しいと思っている」


「マスター、間違っているわよ」

 私は首を傾げた。

「何が間違っているんだ?」

「ジャロル星系を購入したけど、デルトコロニーの財政には問題ないわ」


 デルトコロニーの財政と私の資産管理は、スクルドに任せている。数字の管理はスクルドが一番得意なので、そうしているのだが、そのスクルドが大丈夫だというのだから、本当に大丈夫なのだろう。


 その後、運営メンバーの組織を、コロニー行政組織に改編した。その組織のトップには、クーシー族のミシクを指名した。政治家だった彼女が適任だと考えたのである。


 ゆっくりとコロニー経営から、我々は手を引いた。そして、現在は新しい屠龍戦闘艦を建造するため、どのような戦闘艦にするか研究している。


 地球を見付けるためには、何百光年、何千光年の長い旅をしなければならないかもしれないので、それに耐えられる航宙船であり、強力な宇宙モンスターに遭遇しても大丈夫な戦闘艦である事が、要求仕様の基本となっている。


 建造するのはミネルヴァ族で、その技術の最先端を投入した船になるだろう。私が屠龍戦闘艦の事を考えているとスクルドが来た。


「マスター、またロードパレスに侵入しようとした者を捕まえたわよ」

「クルジンの手下は、死んだのだろ?」

「今度はワーラクーン族が背後に居るらしいのよ」


「……面倒臭いな。ワーラクーン族を何とかできないのか?」

「ワーラクーン族のホブス大統領を消す?」

 クルジンの部下だったリクハルドが奇妙な死に方をしたのを思い出した。

「それはダメだ。大事になる」


「事故に見せ掛けて消す事も可能よ」

「まだいい。今回は警告だけしておこう。今度手を出したら、反撃すると伝える」


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