第91話 フリゲート艦と超磁場発生弾

 両陣営のフリゲート艦が放つ荷電粒子砲で戦いが始まった。二つのプラズマ弾はバリアに当たって弾かれる。それは戦いのゴングが打ち鳴らされたかのようだった。


 戦闘機が動き出し、フリゲート艦とコルベット艦が激しい砲撃戦を繰り広げる。ゴブリン族の戦闘機十二機が、我々が戦う相手になるようだ。


 ライジン八機が速度を上げてゴブ―7に向かって飛ぶ。すると、ゴブ―7が一斉にミサイルを放った。

「各機、ミサイルを垓力収束砲により迎撃せよ」


 タリムの命令が発せられ、ライジンのパイロットはレーダーと連動している照準装置に集中した。ミサイルは確実にライジン部隊に向かっている。


 タリムは火器管制装置で自動的に割り振られたミサイルに照準を合わせ、垓力収束砲を発射した。機体が震えるのを感じた次の瞬間、垓力収束砲の砲口が淡い光を放って収束した垓力が撃ち出される。


 垓力収束砲の射程は短い。だが、射程を超えたからといって垓力が消える訳ではない。射程を超えると収束させている力が消えて垓力がラッパ状に拡散する。垓力は拡散しながら弱まるが、威力の全てを失う訳ではない。ミサイル内部の電子機器を壊すくらいの威力は残っていた。


 拡散した垓力がミサイルを捉え、その内部にある電子機器を破壊した。ミサイルを破壊したライジン部隊は、ランダムに軌道を変えながらゴブ―7に近付き、垓力収束砲を放った。


 ゴブ―7もスペース機関銃を撃ったが、ランダムに軌道を変えるライジンに命中する事はなかった。そして、ライジンの攻撃によりゴブ―7が三機爆発した。


 すれ違った戦闘機同士がスピードを落とし、九機のゴブ―7と八機のライジンによるドッグファイトが始まった。ドッグファイトというのは、戦闘機同士の戦いで互いを追い掛け合う戦闘の事である。


 ドッグファイトは、旋回性能が上回っているライジンが優勢になった。ゴブ―7が一機、二機と破壊され、慌てたゴブリンパイロットがミサイルを放った。


 それを探知したライジンはクルリと回転して機首をミサイルに向けると、垓力収束砲を撃った。ほとんどのミサイルは迎撃できたが、一発だけミサイルがライジンに命中する。命中する寸前にパイロットは脱出した。


   ◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆


 その様子を見ていた私は歯を食い縛る。パイロットは大丈夫だろうか? 

「戦闘支援ビークルが完成していたら、戦闘に参加できるのだが」

 そう言ったレギナがこちらに視線を向けてきた。


「アステリア族の複座式戦闘機を研究し、新しい戦闘支援ビークルを作ろうとしているのだけど、組み込んである機械のテクノロジーが高度すぎて一部をコピーする事さえ難しいらしい」


 ないものを考えても仕方ない。私は戦闘ルームに行き、そこで戦いの様子を確認する。一機減ったが、ライジン部隊はゴブ―7部隊を圧倒した。ライジンに搭載された照準装置は優秀で垓力収束砲の攻撃で、次々にゴブ―7を撃破する。


 ルグラン遠征部隊の様子を見ると、優勢となっているようだ。最初の段階でゴブリン族のコルベット艦が破壊され、敵側はフリゲート艦一隻、コルベット艦三隻になっている。


 一方ルグラン遠征部隊の戦力は、フリゲート艦一隻とコルベット艦三隻で変わっていない。いや、コルベット艦の一隻が被弾してエンジンが一基破損していた。その様子では時間の問題で戦線離脱だろう。


「ゼン。ジルベール提督から命令が届きました。敵主力部隊との戦いに参加してくれ、との事でしゅ」

 通信機から操縦室に居るサリオの声が聞こえた。

「えっ、こっちは文明レベルEのコロニーだぞ」

「ゼンの戦術魔導技を期待しているのだと思いましゅ」


「変に期待されても困るんだが」

「断る事はできませんよ」

「分かった。ルナダガーだけで行こう」

 改造輸送船には脱出したパイロットの捜索とライジンの回収を指示し、ルナダガーは主戦場へ進路を向けさせた。


 間近で初めて宇宙戦闘艦同士の戦いを目にした。と言っても、最大の戦力が全長二百十メートルほどのフリゲート艦なので、オーク艦隊と装甲砲撃イソギンの戦いと比べると迫力が劣る。フリゲート艦の主砲である十五光径荷電粒子砲は、コルベット艦には有効だったが、フリゲート艦にはバリアで弾かれた。


 ホブゴブリン族のコルベット艦から発射されたプラズマ弾が、ルナダガーに向かって飛んで来た。急いで加速力場バリアを展開。そのバリアがプラズマ弾を撥ね返した。


「ゼン。ジルベール提督が攻撃を急げと言っていましゅ」

「何か理由があるのか?」

「提督が乗っている旗艦のフリゲート艦がおかしいでしゅ。出力が上がらずに移動スピードが落ちていましゅ」


「あれだと集中砲火を浴びるぞ」

 サリオの情報に、レギナが一言付け加えた。

「だから、急げと言っているのでしゅ」


 私は敵のフリゲート艦に狙いを付け、超磁場発生弾の準備に入った。天震力を圧縮してゴルフボールくらいの球にすると、天震力を磁力に変える仕組みを刻む。次の瞬間、超磁場発生弾を撃ち出した。


 超磁場発生弾がフリゲート艦のバリアに命中すると、そこで磁場を形成する。強力な磁場はバリアで一部が防がれたが、フリゲート艦の電子機器に影響を与えた。バリアが消えたのだ。


 その後、バリアが消えたフリゲート艦に、ルグラン遠征部隊が集中砲火を浴びせて破壊した。


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