第13話 癒しになるのだろうかという疑問はある
ミズキはお茶を飲みながら子鬼の話を聞いていた。お父さんは怖いんだとか、村で乱闘騒ぎがあったとか。
「この前ね、おささまのおくさま見たの! キレイだった!」
「杏子さん綺麗だよね」
「
「お話したよ」
それを聞いて二雪は「あんな綺麗な人になりたいな」と言ったけれど、壱那に「無理」と即答されていた。それが傷ついたのか、「お兄ちゃんのばか!」と背中をぽこぽこ叩いている。
「だって、無理だってわかるぞ!」
「そんなことないー!」
「おや、騒がしいと思ったら子鬼が二人いるじゃないか」
その声に二人はびちりと固まる。紅緑と
「タケノコ掘りにきていたので、私の話し相手になってもらってました」
「ほう……。また竹林に入ったね、ミズキ」
うっとミズキは口を閉ざす。目を逸らす様子に紅緑はゆっくりと目を細めた。
「す、すぐ側でしたから、その……」
視線に耐えきれず、ミズキは白状する。
「紅緑、それぐらいならいいだろう。竹林の中はお前の領地なのだから」
助け舟を出すように夜哉が言えば、紅緑は「足場が悪いのですよ」と眉を寄せた。竹林の中は足場が悪く、転んで怪我でもしたらどうするのだと言いたいようだ。
「お前は過保護だな」
「大事にしてるんだよ」
「やりすぎには気をつけろよ。あぁ、ミズキちゃん。これよかったら食べて」
夜哉は笑みを見せながら包みを差し出す。手土産の団子だよと聞いて、パッと顔を明るくさせた。
「有難う御座います! あ、大福美味しかったです!」
にこっと笑むミズキに夜哉は思わず見惚れてしまった。幼く見える可愛らしさのあるその容姿にそれはよく映えていて。
「……なるほど、これは愛らしい」
「夜哉」
ぎろりと睨む紅緑に夜哉は落ち着けと慌てる。「誰も奪ったりせんわ」と言うのだが、彼はそれでも鋭い眼光を逸らさない。
二人の様子にミズキは首を傾げる。二人の子鬼は紅緑が怖いのか、彼女の背に隠れて窺っていた。
「あの、この子たちが怖がっているので……」
ミズキは壱那と二雪の肩を抱くと夜哉は「あぁすまないね」と二人に謝った。
「紅緑は怖いだろう。君たちに怒っている訳じゃないから安心しな。僕に殺意を向けているだけだから」
「え、殺意」
ミズキは何故と言いたげに紅緑を見ると彼はじっと夜哉を睨んでいる。何かしたかなぁと考えるも思い至らない。
「え、えと……おれらそろそろ帰ります。水神様、紅緑様お邪魔しました」
「おじゃましました!」
二人は頭を下げて土間を通り、小走りに走っていってしまった。また怖がらせてしまったなとミズキは申し訳なく思っていれば、続くように夜哉が「僕もそろそろ行こうかな」と呟く。
「これ以上いると酷い目にあいそうだからね」
「そうだね」
「その声は本気じゃないか。いいさ、お前はそういう奴だって分かっているから。じゃあ、また迎えに来るよ」
夜哉は「あー、怖い」と揶揄うように言って出て行った。
また迎えに来るということはまだ問題は解決していないようだ。紅緑を見れば彼は面倒そうに顔を顰めている。
はぁと息を吐いて紅緑はミズキに抱きついて、首元に顔ぐりぐりと埋めてくる。疲れているのだろうなとミズキは感じる。
「お疲れ様です」
「癒しておくれ、ミズキ」
また面倒くさいことをしにいくんだと愚痴りながら紅緑は抱きしめる力を強める。癒しになるかはわからないがミズキは彼の頭を撫でてあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます