2024年06月11日(滅びる文明と再スタート)

 私は夢を見た。家族と一緒にご飯を食べていた。親戚も集まっていた。みんな笑顔で食事をとっていた。そこに私の知らない女性が居た。

 私は、その女性とゲームをしていた。二人一組で行うゲームだ。私がキャラクターを操作し、彼女がキャラクターにヒントを与える。そのヒントを見て私はキャラクターがどういう行動をするのか選ぶというゲームだ。


 そのセーブデータに新しいデータが出来ていた。私が世界の真実を伝えた事により、新たにゲームに参加した人が居たのだ。


 私は彼女と会話していた。

「もうすぐ終わるね」

「一か月後?いや、後一年か……」

「今回のゲームはどうだった?」

「最高だったよ!これからアメノミナカヌシ様が考えたクライマックスが始まる。こんな悲劇的で絶望的で感動的な最後を体験出来て、とても嬉しい」

「文明の滅亡をそんなに喜べるのは、あなたぐらいよ」

「アメノミナカヌシ様の声を聞いてしまったら、世界が何なのか理解できてしまうからね。そうなると、自分の死さえ演出でしかない。私は人でなしと思われるだろうな」

「そうね。嘘を吐く手もあるけど?」

「良いよ。私は嘘は吐きたくない。神様の事に関しては特にね」

「そう、なら止めないわ。それと、あなたの案は採用されなかったけど落ち込んでない?」

「大丈夫、君は見てくれただろう?」

「ええ、優しいあなたが作った優しいエンディング。あなたの物語を見て、みんな愛に目覚め、文明は滅亡しない。誰も苦しまないし、みんな幸せになるエンディング。つまらないという人が多かったけど私は好きよ」

「ありがとう」


 会話を終えて周りを見ると家族と親戚に、それぞれ『生存』と『死』という表示がされていた。私には死が表示されていた。今の文明は終わりを迎える。神様的には失敗だったらしい。

 文明は滅びるが、世界が終わるわけではない。石器時代から新しくスタートするのだ。私は、今の文明が好きだし石器時代からやり直すのは嫌だった。だから、天界に戻る事を選んだ。

 家族の中で、生きる事を選んだものは性格的に行動的でサバイバルに向いていたし、趣味もサバイバルに向いてた。きっと、文明が滅びる様子をみて、その後のサバイバル生活を楽しむために生まれてきたんだろう。


『生き残るか死ぬかは全員が選べる。だが、ほとんどの者が死を選んだ』


 気が付くと、水に沈んだ床の上でテーブルを囲んで女性と話していた。遠くから千メートルを超える津波が押し寄せてきていた。

「あそこに行けば助かるよ」

 女性は、私の後ろを指さした。そこには、洞窟があった。私は、洞窟を見た後で、女性に向き直った。

「逃げないの?」

「良いよ。私は天界に帰る」

「そう、じゃあ天界で待ってるね」

「アレ?あの人が居ないけど、どうして?」

 家族と親戚の中に居ない人が気になったので聞いてみた。

「ああ、あの人たちは会うと喧嘩するから、別の場所にいるわ」

 そうか、こっちの世界には居ないんだな……。


 私は目を覚ました。彼女は天照大神様だ。どうやら、文明が滅ぶ世界では私は死ぬらしい。だが、後悔も恐怖も無い。天界に戻り、天照様と再会する。これほど、幸せな事は無い。

 世界は物語で何をしても良いという私を人は悪魔と罵るだろう。実際に自分でも悪魔のような事を言っている自覚はある。だが、これが真実なのだ。証拠を示すには私が喜んで死ぬ必要があるだろう。

 実際に悟りを開き死んで見せたのがイエス・キリストだ。同じことになるとしても私もキリストの様に死を恐れない。誰かに支配される事を恐れるのだ。


『あなたにとって一番大切なものは何ですか?』


 私にとって一番大切なものは自由だ。誰にも支配されず。誰も支配しない。そんな世界で私は生きたい。ここがそうでないのなら私は天界に戻るだけだ。

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