第16話 目標
絵里におそらくファーストキス?を貰った俺は結局一睡も出来ずにベッドを出て、リビングのある一階に降りる。
時刻は5時、当然まだ誰も起きていない。
こんな時はマグと一緒にメジャーリーグを見て過ごすに限る。
「にゃあ」
「おはよ、マグ」
ケージから出してやるとマグは足にスリスリし、媚びるように鳴く。
朝から可愛いやつめ。
俺は抱っこし、満面の笑みを向ける。
「ご飯だよー」
「にゃ」
ご飯をあげるとマグは食べる前に鳴く。
ありがとうとでも言っているんだろうか。
だとしたら相当賢い猫ちゃんだ。
「お、今日の先発スカルじゃん」
テレビをつけ、繋いであるPS5のスイッチを入れ、メジャーリーグの中継アプリを起動させ、贔屓のサンディエゴの試合を押すとちょうど今日の先発投手、左腕のスカルがマウンドに上がるところだった。
「初っ端から100マイルか、すっげ」
「誰、こいつ」
投げ込まれたクロスファイアに相手打者は反応すらできないと思っていた。
だが、相手打者は意図も簡単に弾き返し、ツーベースとした。
しかも、この打者は新人選手。
これがメジャー。
日本とは数段上の野球が海の向こうでは日夜行われている。
「マット、覚えとこ」
ツーベースを放った選手の名前をメモする。
もしかしたら将来スーパースターになって、俺と対戦するかもしれない。
「ハイドライブ!センター!!ジュニア!!」
「やった!やった!グラスラ!!やっぱりジュニア!ジュニアしか勝たん!!」
二回裏、俺の推しが満塁ホームランを放った。
俺は実況を真似て、雄叫びを上げ、ガッツポーズし、マグをギュッと抱きしめた。
「しょーくん〜」
「あ、ママ」
「何時だと思ってるの!」
「えっと、5時半」
「見るのは良いけど、朝早いんだから叫ぶのはやめなさい」
「はーい」
トントンと軽く肩を叩かれ、振り向くと苦笑いのママがいた。
俺は苦笑いを向け返す。
「よし、勝った!」
「良かったね、お姉ちゃん達起こして来て」
2時間後、試合終了。
ジュニアのホームランが決勝点になった素晴らしい試合だった。
朝から良いものを見れたな。
俺はあや姉達を起こしに行く。
「あ、おはよ、しょーくん」
「おはよ、あや姉」
2階に上がるとちょうどあや姉と鉢合わせた。
既に起きてたみたいだ。
「七瀬ー」
「起きてる〜」
「私も〜」
「ママご飯作ってるよ」
「おけ」
七瀬は入ると怒るのでノック。
珍しく起きてるようだ。
絵里が起こしたのかな。
「夏葉〜」
「おは」
「おはよ、英玲奈」
「夏葉ちゃん寝てるよ」
「起こしといて」
「おけ」
夏葉の部屋をノックすると顔を出したのは英玲奈。
髪を下ろしている方が俺は好きかもしれない。
にしても、英玲奈って、結構大きい。
「起こしに来た感じ?」
「あぁ、おはよ」
「おはよ」
柚葉は部屋から出てくるところだったらしく微笑みかけてくる。
俺は微笑み返し、隣に行く。
「決勝行ったらさ」
「うん」
「休みの日、水族館行こっか」
こ、これはデートのお誘いというやつでは!?
「いいよ!」
俺は即答し、声を弾ませた。
「楽しみにしてるね、頑張れ」
「絶対負けん!柚葉もな!」
「うん」
絶対に負けられない戦いがここにある。
全部勝って、ドリームを掴む。
それがスポーツの世界であり、俺が大好きな世界だ。
ーー柚葉待ってろよ、絶対水族館デートゲットしてやっからな。
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