第005話 それぞれの思い 王馬VS大柏
「それでは、 王馬 対 大柏 の試合を開始する。始め。」
その合図のとともに大柏が何か始めた。
「対戦相手が王馬君なんてやりにくいけどー、全力いくねー。
”
そういうと大柏はポテチを食べ出した。
試合中にお菓子って。
能力なんだろうけど大柏らしいな。
「安心してほしいでござる。拙者も大柏殿だろうと手を抜くことなんてしないでござるよ。」
王馬は木刀を取り出して構えだした。
リバイブのおかげですぐに蘇生されるのだから真剣を使ってもいいだろうけど何かこだわりがあるのだろう。
「この木刀は岩でも砕くでござる。”
能力を発動したらしいがシンプルな攻撃でポテチを食べている大柏に斬りかかる。
「ご馳走さまー。それじゃあーいくよー。せーのドーン!!!」
どうやらポテチを食べ終わったらしく、大柏も同様シンプルなパンチを繰り出した。
木刀と拳では木刀の方が有利に見えると思った瞬間、両者の攻撃がぶつかり合う。
ガキィーン
衝突音が響き渡る。
砂埃が舞う中で2人が睨み合っている。
どちらも見かけ以上の威力があるようだ。
昨日今日の言動では想像できないほどの力があるのかもしれない。
「すごい力だねー。長期戦は苦手だから一撃でノックアウトさせるつもりだったのにー。」
「そんなことを笑顔で言わないでほしいでござる。そちらこそ素手なのにその威力恐ろしいでござるな。」
牽制を続けていたが、大柏が距離を取り再度お菓子を選び出した。
どうやら能力の発動にはお菓子を食べる必要があるようだ。
これは王馬が仕掛けるチャンスだが、王馬も再度構えの体勢になって仕掛けない。
どちらも弱点は似ているようで能力の発動には時間が必要のようだな
。それは、2人も理解しているようだ。
「どうやら弱点は似ているみたいだねぇー。それなら速度重視の攻撃しちゃおー。
さっぱりとしたレモン味!”魔法のお菓子 キャンディ”」
俊敏な動きで走りだした。
速度重視らしいが全部攻撃をくらってしまえば痛手になるのは間違いない。
それでも王馬は構えをやめない。
「拙者の弱点は十分に理解しているでござるが、拙者は速さだけで押せるほど甘くないでござる。
しっかり全部受け流し切る”中級 金の番人”。」
大柏は目にも止まらぬ速さの連打を繰り広げているのだが、王馬も的確にその攻撃を受け流している。
しかし、反撃に出れない王馬を見たところどちらも互角の戦いということだろう。
どうやら大柏はこれ以上は続けても不利になるだけと判断したらしく、他の戦法に変えるためお菓子を選び出した。
「うーん、困ったなー。ポテチもキャンディもだめとなると次はどうしよー。」
どうやら戦略はあまり多くないらしいが、それはを言葉に出すのはどうかと思うぞ。
王馬もそのことに気づいたらしく今度は王馬から仕掛けた。
「ならば今度は拙者からいかしてもらうでござる。飛びかかる波動”中級 銀の風”!」
木刀が空を切るとその直後、鋭い斬撃が放たれた。
遠距離攻撃か。
安全圏からの攻撃ができるなら発動に時間の掛かる王馬にとって相性が良いの技だろう。
これは良く考えられている戦略だな。
大柏も遠距離攻撃はないものと思っていたらしく、焦ってお菓子を選び出した。
「えーと、えっと。どうしよう、どうしよう。これしかないよー。
こんがりとした焼き上がり!”魔法のお菓子 クッキー”」
そうしてクッキーを食べると大柏の前に大きなクッキーが現れた。
バキバキッ
しかし、思った以上に王馬の技は強かったらしくクッキーは音を立てながら崩れていく。
そして、技を受けた大柏は肩で息をしながらなんとか立っている。
「さすがにこれはきついねぇー。これ以上はもたないかもしれないからラストスパートってやつだよー。」
たしかに大柏は限界の近いようだ。
昨日、能力を使うとエネルギーを多く消費すると言っていたことからも、これ以上試合が長引いても勝ち目がないのは明らかだ。
それは彼女が一番理解している。
だからこそ、ここで勝負を決めたいのだろう。
「大柏殿の全力ということでござるな。ならば拙者もこの一撃に全力を注ぐでござる。」
どうやら王馬も中途半端な技では受け切ることができないと判断したらしい。
それなら王馬もこの一撃で勝負を決めたいのだろう。
ここまでは王馬の方が少し優勢のようにも見えるが、正直俺にはどちらが勝つか全くわからない。
「とろける美味しさ!”魔法のお菓子 ケーキ”!」
「敵を穿つ!”竜王の時間 上級
大柏の体は赤く輝きだし、数秒で王馬まで距離を詰めると見惚れるほどに綺麗な蹴りを見せた。
反対に王馬の技は、普段から想像もできないほど荒々しく凶暴な一太刀を繰り出した。
バゴォーン
少し離れた俺達にもその衝撃が伝わるほど激しいぶつかり合いだった。
「両者そこまで!」
どうやらこの長い戦いも決着がついたようだ。
「勝者 王馬 銀丸!頑張った両者に拍手を。」
勝ったのは王馬の方だった。
ラストの瞬間、エネルギーを使い切った大柏が体勢を崩しそれを王馬を見逃さなかった。
その一瞬、ほんの一瞬が勝敗を分けた。
しばらくすると2人が戻ってきた。
「2人ともお疲れ様。王馬も大柏も凄い能力を隠し持ってたんだな。」
素直に感心して、労いの言葉をかけた。
「負けちゃたー。悔しすぎるよ。王馬君めちゃ強いねー。」
消費したエネルギーを回復するためにお菓子を食べていた。
おどけた感じで話す彼女も本気で悔しかったのが伝わる。
「拙者はまだまだでござるよ。問題点だらけで師匠に見られたらすごい怒られてしまうでござる。でも、次勝負したときも勝つのは絶対拙者でござる。」
励ましや労いではなく宣戦布告。
戦った者だからこそかけることの出来る言葉。
その言葉は負けない、強くなりたいという王馬の熱い思いが確かに感じられた。
「負けないもん。今度戦ったらむぅーが絶対勝つよー。」
大柏も普段のおっとりとした空気の裏に隠された闘志が見える。
このクラスは確かに弱いかもしれないが、それ以上に全員が負けられない思いを秘めていることを確信した。
◇◆◇
他の試合もかなりの見応えがあり勉強になった。
能力の詳細な部分までは理解できていないが、大まかな情報を得ながら弱点になりそうな部分を探した。
それは、俺だけじゃなく他の生徒も皆、そして本人でさえも例外じゃない。
「それでは本日最後の試合を始める。 秋鹿 由美 対 京極 瞬 の2名は前に出ろ。」
ラストは、秋鹿と京極の戦い。
このクラスのトップの戦いということになる。
俺達にとって絶対超えなければいけない存在になることは間違いない。
どのような結果になるのだろうか。
クラスの全員が静かに観戦を始めた。
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