第5話「散策するはずが…」

ーーここはキッチンか、使わないだろうな…。

燭台の小さな炎がゆらりと揺れる。

この扉はトヮレット…。

 ぅっ

 かはっ

 かはっ 

 ぇぐっ   

 くっ

ーーここは、カゥチと棚が数個置いて引っ越してある。

しばらく、家具を買う手間が省けた。

ーー今夜は、どうしようか…?

いつもなら店に行って、それなりの楽しい時間を過ごしてる。

けど、相手は「あいつ」じゃなくソレイュだし…。

いつもは「狩り」をして遊んでたけど、控える事にしたし。

ーーうぅん。

考えるのに疲れた、一旦座ろう。

今日はいろいろあった。

…あり過ぎた。

…少しだけ。

……。

…。



カァカァ 

ーー……?しまった!

ちょっとのつもりがッ‼︎


ーー…日も落ちてるし、散歩に行こう。

禡車を止めると既に3人が乗ってた。

ーー??

3人から熱が出そうな視線を感じた。

向かいの女達はこちらをちらちら見てる。

左側の男は、目線をやると慌てて逸らしてきた。

…何⁈この空気⁇

注目される、でも目を合わせようとしたら避けられる。

…''〜〜〜面倒くさいぃ。

ーー景色でも眺めてようかな。  

ぅ''う。何故か熱が込められてる、視線が痛い…。


ーー2つ先の角を曲がったら、噴水広場か。

ん?人間が群がってる。

 この辺りで止めて。

ーー向かいの女達は何故か残念そうな顔をした…。

ざわざわと人間が群がってる所が気になる。 

行って見たら大道芸人が賑やかな演奏に合わせて、肩の立って瓶を投げて3つ操ってる。

「今日は、サィラスは曇ってたんですけど晴れましたぁ!

良かったですぅ!

…ブッテイルを3本操るのはけっこう楽しいんですよ。

じゃあ!

1本を高く上げます!!

あッ!」

ーーこっちに飛んでくる。

!!

「大丈夫ですか!?」

ーー返事するの面倒だな、瓶を振っておこう。

「…大事件、大失敗になるところでしたぁ!

受け取ってくれましたけど、偶然ですよぉ!

偶然そこにいてくれた!奇跡です!!

受け取ってくれた人、すごいですぅ!!

お礼を言いたいので、後で前にきて下さぁい!」

ーーしまったッ。面倒事を増やしてしまった…。

何かの準備の間、ヴァイオリンに音に合わせて体の柔らかい女が踊ってる。

続いて、ヴァンドリオンに合わせて的当てが始まった。

ーーあの男…下手だな、ちょっといらっとくる。

拍手喝采の後、ぱらぱらと人間達が散って行く。

「あなたすごいわ!あれを受け取れるなんて!

受け取ってくれてほんとありがとぉお!!!」

ーーそんなに目を輝かされても…。

「わたし、メリィ。隣りにいるのがァンジュラスのハンスよ!

「イヤァ、さっきはごめんね。驚いただろう?」

「ねぇねぇ、あなた、私達の所に寄ってって!!」

ーー返事してないのに…手を離せぇッ!

引っ張るな‼︎

「これよ!…ただいまっ!この人すごいのぉ!!

わたしが失敗したブッテイルを受け取ってくれたの!!」

「やだぁ!美しい人ぉお!!ウチの人気者になれそう!」

「ほんとだ!!君、パァラァやらない?」

 やらない。

ーー誰が好き好んで見せ物になるか‼︎

「ハンスの弟のルイ、的当てをやってるの!」

ーーあぁ、あの下手な奴。

「この子はナナ、身体の柔らかさを活かして踊っているの!他の子にも紹介したいわ!!」

ーーまだいるんだ?

…もう、勘弁して欲しい。

手も離してくれないし。

「隣りは、楽器の子がいるのよ!」

ーーへぇ。ふぅん…もう帰りたい。

「…メリィだけど、入っていい?

ねぇねぇ!この人すごいの!!

遠くから投げられたブッテイル受け取れるのよぉ!!」

ーー…話が美化されてる。

「それはすごい!!1日だけでも手伝って欲しいなぁ。」

「しかも、美しい!!お客の大受け間違いなし!!」

「ヴァイオリィナのミィカとヴァンドリオネのアレイスタァよ!」

ーー勝手にずっと盛り上がってる。

「ねぇ君、パァラァになってよォ。」

 ならない。 

ーー何回言われても嫌。

「あ、名前聞くの忘れてた!名前は?」

 モア。

「モアは、このカァド絶対似合うよぉ!」

「それに合わせるならコレもだよ!」

「このヴィザリングも!!」

「あたしのシュツゥあげる。大きさ合うかしら?」

ーーなんか、くれる事になったらしい。

 これも衣装?

「あぁ。でも、目立たないから使ってないんだ…いる?いらないよねぇ?」

 いる。

「じゃ、あげる。」

ーー盛り上がってる…しばらくほっとこう。


「はい。モア!

カァドとか揃えて入れたから!」

 じゃあ、そろそろ帰るよ。

「後1ヶ月くらいココにいるからまた来てね!」

ーー1ヶ月、気を付けよう…。


ーー今夜は、何をしようかな…。

とりあえず帰ろう。

ーーぁ…カーテンの上に布が欲しかったんだ。

今日は、まず「それ」をしよう…! 

燭台を片手に右手のドアを開ける。

持っていた紙袋を置いて、隣りの袋から布と鋏を取った。

ーー大きさはこれくらい?

あ、ぁぁー…月が隠れてしまった。

今夜は天気が良くないらしく、月が夜空照らしてくれるまで時間がかかりそう。

ーーハンマーとピン、早く届かないかな…。

この空き時間に布を窓に貼れるなー、とぼんやり思った。

ようやく月が照らされ、雲は風にどふかされたみたい。


ーー時間、思ったほどかからなかった…。

布をカゥチに置きながら、これからどうしよう…と考えた。

仕方ないので、その辺を散歩することにした。

ァン

ドゥ

トヮ

屋根から下を眺めると、男が激しく女に何かで殴られてる。

隣りの通りでは、男と女が熱く抱擁し、今にも重なり逢いそう…。

ーーいつ見ても人間は面白いなぁ。

4つ先の路地で降りた、路地に街灯はなく人通りはない。

角を曲がったら、意外な人間に会った。

!?

…コメットだ。

顔を見た瞬間、睨まれて嫌な顔をされた。

ーーこっちだっていい気はしない。

「…こんな時間にお散歩?」

 そっちこそ。

ーーふんっ。

「帰ルッ!!

アンタと話しても、この瞬間がもったいない。」

 お気をつけて。

ーー嫌な奴に会ってしまった。

しかも、時間がもったいないだって⁈

さっきまで少し楽しかったのが冷めた。

…帰ろう。

2つ隣りの通りで、何か黒い影が走り去って行くのが見えた…気がする。


ーー今夜ははずれの日か…。

そのまま部屋に帰るのも気持ちが晴れないので、屋根で月を眺めてると…。

!? 

大きく窓が開いて、ソレイュが出てきた。

ーーまぁ…ソレイュだし、気付かないだろうな。

  

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