第19話-ⅰ 開戦宣言(東雲マリア視点)


「ふぅ~」



PCの前で私、朝霞志真は一度深呼吸をする。

案件当日の最終打ち合わせを済ませて、配信開始までの休憩時間。


もうすぐ案件配信が始まる。

軽い緊張感。なんかバスケの試合前みたい。



≪志真、ファイト‼ お前なら勝てるぞ~‼≫



チラっと携帯をみればお兄ちゃんからのメッセージが表示される。…そう言えば、私のバスケの試合の時もいっつもメッセージくれてたな、お兄ちゃん。


でもIHインターハイ予選の決勝に比べれば、まだ余裕かな。



≪ありがと≫



四文字だけの返信を入力して携帯を閉じる。

さあ、ここからは東雲マリアの時間。私らしく、楽しもう。



▽ ▲ ▽



「みなさん、お待たせしました~‼ ミディアックス所属、赤城カナタです。そしてっ‼」


「こんばんは!! Alia:ReLive所属、星織カグヤです。はい、拍手!!」



【きた~】


【カナカナ~】


【はじまった!!】


【戦争の時間だああああああ】


【みんながんばれ!!】


【きちゃ】


【いきなり天敵登場で草】


【うおおおおおお】


【8888888888】


【88888】


【カグヤさま‼】



某聖杯戦争系アニメの影響を受けたであろうオープニングムービーが流れて本配信枠に赤城さんとカグヤさんが登場する。コメント欄は既に大盛り上がりで、見たことのある名前も、明らかにミディアックスさんのファンっぽい名前も、入り乱れてコメント欄を加速させている。



「うむっ!!盛り上がっていてよろしい!!それでは改めて、株式会社THSNプレゼンツ、オンラインストラテジーゲーム”ポリス・ウォーズ”事務所交流戦、ヴァーチャル・ペロポネソス戦争へようこそっ!!私達の闘いぶりをとくとご覧あれ!!じゃ、あとはカナタちゃん、よろしく」


「はいはい。今回はミディアックスとアリアリさんの3対3ガチンコ戦争です‼ 各配信者のメンバーシップ登録視聴者さんも参加する大規模企画になっています‼ さっそく今回の参加メンバーの紹介です。まずは、Alia:ReLiveの皆さんから、どうぞ」



赤城さんとカグヤさんのMCのもと、配信が進んでいく。既に本配信の同接は10万人を超えていているのに、2人ともしっかりとMCをこなしている。すごい。


ゲームの待機画面を表示しながら、私は自分の配信のコメント欄に目を向ける。



【うおおおおおお!!やったるで!!】


【お嬢は私が守る(義務感)】@Asari


【やべ、緊張してきたわ】


【まじで楽しみ】


【俺は仕事で参戦できないが、お前らお嬢を頼んだぞ!!】


【配信にコメントせんと仕事せい】


【辛辣で草】


【wkwk】



この案件が決まってから何故か私の”お嬢”呼びが定着している。私はそんなにガラが悪いつもりはないんだけど…まあ視聴者さんが楽しいならいいかな。


ちなみにリリアちゃんは視聴者さん達に”姫”って呼ばれるようになった、って言ってたなあ。


遠い目をしながらそんなことを考えていると、カグヤさんからアリアリの自己紹介が始まる。



「それじゃ、改めて。私が来た。Alia:ReLive所属、星織カグヤよ。ミディアックスのメンバーと視聴者さん達、今夜は震えて眠りなさい。…はい、次はマリアちゃん」


「…カグヤ先輩、若干滑りましたね」


「うるさいっ!! はやく自己紹介するっ!!」


「はい、皆さんこんばんは。Alia:ReLive所属、3期生の東雲マリアです。今日はカグヤ先輩の無敗伝説を途切れさせないように頑張ります。よろしくお願いします!!」


「ありがと~!! それじゃ、次はリリアちゃん」


「こんばんはー。Alia:ReLive所属、マリアの相棒、一宮リリアよ。今日のコラボで私達も”ミディアックスの天敵”の仲間入りができるように頑張ります。あんたたち、勝つわよ」


「リリアちゃんもありがと~。ってな訳で、アリアリはやる気満々だから。カナカナが参戦しないのは寂しいけど、後輩ちゃんたちを泣かしちゃうからね‼」


「……はい、アリアリの皆さん自己紹介ありがとうございました。いや~盛り上がってるね!! ウチも負けてられないってことで、ミディアックスのメンバー紹介です。みなさんお馴染み、鈴の音3姉妹です!!」


「こんばんは~。ミディアックス所属、鈴の妖精長女、兼ヴァーチャルライバーの織音ベルです。はやく人間になりたぁぁぁい!! よろしくお願いします!!」


「お姉様、それ某妖怪人間じゃない。確かにベルって居そうな名前ではあるけど。ってことで、皆さんこんばんは、ミディアックス所属、鈴の妖精次女、兼ヴァーチャルライバー、真琴リンです。今日で必ず負の連鎖を止める。みんな、よろしく。はい、最後、スズ?」


「は、はい!! ミディアックス所属、鈴の妖精三女の美弦スズです。が、がんばります!!」



今回の参加者はミディアックスの歌姫こと織音ベルさん、ピアノ激うま熱血少女の真琴リンさん、ヴァイオリンが弾けることで話題になったミディアックスの新人さんの美弦スズちゃんの通称”鈴の音三姉妹”のメンバー。


ちなみにベルさんが言い出した”鈴の妖精”枠は追加可能らしく、今はこの三姉妹を中心にミディアックスの音楽活動中心のグループができ始めているらしい…って掲示板に書いてあった。



「ほお~皆かわいいね~。お姉さんワクワクしてきちゃったなあ~」


「…カグヤ、戦う前からウチの子達を怖がらせないで。」


「カナカナ、堅いよ~。そんなつもりないって!!」


「これまで散々にウチのメンバーを倒してきた貴女に言われても説得力がないわよ。」


「まあ、負ける気はないんだけどね。事務所には1期生として拾って貰った恩があるからね。まだまだウチの代紋を汚させる訳にはいかないってことよ」


「当然、ミディアックスも負けるつもりはないわ。」


「ふふふ」



…物凄くバチバチしてる。

案件を盛り上げるための煽りだとは思うけど。



【アリアリ…ぶっ倒す…!!】


【返り討ちだわww お前らがカグヤさまに勝てると思ってんの?】


【ここで、悪夢を終わらせるっ!!】


【絶対勝つ。俺の推しを泣かせた星織を許さない】


【二度あることは三度あるってことをミディの者達に教えたる】


【三度目の正直って言葉があってですね…】


【3度じゃすまないくらいボコされてるけどね笑】


【正直、カグヤ被害者の会は結構多いイメージ】



本配信のコメント欄も盛り上がると同時に熱気を帯びてきている。

いよいよ本番開始って感じがしてきて、ドキドキが高まってくるのを感じる。



「それじゃ、赤城から最後に確認事項を説明します。カグヤは自分の枠の方に移動してください」


「はーい、それじゃカナカナ、ばいばーい」


「…はい。では、説明します。まず、敵の情報が漏れちゃうとマズいので、戦闘中は参加メンバーのコメント欄閲覧は禁止となります。同じチーム同士のメンバーでの会話はOKです。また、各メンバー、戦闘中に1回だけ【偵察】が可能です。気になるエリアを確認してください。細かいルールはカグヤがAXにポストしていた資料を基に説明します。まずは、お互いの兵士数について……」



赤城さんから一通りルールの説明がされる。

なんだかバスケや剣道とかの大会の開会式みたいな感じがする。


チャットルームに戻ってきたカグヤさん達と軽く会話をしながらルール説明を聞く。

そして、いよいよルール説明も終わり、始まりの時が来た。



「戦略はメンバーに、戦闘は参加する視聴者さんの力に掛かっています。皆さんの健闘を祈ります。それでは、戦闘開始!!」



赤城さんの宣言と共に戦争の幕が上がる。



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