第4話 チーム新人
«Gyaaaaaaaaaaaaaa!!»
ピラミッドの内部のような石畳の廊下に獣の咆哮が響き渡る。ものすごい勢いで駆け寄ってくる大きな黒い狼が俺達に向けて牙を剥く。
「来たぞ、”
「おうよっ‼」
ジャスパーの掛け声で俺とシーナが前に出る。
抜き放った日本刀で牙を受け止めつつ、俺は黒狼の腹を蹴り上げる。
「シーナっ‼」
「はいっ‼」
俺の意図を察するかのようにシーナが飛び出し、剣で一突きする。シーナの攻撃は不意を突かれた黒狼の眉間に直撃し、そのまま敵は消滅した。
「「ナイス‼」」
黒狼の消滅を確認した俺とシーナはハイタッチを交わす。同接も安定し、正直なところ攻略の難易度にはかなり余裕が出てきている。
「いい連携だ。2人の実力も申し分ない。ウチのクランに欲しいくらいだ。」
「そうだな。この調子なら25層程度までなら新人組で問題なく行けんだろ。というかレイ、お前さんのクランは男子禁制だろ。坊主は入れられんだろう。」
「それもそうだな」
戦闘を後ろで見守っていたベテラン2人が何やら会話している。さらにその横ではサラリアの2人がつまらなさそうな表情で俺達を見ている。
ダンジョンに入った俺達は、まず稼働エリアを増やす為になるべく上の階層まで行くことにした。
完全無欠のマッピング主義者である俺がゴネるのをフル無視して5人が進んでいき、俺が泣く泣くついていく。そんなことを繰り返すこと約3時間半、14層から開始した攻略は21層まで進んだ。
「つまんない‼」
「ひまー」
連戦で消耗している俺とシーナを横目に、サラリアは不満たらたらの様子だ。
「おっさん、ネコミミ姉妹が不満そうだぞ。いい加減に戦わせてやれよ」
「ああ、そうだな」
「あんた、そう言ってずっと俺達指名してるぞ? アイツらに戦わす気ないだろ」
「そうだったか?」
ジャスパーは素面でとぼける。
サラとリアは気の毒だが、しばらく俺とシーナの戦闘は続きそうだ。
「あ、そういえばコメ欄オフにしたままだった。えーっと、“コメントオン”」
【やっと気付いた】
【気づくの遅い】
【ハルくん、コメント切るなら忘れないようにね?】@Asari
【客を無視するたぁどういう了見しとんじゃワレェ!!】@夢空ハル
【配信者失格だよ、お兄ちゃん】@東雲マリア
【身内からの熱い説教ww】
【みるみる顔が青ざめてて草】
【実際、身内の面々がコメントで繋いでた感あるから…】
【#反省しろ夢空】
【なんだかんだ身内に愛されてるよなw】
コメント欄は視聴者(数名は身内)から非難轟々の嵐。これに関しては完全に俺が悪いから何も言えない。
「いや、マジですんません。Asariママ、スタッフくん、マリアさん、ありがとうございました…」
同接数が落ちていないから視聴者さんには感謝するしかない。もちろんコメント欄を盛り上げてくれていた来栖や志真、明里ちゃんにも。
【ガチの反省で草】
【これは反省すべき】
【まあ、戦闘自体は楽しんで見れたし、シーナちゃんも可愛かったぞ】
【それな】
【初見だけど戦闘シーンは普通にカッコよかった。シーナちゃんもかわいいし】
【#夢空を甘やかすな】@夢空ハル
【スタッフが一番辛辣で草】
俺がコメント欄を見て反省していると、遠くから狼の遠吠えが聞こえてくる。シーナがギュッと拳を握りしめている。
「坊主、そろそろボス部屋が近いぞ。気を引き締めていけよ」
「その発言の時点で俺達に戦わせる気しかないじゃねーか」
「そんなことないぞ」
「あいあい。俺とシーナで倒しゃ良いんだろ」
「…そういうことだ。それじゃ頼んだぞ、
ジャスパーの声を聞き終わる前に俺とシーナはボス部屋へと飛び込んでいく。…結局、迫りくる6体の巨大狼を2人で始末した俺達はゲンナリした顔で22層へと進むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます