第24話 聖女シーナ、爆誕
時間を遡ること約20時間、異世界にて。
デスポルを倒した俺の下に3人の少女が飛び込んでくる。
「ハル‼ アンタやってくれたわねっ‼」
「これにはリアも感服した」
「おう。って、2人とも飛びつくなぁ‼ 炎上するわ‼」
思いっきり抱き着いてくるネコミミ姉妹を引き剥がそうとする。クソっ、こいつら意外と力が強い…‼
「…ハル、凄かったです」
俺が助けを求めるようにシーナを見ると、シーナは俺の裾を掴んでくる。
その表情は照れて赤くなっており、非常にかわいらしかった。…って、今はそんな場合じゃない‼マジで炎上するから‼
【シーナちゃん、かわいい】
【その表情はズルいですって‼】
【夢空、許すまじ】@夢空ハル
【スタッフ君ブチギレで草】
【実際、シーナちゃんが現実にいたら国民的アイドルになってたと思う】
【ハル×サラ一派のワイ、揺らぐ】
…なんで味方のはずのスタッフ君が一番切れてんだよ。てか、来栖の奴、今日のコメントでシーナしか応援してなかった気がする。
あんのイケメン、許さねえ…
それはそれとして、今日の本当のMVPは間違いなくシーナだった。
「これは完全にシーナのおかげだよ。マジであの瞬間死ぬかと思ったし、シーナのバフが無かったら一撃で倒せてなかったんだから。ホントにありがとう。助かったよ、シーナ」
「えへへ、嬉しいです。じゃあ、ハル? 頭を撫でてください」
「へ?」
シーナがずいっと俺に頭を差し出してくる。
ウキウキといったようなシーナの表情に、俺は思わず固まってしまう。
【グハッ‼】
【あかん、尊さと羨ましさのダブルパンチで死ねる】
【かわいいいいいいいいいい‼】@Asari
【やば、撫でられる表情かわいすぎるのですが‼】@Asari
【絶対に配信レポ描く‼】@Asari
【Asariママ暴走してて笑う】
【いつもだぞ】
【今日もAsariママは平常運転っと】
【なんか私の扱い雑じゃない!?】@Asari
暴走するAsariママの気持ちもわかる。
実際マジでかわいいから仕方がない。とりあえず、このままだとシーナちゃんの笑顔と心労で俺が死ぬことになりそうだから、さっさと配信を終わろう。
「も、もう配信はこんなもんでいいかな‼ この後は多分、広場に戻って終わりだし。サラとリアもそれでいいよな‼ いいよね?」
【逃げたなw】
【必死で草】
【見どころも多かったし楽しかったぞ】
【今日も楽しかった‼】@Asari
【配信面白かったです‼ また見に来ます‼】@東雲マリア
【マリアちゃんまた燃えない?】
【ありがとー‼】
「Asariママも東雲さんも配信見て頂いてありがとうございます‼ もちろんスタッフ君も視聴者の皆も‼ マジで皆のおかげで戦闘できてます‼ それじゃあ、今日はこんな感じで、いいでしょうか!? ってことで、ばいばーい‼」
俺は右目を閉じて配信を終了させる。
これで一段落。後は報酬を分けて帰るだけだ。
報酬を分け終えた俺達はダンジョン前広場へと移動する。…今回もネコミミ姉妹は残った報酬の奪い合いでじゃれ合っている。いや、猫かよ。
「なんだか、凄く疲れたね」
「そうですね、ハル。でも、楽しかったですよ?」
「今日はリベンジだったからね。シーナが楽しめたんなら良かった」
軽い会話を交わして広場へとワープする。
いつものように夜の広場は閑散として…いなかった。
15人程の大人たちが、こちら見て立っていた。
「え、お父様?」
俺の隣でシーナが呟く。
シーナに“お父様”と呼ばれた男性も驚いたように目を見開いている。
…何となくだけど、面倒ごとに巻きこまれた気がする。
「な、何故シーナがここに…?」
「こ、国王陛下‼」
サラとリアが大慌てで頭を下げる。
…これは俺も頭下げといたほうがいいか?
「そこの冒険者よ、楽にするとよい。それで…シーナは何故このようなところにいるのだ?」
「そ、それは…」
あー、そっか。シーナは宮殿を抜け出してダンジョンにきている訳で、そりゃ父親である国王にバレたとなったら大目玉を食らうよな。
…待てよ。そしたらシーナと一緒に出てきた俺らも共犯になるんじゃないか? まあ、実際に共犯だから何も文句は言えないんだけど。
「それよりも‼ 父上こそ何故このような場所に?」
「シーナよ。言い逃れするな。お主は何故…」
国王がシーナを問い詰めようとした、その時、老齢の神父が国王を宥める。
そして、小声で国王に何かを囁いている。それを聞いている国王の表情が、驚愕へと変化する。
「なっ、まさか、シーナが?」
「左様にございます」
「信じられん。まさか、皇女であるシーナが
…いま聖女って言った? んで、その聖女様がシーナ?
というかこの国王様、神父が言ってること筒抜けなのですが。完全に俺達に聞こえてる。
「へ? 私が聖女?」
ほら本人にも聞こえちゃってる。
多分だけど、デスポル戦の時の
とりあえず今のうちにサラに聖女のこと聞いとこ。
「なあ、サラ」
「なによ。この状況でよく喋りかけられるわねっ‼」
「聖女って、なんだ?」
「アンタってやつは…」
小声で話しかける俺を見て、サラはやれやれと額を抑える。完全に呆れられてる。…いや、仕方ないじゃん‼
「“聖女様”はダンジョン攻略の導き手を担う存在。数十年に1度突然現れる、いわゆる攻略組と一緒に戦って、ダンジョン攻略を一気に進める、そんな役割を持った人のことよ。」
「なるほどな」
「なるほどな、じゃないわよ‼ 普通は一般の冒険者が覚醒して聖女様になるはずなの‼ 皇女のシーナ様が聖女様にもなるなんて、有り得ないことなのっ‼」
「まあ、でも実際起こってるしな。シーナも冒険者みたいなもんだし」
「アンタねえ…‼」
サラが顔を赤くして震える。
いや、流石に最後のは冗談だから。だから蹴りを入れるのをやめて欲しい。
その時、国王からの視線を感じる。
…というか、めっちゃ睨まれてる。これは…死んだな。
「…それで、そこの者達は何者だ? まさかシーナをダンジョンへ連れ出したのではあるまいな?」
「違います‼ 彼らはダンジョで襲われていた私を助けて下さったのです‼ それから、私が頼んで一緒にダンジョン探索を行っていたのです。お父様、私は、自分の意志でダンジョンに入ったのです」
確かに優等生タイプのシーナがこんな無茶するとは考えづらい。
俺達に唆された方がストーリーとしてしっくりくるのも分かる。それでも、シーナは毅然とした態度で国王に食って掛かる。
「し、しかし…シーナがこのような事をするとは…」
「それに関しては申し訳ございません。姉上や兄上のようになりたくて、そう考えてダンジョンに入ったのです。自覚のない行為だったと、思っております」
「…そうだったか。いや、シーナが王家としての振る舞いに悩んでいることは感じていた。そこの者達も、疑って悪かった。ただし、シーナ。お前の行動が不用意であったことに変わりはない。反省しなければならないぞ。」
「…申し訳ございません。」
いい父親だ。人格者と言われるだけある。
それにしても、このまま解散って訳にはいかないよね、多分。
「それでは聖女の確認も取れた。シーナも宮殿に帰るぞ。司教達も深夜にすまなかった。今後については後日検討しよう。それと、そこの者達も一緒に来て欲しい。流石にこのまま返すわけにはいかない。」
やっぱりそうなりますよねー
地下牢行きになるなら、せめて布団だけでも欲しいな…
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