第91話 またまた広間へやって来た誰か

『あら、どうしたの?』


 俺達のクッションを並べた後、そのクッションをじっと見ていた双子。俺達のクッションは檻の端の方、そして双子の檻の方へ置いてあったんだ。だから双子シードラゴンからはとっても近くに見ることが出来て。


 最初俺は、双子シードラゴンはクッションを見るのが初めてで、興味があってクッションを見ていると、そう思っていたんだ。

 だけど途中でクッションを見ながら、何かを話し始めた双子。それからすぐにスカーレットさんを呼んで。何かを訴え始めた。ただスカーレットさんは、ユースタスさんみたいに、双子の話しは分からなくて。


『何かしたいの? もしかして遊びたい? でも今はダメなのよ。先に色々準備しないと、グレンヴィル達はここへ来たばかりだから。後でゆっくり遊びましょう?』


『きゅ!!』


『くきゅ!!』


 首を振る双子。どうやら遊びたいわけじゃないようだ。じゃあなんだ? 今の状態だとユースタスさんに聞けないんだよな。


『きゅ!!』


『くきゅう!!』


 その場でクルクル回る双子シードラゴン。それからしっぽでクッションを指して。やっぱりクッションが気になるのか? スカーレットさんもそう思ったみたいで。

 でも流石にクッションを水の中へ入れるわけにはいかないからな。スカーレットさんはクッションはダメなのよ、と言ったんだが。


 それにも首を振った双子シードラドン。今度は自分達の寝床にしている岩の方へ。そうして岩を指した後に、今度はクッションを指してきて。それから岩をこっちに向かって押す動きをしたんだ。

 

 流石にここまでくると、双子シードラゴンが何を言っているのか、何がしたいのか、分かったような気が。

 それに俺のモコモコ達と小さいフルフルも。こっちがこうで、向こうがこうで、という感じで、一生懸命説明をしていて。その動きが双子シードラゴンの動きと同じだって。岩とクッションの違いはあったけど。


 おそらく双子は自分の寝床を、俺達の近くに移動してくれと言っているんだろう。檻からそう簡単に出ることはできないけれど、少しでも近くにいたいと。

 今までこの広い広い広間に、ポツンと置かれた檻の中。スカーレットさんが時々来てくれていたとはいえ、双子はほとんどの時間を2匹だけで過ごしていて。


 そんな時に俺達がやってきたんだ。少しでも近くに寄って、一緒に過ごしたいと思うのは当たり前だろう。


『ああ、そういう事ね。近くで一緒に寝たいのね』


 思い切り首を縦に振る双子シードラゴン。それに続くモコモコ達と小さいフルフル。スカーレットさんも俺と同じだ考えだった。


 『分かったわ、後で直してあげる。今はこっちの準備をさせてね。あなた達が一緒に遊べるおもちゃもあると良いのだけれど。何かないか後で調べてみるわね』


 喜ぶみんな。と、そのときだった。俺の頭の上に乗っていた、リーシュ姿のユースタスさんが、パッと下に飛び降りたかと思うと。モコモコ達に俺の方へ戻って来いみたいなジェスチャーと、魔獣言葉で何かを言って。急いでみんなが俺の所へ集まった。


 その後ユースタスさんは俺の肩へ。何だ? 何があったんだ? もしかして今度こそジェフィリオンが来たのか!? 双子のシードラゴンは俺達を不思議そうの見ているけど。

 スカーレットさんは、そんな俺たちの動きに気づかずに、ドアギリギリの場所へ。そしてそこへ座ると、また何かを始め。

 

 と、スカーレットさんが離れて、しかもこっちを見ていないから、やっとユースタスさんが俺に話しかけてきた。


『双子はまだ気づいていないようだな。もしかしたらまだ小さいせいで、しっかりと気配を感じる事ができないのかもしれない。または時々は感じられるのかもしれないが』


 何だ? やっぱり誰か来るのか? ジェフィリオンか!?


『グレンヴィル、いいか。今まで以上の静かにしているのだぞ。お前達もだ。これから来る者が誰であろうと、騒がず余計なことをするんじゃない。……グレンヴィルよりもお前達の方が問題か? 良いかお前達、いつものような警戒する動きは禁止だ。何をされるか分からないから』


 最後の方は魔獣言葉だったから分からなかったけど、モコモコ達も小さいフルフルも、ユースタスさんの言われた後、何でだ? という表情をした。が、それでも頷き、俺の隣に静かに座る。


『はぁ、私達以外は問題がないが。私達はどうなるか』


 本当に誰が来たんだ? ユースタスさんの感じ、俺達にとっては、あまり良い相手ではなさそうだ。でも俺達以外は問題がないって言っていたな。と言うことは、ジェフィリオンなら全員にとって問題だから、やはりジェフィリオンじゃない?


『来るぞ。良いな、静かにしているんだぞ』


 そのユースタスさんの声から数秒。ドアが開く音がして、俺達は横を見る。急いで集まったから、体が横向きのままだったんだよ。まぁ、それは良いとして。ドアが開いて入ってきた人物。


 入ってきたのは男の人だった。背はかなり高く、別に太っているわけでも、痩せているわけでもなく。ちょうど良い感じにすらっとしていた。それから髪の毛の色は銀髪で、目の色も銀色だった。服装は全体的に白が中心だったけど、黒色も入っていて、格好の良い洋服を着ていた。


 男の人は部屋に入るとすぐに、部屋の中を見渡し。最初はスカーレットさんを、その後俺達を見てきたんだけど。しかもかなりジロジロと見てきて。


 何だよ、初めての奴に、そんなジロジロと見られる筋合いないんだが? しかも怒っているとか、嫌っているとか、嫌な顔をして見ているんじゃなく。ただただ無表情で見てきたんだ。なんだか面倒くさそうな人が入ってきたよ

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