第57話 帰って来た父さん達と警戒態勢

 次に日、いつも通り起きると、これまたいつも通り、母さんはもう起きていて部屋にはおらず、代わりにいつも通りにリズがいてくれた。そして着替えて食堂へ行けば、ちょうどみんなのご飯が終わる頃だった。


「ぱぁ!! かりゃ!!」


『グレンヴィル起きたか。パパはすぐに帰ってきただろう』


 いつもの席に父さんが座っていた。父さん、本当にすぐに帰ってきたな。


『グレンヴィルも、いつも通り元気そうだな。俺がいない時に、誰かにいじめられたり、酷い事を言われたりしなかったか。そんな奴がいれば、俺が叱ってやるからな』


 よく見たら小さいフルーが、父さんの足元でご飯を食べていた。


「かりゃ!!」


 もちろんフルーにもお帰りを言う。うん、フルー、俺は誰にも虐められたり、酷い事を言われたり、そんな事はされていないぞ。

 この家には俺をいじめるような人達はいないし、それどころかとても良くしてもらっているからな。ついでに、俺にはまだ友達もいないから、そっちも問題なしだ。


『かりゃって何だ?』


『ああ、お帰りって言ったんだ』


『そうなのか? よく分かるな』


『じっと一緒にいるからな。なぁ、グレンヴィル』


「たぁ!!」


『グレンヴィル、パパがいない間、良い子にしてたか』


「たぁ!!」


 それはもちろん! というか父さん、昨日別れたばっかりだからな。姉さんがいつもみたいに、何かをやり過ぎる暇もないくらいに早く帰ってきたし。

 

 でも、父さん何もなくて良かったよ。行く時も帰ってくる時も、今は何があるか分からないからな。俺達の知らない所で何かあったら大変だったよ。


 父さんはこの後、仮眠をするらしく。ただその間、俺と一緒にいたいってことで、そのまま父さんの寝室へ移動。今日は父さんが俺にご飯を食べさせてくれた。その後は父さんのベッドの近くで俺は遊び、父さんはすぐに眠りにつき。


 そして父さんが寝てからすぐに変化が。窓の外を見ていたんだけど、ドームを包んでいる結界が前よりももっと白っぽくっていうか、厚くなった感じがして。

 これは後からユースタスさんがきた時に、父さんと話しているのを聞いたんだけど、なんか結界を重ねたって。もっと頑丈にするために。


 向こうの、ブレンデンさんが住んでいる大きな街でも、結界を厚くしたらしい。それだけシードラゴンは危ないってことなんだろう。大きさがルスよりも大きいって話しだからな。

 みんなシードラゴンが来たら、一緒に戦うけど、最前線にルスが立ってくれるって。ルス、ありがとう!!


 お昼近くなって、母さんが父さんを呼びに来た。少ししか寝ていないけど大丈夫だろうか? もう少し寝てた方が。


『この生活も久しぶりだな。まぁ、私達はそんなに睡眠しなくても良いから問題はないが』


『その場で立ったまま、5分だろうと何分だろうと、さっと寝られるし。何日も寝なくても平気だものね』


『グレンヴィルが来てからは、グレンヴィルが人間だから、規則正しい生活になったけどな』


 え? 寝なくても大丈夫なの? しかも何日も? 挙句立って寝るって? それで大丈夫なら良いけどさ。でも疲れているなら、なるべく寝た方が良いよ。


 父さんは俺を抱きしめた後仕事へ、俺はそのまま遊びの部屋へ。ユースタスさんが来てすぐにくれて、ユースタスさんの準備は、完璧に終わったらしい。

 ユースタスさんの部下への指示もしっかりしてきたから、これからは常に俺からは離れないですむって。


 母さんが俺と寝ている時は外で待っていてくれるし、後は母さんと交代で休むから大丈夫だって言っていたけど。この世界の人達はみんな、あまり眠らないんだろうか?


 こんな感じで、シードラゴンに対して、着々と準備をした父さん達。その間にもシードラゴンはしっかりと、横にも斜めにもズレることなく。俺達のいる国に真っ直ぐ向かって来て。


 父さん達はいよいよ、間違いなくここへくると判断。父さんがブレンデンさんの所から帰ってきて3日目。父さん達はそれぞれの持ち場について、シードラゴンを待つことに。シードラゴンがこの国のどこへ来ても良いように、警戒態勢に入った。


 俺と姉さんはといえば、すぐにどこへでも避難できるようにって、玄関に1番近い部屋へ移動。今日から全てが終わるまで、この部屋で生活することに。


 いつもはちょっとした来客用に使っている部屋で、ほとんど物がないから、俺や姉さん、モコモコ達と小さいフルフルの物を用意しても、全然問題なく全てが収まった。ほらベッドとかおもちゃとかな。

 まぁ、もともと1つ1つの部屋が大きいから、荷物があまりなければ、これくらいなら余裕だよな。


 ご飯は、何も起きていなければ、料理人さんが普通に作ってくれるけど。もしそれができなくなっても大丈夫なように、俺達の側にいてくれる人達が、空間魔法で保管してくれている。


 ああ、そうだ。空間魔法の荷物入れだけど、食べ物を入れても大丈夫だった。いつ出しても温かいままだし、腐りもしない。出来立てほやほやを食べられるんだ。だからいくら入れても問題なし。


 俺の宝物は父さんにしまってもらった。記念に作って貰った、みんなの姿を彫った石を埋め込んだブローチ。あれは今付けているけれど。他のウォーターホースの羽や、パルの貝殻をしまってもらった。

 

 姉さんもいくつかしまってもらっていた。モコモコ達や小さいフルフルもだ。モコモコ達と小さいフルフルは、俺よりもたくさん、父さんに渡していたな。

 お気に入りのボールとクッション、それから俺の形をした人形を、それぞれ母さんに作ってもらってもらったんだけど、それもしまってもらっていた。

 

『ケニーシャ、みんなの話しをよく聞いて、逃げるって言われた時は、すぐに逃げるのよ。それからもし逃げる時、バラバラになってしまったら、どこへ行くか覚えているわね』


『うん! あたしいっぱい、れんしゅうした! トトおばあちゃんのおうちにいく!! まっすぐ、トンネルとおる!!』


『そうよ。ちゃんと覚えていて偉いわね。』


 ん? トンネル?

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