第5話 浜松のリアル

 やばい。浜松、めっちゃ都会やん。


 これが私の第一印象。


 私は完全に浜松を舐めていた。


 くっ……我が故郷は電車に乗れば三十分で都会に出られるが……完全に負けたぁあ! 完敗だあ!


 と、勝手に敗北感を抱きながら、ひとまず予約した宿へと向かう。


 ビジネスホテルっぽいお宿のシングル。


 まあ、必要な寝床、トイレ、シャワーバスがありましたのでね、もう完璧ですな。


 一日目は終日お天気が良く、気温も高かったので、まずはシャワーで汗を流すことに。


 鰻に失礼があってはならぬからのぅ……さぁて、どこの店の鰻にしようか……むふふ……


 同僚の浜松出身美女Mさんからは、三つの店を教えてもらっていた。


 ちなみに私の記憶力はあまりよろしくない。


 覚えていたのは三つの内の二つのみであった。


 さて、時刻も18時近くになれば外はすっかり真っ暗だ。


 浜松城と元城町東照宮まで、歩けない距離ではないよ、とグーグルマップさんがおっしゃる。


 疲労し始めている頭の中に、薄らぼんやりとライトアップされた東照宮が現れた。


 いっちょ散歩してみるか……途中で断念して駅に向かってもいいし。


 はい、断念しました!


 グ、グーグル先生、話ちゃいますやん! この時間じゃ、ぜんっぜん着かないですやん! どういうことですのん?


 という状況に陥ったのと、進もうとした先が暗かったからです。


 注1:鹿嶋は暗闇恐怖症です。


 はい、Uターンしまして駅に向かいました。


 目指すはマツキヨ。


 そう。我が家の近所にもあるドラッグストア。


 鰻屋じゃないんかい!


 とツッコんだそこのあなた!


 楽しみは最後にとっておくのですよ……むふふ……


 無事にマツキヨで入浴剤やらノンアルコールビールを買い込み、その後お土産を買うためにキオスクへ。


 浜松土産といえば、鰻パイ以外にありえない!


 そんな方、私以外にもいらっしゃいますよね? ね? え? いないの? おかしいな……


 あれ、なにこの鰻パイ……小さい上にお高い……え、お兄さん、それ買うの? 高いし小さいよ、この鰻パイ……


 注2:こちらの鰻パイは、後ほどエックスのフォロワーさんからの情報により、真夜中のお菓子だったのではないか、と推測されます。


 余計な事を見知らぬお兄さんに(無言)アドバイスしつつ、店内に足を踏み入れると、ありました! 私が知ってる鰻パイ!


 昔から変わらぬイメージのパッケージ。夜のお菓子という大胆な五文字も変わっていない。


 これこれ、これこそが鰻パイですわよ! おほほほほ! 買うわよぉ!


 と鼻息荒くお土産を購入した後、さあ、お楽しみの鰻屋さんへレッツゴー! イエーイ!


 さて、どっちのお店にしよう……F店かY店か……


 事前にメニューをチェックしといたけど、どっちのお店の鰻も美味しそうだったんだよな……

 あ、グーグルマップさんの履歴にF店さんが残ってるから、こっちにするか……テクテク……ん? あ、あれは!!


 Y店の看板が! すぐそこに!


 私の足は吸い込まれるようにY店へと向かった。


 おばちゃん一人なんだけど、肩身狭い雰囲気だったらどないしょ……という心配は、まったく無用の店内の空気!


 えがったぁ! 鰻食べるぞう!


 迷わず注文したのは、Y店さんおすすめのメニュー。 三種類の味わい方が楽しめるひつまぶしである。


 うなーぎーこくさーんうなーぎーおちゃづーけー(ドンドコドンドコ鰻のカムイに捧げる舞をイメージしてくださいね)


 と頭の中で踊り狂いながらお料理の到着を待つ私。


店員さん「後ろから失礼します」


(そんな、失礼だなんて……いくらでも失礼してください、鰻ならウェルカムですわ!)


 と私の目の前に運ばれてきました、お上品に桶の中で鎮座していらっしゃるご飯と鰻! しかも国産!(ややしつこい)


 捻くれ者の私は単純にルールに従うのがあまり好きではないのだが、やはりここはお店屋さんのおすすめ通りに食べるべきであろう。


 ひとぉつ! お櫃からよそって普通に食べる。

 ああ、タレのしみたご飯に柔らかく香ばしい鰻……脂の甘さもうんまい!


 ふたぁつ! お櫃からよそったご飯と鰻に、薬味(わさびとネギ)を添えて食べる。


 ふむふむ……こ、これはまたさっぱりとした……脂っぽさが緩和されて、めっちゃ食べやすいぞう!


 みぃっつ! 出汁をかけてお茶漬けに。

 お、お腹くるし……いや、まだお茶漬けコースが待ってるんだ、早く胃から先に進んでくださいよ、頼みますよ。後がつっかえてるんで。


 とぽとぽとぽ……どきどき……ずるずる……んま……出汁とも絶妙に合う……うまうま……うん、残しておいた薬味を乗せてもうんまい……


 結果。鰻はうまい。薬味を加えるとさらに食べやすくなる。お茶漬けもいい。

 ということが判明。


「ごちそうさまでした!」


 私は喉元に迫る鰻をなんとか押しこめながら、店を後にしたのだった。


 ヨロヨロ。


 ※第6話につづくよ※

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