077.再。ウサギダンジョン
翌日、ミニックは再度ウサギダンジョンにきている。なんのためかというと天声ポイントを稼ぐためだね。このダンジョンには最奥のボスを除いて22種類の魔物がいるらしいからそれを制覇する予定だ。
結局昨日はミニラビットとツノなしホーンラビット、フォーチュンラビットだけしか倒せなかったため天声ポイントは5ptしか稼げなかった。2pt多いのはランダム獲得の分だね。でも結局500匹以上倒したのに2ptだけ。やっぱり低ランク魔物のポイントのランダム獲得は確率が低いね。
今日はミニックが月影の耳飾りをつけているため1階層での魔物とのエンカウントはほとんどなかった。新規の魔物も出てこないため特に魔物を倒したりせず2階層に進んだ。
2階層ではブリトルバニーとホップリングというGランクのうさぎ型魔物が出現した。どちらもミニラビットよりちょっと大きいくらいのただのうさぎでミニックの弾丸一発で黒い霧に消えた。どちらもドロップはうさぎ肉だった。
3階層ではシンギングラビットとシャープホッパーというFランクの魔物だった。シンギングラビットは歌を歌ってくるウサギ型魔物で歌を聞き続けると眠りの状態に落ち入ってしまう厄介な魔物だった。ミニックも一度だけ眠り状態に落ち入ってしまったときはちょっとヒヤヒヤした。シンギングラビット自体の攻撃力が高くなかったためシンギングラビットの体当たりで起きたミニックが弾丸を撃ち込んでことなきを得た。これからは状態異常に気をつけなくちゃいけないと強く思ったね。ちなみにドロップアイテムはラビットピローという枕だったよ。
シャープホッパーは鋭い爪と牙を持った魔物だった。初めて攻撃力のありそうなウサギ型魔物にちょっとミニックが怯えたというアクシデントはあったけど無事弾丸一発で仕留めていたね。ドロップはシャープネイルという爪の素材だったよ。
4〜5階層ではラピッドラビット、ラビットン、ホーンラビット、そして懐かしのキラーラビットが出現した。ラピッドラビットは素早い動きで撹乱してくる魔物らしいけどミニックの早打ちには対応できず撃沈。ラビットンは1メートルくらいの大きさがあったけどそれだけだったので脳天に一発で消滅。ホーンラビットとキラーラビットは牙があるかないかくらいの違いしかないため違いを見分けるのが困難だったことを除けば簡単に倒せてしまった。
ドロップアイテムはウサギ肉とツノの素材だった。
そして5階層のボス部屋。そこには銀色に光るウサギが部屋の中に鎮座していた。
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種族:シルバーラビット
状態:通常
銀色の毛皮を纏ったウサギ型魔物。Dランク。その銀色の毛皮は強固で金属も通さないほど硬い。その強靭な肉体で体当たりをかましてくる。銀塊やまれに銀兎の毛皮をドロップする。
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シルバーラビットというDランクの魔物らしい。なぜにDランク? このダンジョンの5階層のボスはEランクと聞いてたんだけど? またイレギュラーかな? それとも〈天運〉さんのいたずら?
『固そうな魔物だね』
『なのです。弾丸が通らないかもしれないのです?』
『一回試しに打ってみて通らなかったら部屋から出て避難かな』
『わかったのです』
ミニックがボス部屋に入る。するとシルバーラビットがこちらにものすごいスピードで駆け寄ってくる。体当たりをする気のようだ。
ミニックが銃で応戦する。しかしシルバーラビットは弾丸を弾いてミニックに迫ってくる。
『ダメなのです! やっぱり効いてないのです!』
『ボス部屋の外に逃げて』
『わかったのです!』
ミニックがボス部屋の外に出た。ボスは部屋の外には出てこれないのでこれで安心だ。
『やっぱりダメージが通らないね』
『なのです。硬い毛皮なんて反則なのです』
あとはやっぱりミニックの服装が不安すぎる。ヘタをするとシルバーラビットの体当たりでやられてしまうかもしれないくらいに防御力が低いからね。
『やっぱり、ここは〈天の声〉の副技に頼るしかないね』
『〈天授〉なのです?』
『ううん。ここは〈天与〉を使おうと思う』
『〈天与〉? なのです?』
ミニックには使ったことがある〈天の声〉の副技については一応説明済みだ。だけど〈天与〉はまだ使ったことがなかった。それを使おうと思う。
『〈天与〉は決まった技能や魔法なんかを取得できる副技だよ』
『そうなのです? それなら便利そうなのです。なぜいつもはそれを使わないのです?』
『1度取得したことがあるものしか使えるようにならないんだよね』
『よくわからないのです?』
『まあ使うのに条件があると思っておけばいいよ』
〈天与〉の話をしようとすると死に戻りとかの話もしなくちゃいけなくなるからね。ちょっとめんどくさい。また機会があれば話そうと思う。
ちなみに天声ポイントは現在13pt。取得したい魔法のポイントには届いている。
『じゃあ〈天与〉を発動するよ!』
『わかったのです!』
<供与する技能、魔法または聖遺物を選択してください>
ヴォイドイレイサーを選択。
<天声ポイント10ptの消費を確認しました。〈天与〉を開始します……完了しました>
これで強力な魔法、ヴォイドイレイサーを手に入れた! あとはミニックにこの魔法を共有する必要があるね。
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魔法名:ヴォイドイレイサー
対象に触れることで対象を消し去ることができる。消し去る範囲は込めた魔力量に依存する。
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『なるほどなのです。この魔法を銃弾に乗せるのです?』
『そうなるね。一応練習しておく?』
『大丈夫なのです!』
そういうとミニックが精神集中を始める。魔力を弾丸に溜め込んで準備万端だ。そのままボス部屋に再度侵入する。シルバーラビットがミニックに駆け寄ってくる。
「ヴォイドイレイサーなのです!」
迫ってくるシルバーラビットに向かって弾丸を撃ち放った。その弾丸はシルバーラビットに当たるやいなや魔法のエネルキーによってその顔面を消失させた。顔なしになったシルバーラビットがズシャっと音を立てて倒れ込み光となって消えていく。
<天命ポイントが更新されました>
「つ、強いのです。やっぱり悪魔さんの魔法は怖いのです」
ミニックはあまりの威力にちょっとビビってるようだね。だけどこの魔法は込める魔力の量によって消し去れる範囲が変わるらしいからもっと広範囲を消すこともできるはずなんだよね。それは要練習かな? ついでに即時詠唱と二重詠唱もできるようになってほしいところだね。できるなら他の魔法も自力で獲得できるようになってほしいし。
まだまだやることがいっぱいだ。
『とりあえず次の階層に行くよ?』
『わかったのです』
魔石とドロップした銀の毛皮を拾って6階層に続く階段を進んでいく。
その時だった。突然、ピンク色の目をした二足歩行の白ウサギがささっとそばを駆け抜けようとしてミニックにぶつかった。その拍子にミニックは小さな麻袋に入っていたアイテム、ロイヤルゴールドキャロットを落としてしまう。
「まずい! まずい! 遅刻だぁ! あ、美味しそうなにんじん発見! ラッキー!」
そのウサギはなんと喋りながらチョッキから懐中時計を取り出して、ミニックが落としたロイヤルゴールドキャロットを拾い上げながら走り去っていこうとする。
『あ、泥棒!』
「待つのです! それはぼくのにんじんなのです!」
ウサギが生垣の下の大きな巣穴にぴょーんと飛び込むところを見届けて、次の瞬間、ミニックもそれに飛び込んでいった。その巣穴の入り口はミニックが入っていった後にその姿を消していった。
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