2章 ミニック編

063.再度の転声

063.再度の転声


 ……どういうこと?


 そう思った時には景色が変わっていた。


 目の前に見えるのは祭壇。その祭壇に立つ司祭のような人が何事か呪文を唱えていている。司祭の服はハモニス教会のものとは異なるので、この司祭は違う教会に所属しているみたいだ。

 その祭壇の前で白髪の少年が手を組んで祈り、司祭が呪文を唱え終わるのを待っているように見える。随分と熱心に祈っている。組んでいる手が強く握りすぎて赤くなっているほどだ。しばらく見ていると司祭の詠唱は終わり、わたしにはお馴染みになった画面が表示される。


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 名前:ミニック

 種族:小人族

 技能:全銃技

 魔法:無

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 この画面は祈っていた少年のステータスみたいだ。少年はミニックという名前で小人族らしい。小人族は初めて見た。言われてみればアルトと比べても頭2つ分以上小さい気がする。少年というよりも幼年と言った方がよさそうなくらいの大きさだ。


 多分この少年が今受けているのはアルトの言っていた祝福なんじゃないかな。でもハモニス神は人族以外に祝福を与えないって聞いたけど。小人族って亜人だよね? 別の神様は亜人にも祝福を与えるとか? まあ、それはいいか。


 あとはステータスに恩恵が見えないのがちょっと気になるけど。


 そんなことを考えながら見ていると少年が期待と不安の入り混じった目でステータスと司祭を交互に見ていた。


「この結果は、どうなのです?」

「今確認しています。……〈全銃技〉? そんな技能スキルは聞いたことがありません。それに魔法も無いようですね。残念ながらあなたは忌子のようです」

「そんな! こ、困るのです」

「そう言われてもわたしには祝福をすることしかできませんので。ではこれで儀式は終了です。速やかに出て行ってください」

「待ってくださいなのです!」


 司祭はミニック少年をおいて部屋の奥の方へと消えていく。ミニック少年がそれを追おうとするが周囲の人たちに抑えられて礼拝の場から引きずり出されていく。


 わたしはそれを終始冷めた目で見ていた。ミニック少年が追い出された後もアルトのことが気にかかっている。わたしはアルトから50メートル以上は離れられないはずだから近くにいるはずだ。急に場面が変わったのにも何か意味があるはず。


 急に引っ張られるような感覚に陥った。アルトから離れすぎたときに陥る現象だ。つまり引っ張られた方に行けばアルトがいるはずだ。その道はちょうどミニック少年が引き摺られていった方向と一致している。


 わたしは急いで引っ張られた方に進んでいく。ミニック少年が教会の扉の前で立ちすくんでメソメソ泣いている。だけどわたしは彼に用はない。アルトを探さなければいけない。


 目の前50メートルは視界を拒むものがない。しかしアルトを見つけることはできない。というよりミニック少年以外に誰もいない。

 一応最初に引っ張られた方向とは逆側へ進んでいくが今度はその逆に引っ張られてしまう。


 ……もう現実逃避はやめよう。流石にもうわかっている。どう考えてもわたしは今ミニック少年の方に引っ張られている。


 わたしはミニック少年に〈天眼〉を発動した。


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 名前:ミニック

 種族:小人族

 技能:全銃技

    天の声

 魔法:無

 恩恵:自由神の勇者の種

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 やっぱりね。ミニック少年の技能スキルに〈天の声〉がある。一応〈天の声〉も確認してみる? 多分無駄骨になるけど。


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 技能:天の声てんのこえ(アマノセイ)

 副技:天啓

    天眼

    天授

    天与

    天秤

    ??

 天声ポイント:100pt

 天命 ★★★

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 はい。わたしです。ありがとうございました。


 アルトから引き離されるとは聞いてないんですけど。


 わたしからアルトを取り上げるなんて。ケイのやつ。マジで許さん。



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本日5話投稿。本日の投稿はここまでです!

次からはまた1日1話投稿に戻る予定です。


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