047.セリスはどこ?
黒髪の少女が
「えっ? セリス?」
アルトが突然乱入してきたセリスに動揺し固まってしまう。
わたしも混乱する。なぜセリスが? もしかして
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種族:冥府を纏うドラゴンの眷属(本体)
状態:通常
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わたしがセリスの状態を意識したらウィンドウが出てきた。しかし……。
セリスじゃない? 眷属の本体?
近くでは最後の
どういうこと? あれがセリスではないとしたらセリスはどこに? いやそれどころではない!!
『しっかりして!』
呆然と立ち尽くすアルトに向かって
「セイさん……。セリスが」
アルトは震える声で縋るようにわたしの方を見る。動揺しすぎているのか念話もするのを忘れている。
真っ二つになってこときれた少女が黒い煙になって消えていく。
『あれはセリスじゃない! 〈冥府を纏うドラゴンの眷属〉の本体だった! 人だったら煙になって消えていったりしないでしょ!』
アルトも少女が消えていくのを見て少女がセリスではないことに気がついたようだ。
「じゃあセリスはどこに?」
『今から探す!』
そこに再度
わたしはセリスを探すことを優先することにした。〈天眼〉を使えばセリスを見つけ出すことができるかもしれない。
シルヴァはこのダンジョン主の部屋にセリスがいると言っていた。シルヴァはセリスに印をつけているからそれでセリスの位置は把握していると言っていた。シルヴァもセリスを救おうとしているのだからそれは嘘ではないだろう。ならこの部屋にセリスはいるはず!
わたしは片っ端から部屋内に〈天眼〉を使いまくった。セリスが隠されているなら〈天眼〉でステータスが表示されるはずだ。今は運良くセリスがいるところを見つけるしかない。
岩、岩、石、岩、壁、地面、岩、岩。
次々にウィンドウが開くが表示されるのは無機質ばかりだ。セリスのステータスは表示されない。見つからない。もう部屋内は探し尽くしたはずだ。
時間だけが刻々とすぎていく。焦りだけが増していく。
もしかすると〈天眼〉では探しきれないのか? いや、わたしが探し足りてないだけ? それとも何か重要なことを見落としをしている?
何か重要なこと……そういえば扉が閉まるときシルヴァが驚いたような声をあげていた。すぐに戦いの方に気が行ってしまったけど何かヒントになるだろうか? シルヴァが驚くようなこと……。
……まさか。あのドラゴンがセリス?
そんなこと、ある? だけどそう言われると思い当たる節がある。アルトの姿に似たドラゴンの眷属。ドラゴンのもつアルトの瞳と同じ色をしたスカイブルーの瞳。そしてさっき手を伸ばした
わたしは状態を確認することを意識してドラゴンオブアビススケイルに向けて〈天眼〉を発動した。ウィンドウがわたしの目の前に表示される。
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種族:ドラゴンオブアビススケイル
状態:
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状態、迷宮歪形? なにそれ? 前世でもこちらでも聞いたことのない状態異常だ。わたしは迷宮歪形に向けて再度〈天眼〉を発動する。
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状態:
〈創造神への嫁入り〉によって迷宮の主に変貌させられてしまった状態。元の個体名はセリス。
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嫌な予想は当たってしまった……。セリスは迷宮の主に変貌させられていた。しかも創造神が関わっている? そんな状態元に戻すことなんてできるの?
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状態:
〈創造神への嫁入り〉によって迷宮の主に変貌させられてしまった状態。元の個体名はセリス。高度な回復魔法によって元の個体に戻ることがある。
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できるのか……。いや驚いている場合じゃない。このことをアルトに伝えないと!
見ると無数の傷をつけられた
『アルト! 止まって!』
アルトが剣を振り下ろすのを無理やり止める。
『セリスは見つかりましたか!?』
『見つかった』
『よかった。どこに!?』
『目の前』
『えっ?』
『ドラゴンオブアビススケイルがセリスだった』
アルトが
『そんな。そうすれば──』
『落ち着いて聞いて? セリスを元に戻せるかもしれない』
『っ! どうやって!?』
『回復魔法で元の姿に戻るかもしれな──』
「ホーリーヒール!」
アルトがすぐさま
『元に戻らないです!』
なんで? ホーリーヒールじゃダメなの? いや
『冥魔法は!?』
『やってみます!』
「アビスヒール!」
昏き闇が
『ダメです』
「何してる? 正気?」<何してるの? ドラゴンを回復させるなんて正気?>
ノーアがアルトの横に姿を現す。
「ドラゴンがセリスみたいなんです! それで回復魔法で元に戻らないか試してます。でもホーリーヒールもアビスヒールも効果がなくて……」
「ん? ……〈付与〉?」<そうなの? ……ホーリーヒールとアビスヒールの〈付与〉は試してないよね?>
「っ! 試してみます!」
流石に相反する属性を混ぜるのは無理なんじゃ? いや、やってみるだけはタダか。今はそれに賭けるしかない。
「ホーリーヒール!」『〈
そこには聖なる光も冥府の闇も発生しなかった。ただ透明な魔力が発生しただけだ。
……何も起こらない? 魔法が失敗した? やっぱり相反する属性は混ぜられない?
いや魔力は練られていた。そしてその透明な魔力が
徐々に
あの子がセリス?
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名前:セリス
種族:龍人族 / 魔人族
技能:龍感覚
魔法:─
恩恵:自由神の勇者の種
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セリスで間違いないみたいだね。既に
「おにいちゃん?」
セリスがアルトを見てそう零す。可愛らしい声だ。だけどそれをいうならお姉ちゃんだよね?
「そうです。お兄ちゃんです」
アルトが言った。アルトが言った? えっ? ん? どういうこと?
『どういうこと!?』
ダンジョンが揺れ出す。
「ダンジョン崩壊でしょうか? シルヴァさんの元に戻りましょう」
「りょ」<了解>
しまっていた最奥部の部屋への入り扉はいつの間にか開いている。
アルトがセリスを担いでシルヴァの元へ向かっていく……。向かっていく。
わたしが知りたいのはこの揺れことじゃない!
わたしの感情を置いてかないで!? アルトがお兄ちゃんってどういうこと!?
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