第223話 お姉ちゃん!?


 王様と話をしてから1週間が経った。

 その間、平和に過ごしていたもののキョウカは必死に勉強し、ミリアムも必死に勉強を教えていた。

 そして、3月に入り、期末試験が始まると、キョウカからの連絡は途絶え、ユウセイ君から『キョウカがうつろの目で試験を受けている……』という連絡を受けるようになった。

 頑張ってくれ……


「ミリアム、本当に行かないの?」


 今日はモニカの誕生日であり、モニカの要望の水族館に行く日でもある。

 俺、モニカ、ルリは準備をし、あとは出るだけなのだが、ミリアムはコタツから顔を出して寝ている。


「行かないにゃ。目の前にご馳走がいるのに食べられないのは拷問にゃ」

「可愛いお魚さんやかっこいいのもいるよ?」

「私には切り身にしか見えないにゃ」


 これが肉食動物の感性だろうか?


「じゃあ、お留守番をよろしくね」

「任せるにゃ」


 俺達は家を出ると、車に乗り込む。

 助手席がモニカで後部座席にはルリが乗った。


「じゃあ、行こうか」

「お願いします」


 車を発進させ、水族館を目指す。


「モニカは21歳になったんだっけ?」

「ええ。18歳で学校を卒業し、3年になります」


 まだ若いんだよなー。

 精神が大人すぎるけど。


「こっちの世界で言う大学とかなかったの?」

「ありますよ。でも、ウチはそこまで裕福ではなかったですし、両親もお金を使うなら家を継ぐ兄に使いたいって感じでした。幸い監査官になれましたし、家的には万々歳って感じですね」


 でも、辺境の開拓村でくすぶってたわけね。


「家にお金とか贈らないの?」

「そういうことはしませんね。向こうも望んでいないでしょうし、リンゴ村で頑張ってくれって感じでした。まあ、ちょっとリンゴを渡したりはしましたね」


 それくらいで十分なわけか。


「モニカがウチに来てくれて良かったよ」

「ありがとうございます。私もタツヤ様のおそばにいれて嬉しいです」


 うん……

 ルリ、空気を読んで、気配を消さなくていいよ……


 俺達は都内の水族館に到着すると、館内に入り、見て回る。

 今日は平日だが、そこそこ人がおり、皆、水槽を楽しそうに眺めていた。


「ルリ、あれがカレイだよ」


 水槽の底でひらひらと泳いでいる。


「あれがタツヤさんが釣ったけど、ミリアムが全部食べたやつですね。なんか可愛いです」


 ルリの方が100倍可愛いけどね。


「すごい種類がいますね……」


 モニカは何故か水槽の中の魚を数えている。


「あっちの世界は少ないの?」

「わかりません。王都もリンゴ村も海に面していませんし、そもそも魚を口にすること自体が少ないんです。実は海に行ったこともありません」

「そういやそうだったね。また今度、海も行く?」


 何故かモニカに海に行くかと聞くと、釣りではなく、砂浜を思い浮かべてしまう。

 なんでだろうね?


「行きたいです」

「じゃあ、行こうか」


 キョウカとも行く約束をしている。

 さすがに別かな……


「おー……サメです。人斬りお姉ちゃんと同じ目をしています」


 ルリが巨大なサメを見て、感嘆している。


「ホントだね……」


 否定できない。


「まあ……」


 モニカも否定しなかった。

 だって、そっくりなんだもん。


 俺達はその後も水族館を見て回り、色々な魚を見て回った。

 さすがに種類は豊富だったし、可愛い魚からかっこいい魚、さらには何だこれって思うような魚もおり、それらを見るたびにルリとモニカが一喜一憂して可愛かった。

 ただ、ルリがキョウカ……じゃない、サメを気に入っていたのがちょっと気になった……


「タツヤさん、イルカさんを見たいです」


 ルリが嬉しそうな顔で案内板を指差した。


「そうだね。行こうか」

「はいっ!」


 ルリは楽しそうに歩いていき、それを俺とモニカがついていく。


「ルリさん、ちょっと変わられましたか?」


 モニカが言うようにルリはここまで自己主張しなかったし、表情も変えずにじっとしている子だった。


「考えが変わったんだと思うよ」


 ありがとう、ロザリー!

 ルリがめちゃくちゃ可愛くなりました!

 でも、海外に行って。


「まあ、良いことだと思いますよ。楽しそうです」

「だね。モニカもしたいこととかやりたいことがあったら言ってよ。遠慮するもんじゃないよ?」

「そうですね……ありがとうございます」


 俺達はイルカのコーナーに行き、イルカのショーを見た。

 イルカって賢いんだなって思った。


 その後も館内を見て回り、すべてのフロアを見終わると、最後にお土産コーナーを見て回る。

 当たり前だが、海のものが多い。


「すごいねー」

「この辺りのクオリティも見事なものだと思います……あの、タツヤ様」


 モニカが声をかけてくる。


「うん……」


 ルリがぬいぐるみのコーナーからまったく動いていない。

 欲しいんだろう。


「ルリ、どれが欲しいの?」

「でも……」


 遠慮のルリかな?


「いいよ。どれでも買ってあげる」

「じゃあ……」


 ルリがとあるぬいぐるみを指差した。


「…………こっちの賢い方が可愛くない?」


 ルリが指差したぬいぐるみの隣にある似たようなぬいぐるみを指差す。


「タツヤ様……気持ちはわかりますが……」


 モニカが呆れている。


「こっちが良いです」

「そう……じゃあ、こっちにしようか」


 ぬいぐるみを取り、その他のお土産と共に購入する。

 そして、家に帰ることにしたのだが、後部座席でルリが買ったぬいぐるみを抱いていた。

 とても可愛いのだが、絶対にサメよりイルカの方が良いと思う。

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