サレ彼が浮気相手との仲を全力で応援してくる

oufa

第1話 終わりは始まりの合図


 桜の花びらが私たちを祝福するかのように春の空に舞っていた。


 振り返ると卒業証書の入った黒い筒を冬至ふゆきがポンポンと嬉しそうに鳴らしていた。


「とうとう卒業だね~やっぱり寂しいな」


 私は立ち止まって彼の横に並ぶ。私の手を握りながら冬至は優しく微笑んだ。


「高校は違うけど途中までは一緒に登校できるから。今までとそんなに変わらないでしょ」


「え~帰りは一緒じゃないの?」


「おれは高校行ってもサッカー続けるからなぁ。夏至なちかが待っててくれるなら一緒に帰れるけど?」


「どうしよっかな~高校入ったらバイトとかもしたいしな~」


「そこは待ってるって言うのが普通でしょ」


 苦笑いを浮かべる冬至に、私はべーっと舌を出しておどけて見せた。



 私と冬至は同じ年に生まれ、家もご近所さん。両親同士の仲も良く保育園から中学校までずっと一緒だった。今まで家族みたいな付き合いだったけど、中三の時にようやく彼が告白してくれて恋人同士になれた。まだキスまでしかしてないけど高校生になったらもう一歩先に進むつもり。


 ただ残念なことに高校はバラバラになってしまった。彼が進んだのはサッカーの強豪校。本当は私もそこに行きたかったけど親に説得されて進学校を選んだ。



 冬至はとにかくすごいモテる。彼のお父さんは元プロサッカー選手でお母さんは元モデル。ルックスだけでなくサッカーも上手いから中学では他校にもファンクラブがあった程だ。


「高校に入って変な女にひっかからないでよ」


 私が口を尖らせながらそう言うと彼は笑っていた。


「大丈夫だよ。たぶん練習でそれどころじゃないし。ナチカの方こそ変な奴にひっかかるなよ」


「当たり前でしょ~私はフユキ一筋だから」



 この時私は当然のようにそう答えた。その約束をわずか三ヶ月で破ってしまうことも知らずに。



 幸いなことに学校がある最寄り駅は一緒だったので、高校に入学してからも私たちは一緒に登校した。もちろん、冬至が入部してからは練習が終わるまで駅前で時間を潰しながら待っていた。


 さすがはサッカー強豪校。そのレベルの高さについていこうと、冬至は朝練もするようになった。当然一緒に登校はできなくなる。やがて私は放課後、同じ学校の友達と過ごすようになり冬至に会うのはサッカーの練習がない休日だけになった。


 それでも会ってる時はすごく幸せで、私は変わらず彼のことが大好きだった。そして彼も今まで以上に私のことを大切にしてくれた。



 夏休みに入ったある日のこと。私は仲の良い男女グループでカラオケボックスで遊んでいた。しばらくして解散すると、帰り道が一緒だった清明きよあきくんがこんなことを言ってきた。


「ねぇナチカちゃんって彼氏とラブホ行ったことある?」


 私に彼氏がいることは学校の友達にはちゃんと言っていた。冬至は結構有名だったから女子にはよく羨ましがられた。


「え~まだないよ~。キヨアキくんはあるの?」


「おれもまだなんだ。ちょっと試しに行ってみない?」



 私はもちろん断った。でも清明くんに何度もお願いされ絶対に何もしないことを条件に行ってみることにした。


 初めてのラブホは入るだけでちょっとドキドキした。おっきなベッドにおっきな鏡。私はテンションが上がって思わずベッドに飛び乗った。


 清明くんがボタンをいじると部屋の照明が薄っすらと暗くなった。彼はそのまま私の横に寝そべると顔を近づけてきた。彼と私の呼吸が少しずつ荒くなっていく。


「ちょっと、ダメだよ。変なことはしない約束でしょ?」


 彼はうやむやな返事をしながらキスをしてきた。咄嗟に避けることができず私は唇を奪われた。私は思いっきり両手で彼を押しのけた。


「もう帰るっ!」


 少し乱れた服を直しながら私は部屋を飛び出した。後ろで彼が何か喚いていたけど無視して走った。


「やっぱり行くんじゃなかった……」


 私はそのまま走って駅まで行くとそのまま家に真っすぐに帰った。



 

 その翌日。練習が休みの冬至が私の家に遊びに来た。いつものように部屋に招き入れると彼の様子がいつもと違う。そして彼はスマホを私に見せながらこう言った。


「これってナチカだよね?」


 彼のスマホの画像には昨日ラブホに入って行く私と清明くんが映っていた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 第1話を読んで頂きありがとうございます。


 こちらは連載候補の作品です。胸糞要素が強めの予定ですが評価の程よろしくお願いします。

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