第29話 ドライヤー?
はい、皆さん。
お風呂上がりの楽しみといえば?
「はい! 冷たい牛乳ですね! シオン! 早く早く〜!」
「はいはい、用意してますよ」
ガウンだけ着た俺に、外で待っていたシオンがコップを手渡す。
そのコップは入れ物に俺特製の氷を仕込み、そこで冷やしておいた。
そこにモウルからとった牛乳を入れてある。
「ありがとう! では早速……プハァ〜! これこれ!」
腰に手を当てて、火照った体に程よく冷たい飲み物は最高。
飲んだ時の喉越しと爽快感は格別だ。
饒舌し難い美味さがある思う……きっと、日本人ならわかってくれるはず!
「まったく、主君ときたら。少しはお二人見習って……」
「ほら、二人だって」
「……仕方ありませんね」
そこには、俺と同じように腰に手を当てて牛乳を飲む二人がいた。
「確かにいけますな」
「うむ、まさか冷やすだけでこんなに美味くなるとは」
「でしょ!? これを恒例にしても良いくらい!」
「モウル達もお主の氷のおかげか、元気が出てきた。ミルクの出も良いし、子供も出来やすくなるだろう」
「うんうん! そしたら、無理のない範囲でとって……ふふふ」
アイスクリームや、バターにヨーグルトなんかも良い。
それこそ前のシチューみたいに、牛乳があれば色々と作れるぞ〜。
まあ、卵が貴重品だからケーキとかは難しいかなぁ。
「はいはい、わかりましたから。とにかく、髪をちゃんと拭きましょう」
「わわっ……」
シオンにもみくちゃにされ、タオルで髪を拭かれる。
いくら暖かい国とはいえ、流石にきちんと拭かないと風邪をひくかも。
王城にいた頃は、使用人とかが団扇とかで仰いで乾かしてくれたっけ。
「……ん?」
「主君、どうしました?」
「それだ! アメリア〜!」
「ちょっ!? まだ途中……はぁ、仕方ありませんね」
シオンの制止を振り切り、俺は近くにいたアメリアの元に向かう。
「な、何よ?」
「あのさ、掌から熱を出せる?」
「で、できるけど……どうしたら良いの?」
「それを、俺の髪に近づけて欲しい」
「主君、髪を火傷しますよ」
「違うよ、シオン。これは、髪を乾かすんだ」
ひとまずシオンには団扇を持ってもらい、それをアメリアの手の近くで仰ぐ。
すると俺の髪に、暖かい風が吹く……つまりはドライヤーだ!
「おおっ、めっちゃ早く乾く!」
「これは……確かに便利ですね。特に、髪の長い女性などは」
「ふふん、私のおかげね!」
「うんうん、助かるよ」
「しかし、誰も考えつかなかったのですか?」
「うーん……そもそも、熱だけを出すって発想がなかったかもね」
魔法が使えるイコール、魔法の才能を有する。
つまりアメリアみたいに火を出すつもりで、熱が出ちゃう人はいない。
普通に魔法の素質がある人は、火を出そうと思ったら火が出るから。
「なるほど、そういうことですか」
「わ、わたし、もっと役に立てる?」
「もちろんさ。どうやら、魔力量もあるみたいだし」
そもそも魔力暴発を起こすくらい、魔法の素質はあるだろう。
今はまだ熱しか出ないけど、そのうちすごい魔法使いになるかもしれない。
……絶対に主人公の仲間になるタイプだよぉ〜!
今のうちから、恩を売っておかないと。
「アメリア、何かあったらすぐに言ってね。できる限り、俺がなんとかするから」
「……どうして、そんなに良くしてくれるの? わたし、こんな生意気だし……昔から、魔法が使えないくせにって馬鹿にされてきた」
「あぁー……」
それなりの魔法には才能がいるが、生活魔法程度なら適性がある属性なら大体の人は使える。
そんな中、それすらも使えない彼女は辛かっただろう。
このツンデレな感じも、きっと自分を守るために違いない。
「ふふ、主君はそういう方を放って置けない優しい方なんですよ」
「……そうなんだ。確かに、わたしがこんな感じなのに怒ったりしないの」
「あはは……」
言えない……主人公の仲間になると思うからとは。
でも、これで生活も楽になるし、また一つ破滅回避できたかもしれない。
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