第20話 再会(また勘違いされてる)
……なんか、柔らかい?
無意識に、その柔らかいモノに触れる。
すると、もちもちの感触がした。
「ひゃっ!?」
「ん? …… あれ、どうしてシオンの顔が上にあるんだ?」
「そ、それは、主君がお倒れになったので膝枕をしてたからです。幸い、疲労だけと思ったのでベンチを借りて休ませていました」
「そっかそっか、道理で気持ちいいわけだ。というか、俺って倒れてばかりだなぁ……もう少し、この態勢でもいいかな?」
「も、もちろんです。ただし、その……お尻は触らないで頂けると」
なるほど、俺が触ったのはシオンのお尻だったのか。
道理で気持ちよかった……ってそうじゃない!
「ごめんなさい!」
「……今回は許しましょう。それに、また無理をさせてしまいました。気づかずに申し訳ありません」
「ほっ……いやいや、俺も気づかなかったから。そもそも、体力がなさすぎる」
こちとら怠惰な王子で有名なエルク君、当然体力は同年代よりないのだ。
それに色々あったから、精神的にも疲れていたんだろう。
早く破滅回避しなきゃとか、そのために開拓しなきゃとか……っていう言い訳をしてみる。
「主君が頑張ってるのは知っていたので、無理をしないでとも言えませんし。これはあれですね、私以外にも主君をお世話する人が必要かもしれません」
「うん、気をつけるよ。お世話係か……確かにシオンに負担が大きいか」
「私は構いませんが……流石にお側にいながら、身体のメンテや部屋の掃除などは難しいですので」
「それはそうだね。それより、どれくらい寝てた?」
「大体、一時間といったところかと」
するとタイミングよく、扉が開いてヨゼフ爺が入ってくる。
俺はそれを見て、起き上がる……少し残念だけどね。
「エルク殿下、お目覚めになられましたか」
「うん、今さっきね。ご飯の準備ができた感じかな?」
「そちらはもう少しかかります。実は……エルク殿下を訪ねてきた者がいらっしゃいます」
「へっ? ここに俺の知り合いなんて、ヨゼフ爺以外にいたかな?」
「いえ、正確には領主に会いたいと。その者が私の……いえ、とにかく訪ねてまいりました。お会いになられますか?」
「うん、もちろん。ヨゼフ爺が言ってきたってことは危険な人じゃないだろうし」
そしてヨゼフ爺の案内の元、屋敷にある客室に入る。
そこには、俺とシオンの知る人物がいた。
森に狩りに行く途中で出会った、獣人の二人だ。
アルルは、ユルグさんの肩に寄りかかり寝てしまっている。
「あっ、アルルにユルグさん……どうしてここに?」
「……ヨゼフ殿、これはどういうことだ? オレは領主に会いたいと言ったが」
「ええ、だから連れてきました。この方が我が国の第二王子であるエルク殿下にして、この領地を治める方です」
「な、なんだと? ただの貴族子息だと思っていたが……」
「どう言う意味ですか? まさか、お会いになったことが?」
「ああ、先ほどな」
俺を置いてけぼりして、二人が何やら親密そうに会話している。
「えっと……話がよく見えないんだけど」
「ふむ、私も確認することがありますな。とりあえず、エルク殿下もお座りください」
「うん、そうするね」
俺とヨセフ爺が並んで座り、対面にはアルルとユルグさんが座る。
そしてシオンは、当たり前のように俺の後ろにつく。
「まずは詳細は省きますが、私とユルグは古い知り合いなのですよ。久しぶりに会ったと思ったら、いきなり領主に会わせろと。少し迷いましたが、エルク殿下ならと思い会わせたくなりました」
「ふんふん、知り合いだったんだ」
「それで、エルク殿下はどうして知り合いに?」
「えっと、実は……」
俺は簡単にヨゼフ爺に説明した。
森に行く前にアルルを助け、そのまま送り届けた先がユルグさんの家だったことを。
そこで回復魔法を行なったり、ボアーズをあげたことなど。
「なるほど、そういうことでしたか。ふふ……貴方という方は」
「ん? 何かまずいことだったかな? やっぱり、不公平というか」
「いえ、臨機応変でよろしいかと。それに、きちんと領地分の獲物は取ってきてますから。さて、ユルグは一体何しに?」
「オレは……いや、もう解決した。エルク……殿下だったか」
ユルグさんは神妙に頷き、俺の前で姿勢を正す。
「別にエルクでいいよ。あと、敬語とかいらないし姿勢とかも普通でいいからね」
「……相変わらず変な奴だな。つまり、あの時は別にフリでなんでもないと」
「フリ? あっ、ごめんね。別に嘘をつこうと思ったわけじゃないんだ」
そっか、あの時は貴族子息って設定だったや。
……というか、今更だけど領主ってばれちゃった!?
恐る恐るユルグさんの顔を見るが、どうやら怒ってはなさそう……ほっ。
「いや、あれで正解だ。もし領主などが来たと知れたら村中がお大騒ぎだ。そして接待などをしないといけないと思い込み、ただでさえ少ない蓄えを使ってしまうだろう」
「そ、そうだね」
「それを見越しての行動だったか」
ひぇ……ただ領主って言ったらひどい目に合うと思ってたなんて言えないや。
ここは急いで話を変えないと。
「あはは……それで、一体どうしたの?」
「あぁ、その話だな。単刀直入にいうと、オレを雇ってはくれないか?」
「雇う……? 護衛ならシオンがいるけど」
「しかし、其奴一人では無理があるだろう。オレは森が庭だし、狩りなら得意だ。それこそ、二人で行けば効率は上がる」
ふむふむ……森に入るときにも、シオンが俺の心配をしてたっけ。
俺に気を回さなくていい分、余裕ができるかもしれない。
「シオン、どう思う?」
「私一人で十分……と言いたいところですが、主君の身の安全と休息が一番です。それは、ここ数日で痛感してました」
「そっか。確かに戦力は欲しかったし……それじゃ、俺の専属ってことでいいかな?」
「ああ、よろしく頼む。それと、アルルにも何か仕事を与えて欲しい。実は無理を言ってついてきてしまったが……その代わり、自分も何かやると言って聞かんのだ」
アルルは十歳だし、まだ実際には戦えないか。
そうなると、お手伝いさんとかになるのかな。
すると、シオンがポンと手を叩く。
「シオン?」
「主君、丁度いいではないですか。アルルには、主君のお世話係をやってもらうというのは?」
「なるほど……主に領地でのお世話ってことか。ユルグさん、どうかな?」
「願っても無い。お主なら、変なこともしないだろう。大切な姪を預けられるというものだ」
そっか、おじさんって言ってるからどういう関係かと思ってた。
そのままの意味で、姪ってこと……姪?
「……姪? 女の子だったの!?」
「主君よ……何を今更」
「くく、愉快なやつだ」
「い、いや、だって……」
俺の前の世界にはボクっ娘というものがありまして。
確かに可愛らしい顔してるし、変ではないんだけど。
「まあ。無理もない。格好や言葉遣いもそうだが、女の子らしいことなどさせてこなかった」
「それに女の子だと思われると変な輩に捕まる可能性もあります」
「そ、そっか……とりあえず、本人さえ良ければ俺は構わないよ。あっ、でもヨゼフ爺は?」
「私も賛成でございます。獣人の立場は高いとは言えないので、種族緩和にもなるかと」
「それじゃ、ひとまず決まりだね」
そのとき、俺のお腹が『クルルー』と鳴る。
そう言えば、ご飯を作ってる途中だった。
「はは……お腹空いた」
「ふふ、仕方ありませんね」
「そういえば、俺が頼んだことは? アク抜きとか」
「料理人達がやってくれてるはずかと」
「エルク殿下、こちらも炊き出しの準備は出来ております」
「それじゃ、こっちも仕上げに入りますか」
よしよし、これで食材集めが楽になるし、シオンの負担も減るぞ。
後は炊き出しをして人気取りをして、領地開拓を手伝ってもらおう。
ふふふ、これで破滅回避に近づくぞ〜!
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