第2話 ツルピカツヤツヤ
我が社の超新星、モデルと言われてもおかしくない美貌とスタイルの新入社員。
彼女は少し変わった趣味?がある。
何かって?
決まっている。彼女の追い求める者はただ一つ。
禿だ! それもイケメンの!
…………
某企業の採用面接会場…
「それでは弊社について何かあればどうぞ」
彼女はあるベンチャー企業の採用面接に来ていた。
「はい、御社の雰囲気と言いますか光輝く景色が非常に恍惚であり且つその割合も質も高く素晴らしいと思いました」
「そうですか?どの辺が光輝いているのでしょうか?」
「社内では才能あふれる方々が懸命に業務をされておりその姿はまさに文字通りに光輝いていました」
「もちろん全ての方ではありませんがその様な方が御社に多く居られます」
「私もぜひ!その中に入りその輝きを間近で目にできれば幸せと感じました」
彼女は頬を赤らめ熱弁した。
「弊社をその様に見て頂けるとはありがたいですね。ここに居る面接担当達はどうでしょうか?輝きを放っておりますか?」
彼女は真剣な目で目に並んでいる面接担当者を右から順に眺める。
「はい!まさかここまで光輝いているとは思いもしませんでした。その様な方が多い職場と思いこの面接でもその様な方々に会えるのではと少なからず期待をしておりましたがここまで素晴らしいとは思いませんでした」
冷静に聞くと実に嘘っぽい面接官ヨイショの発言であるが彼女のその熱意、表情がその場に居た面接官全員を取り込みその言葉が真実であると思わせていた。
まあ実際違う意味で真実ではあるのだが…
「あ、ありがとうございます。我々もそこまで言って下さりさらに精進して行こうと思いました」
面接官全員ががうんうんと頷く。
その中の一人が手を挙げた。
「本城三上さん、貴方は大学を非常に優秀な成績で卒業されており正直言えばもっと大きな企業でも狙えると思うのですがなぜ弊社なのでしょう?」
彼女は背筋を伸ばし姿勢を正しにっこりとした。モデルの様なスタイルも相まってその場が一気に華やかになる。
これがアニメや映画なら絶対にキラキラとしたエフェクトや綺麗な花が表れているだろう。
「働く場というのはどんな所であっても人と人の出会いです。人生の中で長い時間を同じ空間で過ごす訳ですから自分が納得出来る職場に居たいと思ったのです」
「本城さんの弊社に対する評価がそこまで良いものとは我々もありがたいと思います。益々光輝ける様に精進していきたいと思います。本城さんも一緒に頑張って頂けますか?」
本城三上は席を立ちそう発言した面接官の前に立った。
そしてその面接官の手をぎゅっと握り顔をジッと見る。
「私で良ければぜひ!お願い致します!」
そう言う彼女、実は顔を見つめている様で違う所を見ていた。
顔よりやや上の見事に禿上がった頭だった。
実に見事に禿上がっておりオイルでも塗っているのではないかと思う程の光沢、形、そして幾分お年を召されているがそれが哀愁を漂わせ無精髭でも生えていれば完璧な彼女好みだっただろう。
「ほ、本城さん、どうぞ席にお戻り下さい」
手を握られた面接官は恥ずかしそうに言った。
彼女は名残惜しそうに席に戻り着席した。
改めて面接官達を見る。
さして大きくないベンチャー企業にしては5人も面接官が並んで座っており3人の頭が見事にツルリと禿散らかしていた。
(やはりここに来て正解だったわ、禿率35%しかもその中でもイケメンが多いと思われる)
(
面接官達は何やら話し合いをしている。
先程手を握り締めた一際ツルピカツヤツヤの禿ロマンスグレーが言った。
「本城三上さん、弊社は貴方を採用させて頂きたいと思います。よければ弊社へ来て下さい」
面接官達は期待に満ち溢れた表情で彼女を見つめる。
こうして禿イケメンを愛でる本城三上の採用が異例とも言える採用面接その場で決定した。
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