第6話 聖地巡礼 その5

次の場所ではみかんの皮をむくことで、力試しを行う催しがあるという。


街を訪れると、偶然、大柄な男が挑戦している真っ最中だった。


「ふんぬっ!ゥアぁあああああああああ!」


「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!」


「ッラアァアアアアアアアアア!」


皮を6mmぐらいはぐことに成功したようだ。会場に、驚嘆、どよめき、歓声が巻き起こる。

「はぁはぁはぁ」

讃えられながら舞台を降りてきた男が、みかん片手に立っている私を見て、声をかけてくる。

「お前さんには荷が重い、止めておきな。出ても恥をかくだけだぜ」

それを聞いた、私に帯同する兵士が「貴様!誰に口を聞いている!」と男の胸倉に掴みかかる。

「暴力はおやめなさい」それを見かねて兵士をなだめる。

「すみません……。一度やってみたくて」兵士がしゅんとする。


「私の実力を見せてあげましょう」


「ブシュッ!ぺりぺりっ!」

その場でみかんの皮をむいて見せる。

「?!」瞬間、男は、おおきくつばを飲み込んだ。そして、目を大きく見開き、とても信じられないといった表情のまま固まっている。

続けて無限に皮をむいて見せると、動揺のためか男が慌てた様子でそわそわしだした。私は彼をなだめるため、そして、威光を知らしめんため、今までしてきたのと同じように男の顔へみかんの皮をのせるのであった。

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