竜珠の主 ~明蘭皇帝記~
らな
第1話 プロローグ
「オギャー、オギャー」
しかし、赤子をとり上げた村の女性と赤子の父親は産まれた子供を見て言葉を失った。
「どうしたの?赤ちゃんに何かあったの?」
たった今子供を産みおとしたばかりの若い母親は不安そうに二人に尋ねた。
「
父親の
「えっ?」
「髪の色が金色だ。この子は龍聖だ。」
この国の民はみな黒髪黒目で、他の色はほとんど産まれない。
母親の
「私たちどうしたらいいの?」
「この村でも龍聖は老師以来300年ぶりのことだし都にいらっしゃる
玲々は夫の言葉に頷くしかなかった。
赤子が産まれて1か月が経過したころ。
龍華帝国の皇都・
長らく宰相を務めた老人につめよっていた。
「寿峰。なぜだ?なぜこのタイミングで宰相を辞するなどと申すのだ!」
「最近、急激に身体の衰えを感じていました。龍聖として生を受け300年の長い時を生きてきましたが、そろそろ寿命を迎える時がきたのかと。」
明誠は驚いて寿峰を見た。
「そう漠然と感じていた折、故郷の
「新たな龍聖が!」
竜の血がその体に濃く出た者は龍聖と呼ばれた。
竜王と同じく金色の髪を持ち、寿命も一般の人が60歳くらいであるのに対し、150~300歳と長命であった。
火や水など自然を操る仙術を使える者もいる。
1000年前の建国以来、5人の龍聖が記録されており、そのうち3人は天竜村出身である。
「新しい龍聖の誕生を聞いて、残りの私の人生は次代の龍聖の育成にそそぎたいと思ったのです。」
すっかり心を決めてしまったような寿峰の様子に明誠は黙り込むしかなかった。
「
明誠はうなだれながら頷いた。
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