第35話 風鈴(ふうりん)

ネズミ「やぁ、うさぎくん」


ウサギ「やぁ、ネズミくん。何だか今日のネズミくんは涼しさを感じるけど、何でだろ?」


ネズミ「ほ~! いつもと違った俺を感じた!?」


ウサギ「何でだか分からないんだけど、そう感じたんだよ」


ネズミ「一寸これを見てごらんよ!」


ウサギ「何? それ!」


ネズミ「いいだろ~!」


ウサギ「鈴?」


ネズミ「俺にピッタリサイズだろ!」


ウサギ「そんなに小さい鈴があるんだね」


ネズミ「たまたま落ちているのを見つけてさ」


ウサギ「それが一寸鳴って聞こえたからネズミくんを涼しく感じたのかな!?

 スズだけに!」


ネズミ「ウサギくん、今日は冴えてるじゃないか」


ウサギ「それ程でもないよ」


ネズミ「確かにそれ程ではないよね」


ウサギ「・・・・(またこれだ!)」


ネズミ「これ、いい音だったろ!」


ウサギ「もう一度鳴らしてみて」


ネズミ「小さい音だから静かにね」


ウサギ「うん!」


ネズミ「鳴らすよ!」


ウサギ「ん~、・・・チリン チリンって、可愛い音だね」


ネズミ「俺も気に入っているんだ!」


ウサギ「こういうの、なんて言ったらいいんだろ。

 心が休まるような音って言えばいいのかな~」


ネズミ「凄い表現ができるようになったね」


ウサギ「それ、褒めてる?」


ネズミ「随分と懐疑的じゃないか」


ウサギ「ネズミくんは上げたと思ったらすぐに落とすからね」


ネズミ「人生、上りもあれば下りもある」


ウサギ「嫌な話、急降下なんていうのもある」


ネズミ「ウサギくん、自分に当てはめているんだね。

 今日はお世辞じゃなく、冷静に自分を見つめられるなんて本当に冴えてるじゃん」


ウサギ「何だか気に入らない物言いだけど、その鈴のお陰かな!」


ネズミ「じゃあやっぱり俺のお陰ってことだね。

 納得!」


ウサギ「・・・・(やっぱりそこに持っていくんだ)」


ネズミ「音って言えばさ、ウサギくんはどんな音が好きなんだい?」


ウサギ「好きな音はいっぱいあるよ」


ネズミ「例えば?」


ウサギ「この小学校のチャイムもいいかな~」


ネズミ「チャイムが鳴ると太郎くんが来るとかね」


ウサギ「太郎くんの顔を見らえるのは本当に嬉しいよ」


ネズミ「俺にはそういう人がいないな~」


ウサギ「それは寂しいね」


ネズミ「俺はどっちかって言えば嫌われものだからね。仕方ないさ!」


ウサギ「どうしたの?今日はやけに謙虚じゃない」


ネズミ「この鈴のお陰かも!」


ウサギ「その音で心を穏やかにしてるってこと!?

 そういえば風鈴の音なんかも、いいよね~」


ネズミ「風鈴ね~

 最近その音を余り聞かなくなったね」


ウサギ「そうだね」


ネズミ「昔はさ、どのこの家に行っても風鈴がぶら下がっていてさ」


ウサギ「ちょっと風が吹くと『チリ~ン』って鳴ってたよね」


ネズミ「その音を聞くと穏やかな気持ちになって、何だか涼しさを感じたもんだけど」


ウサギ「こういうのを風流って言うんだよね」


ネズミ「ウサギくん、成長したね~」


ウサギ「僕はこういう文化がとっても好きなんだ」


ネズミ「いい心掛けじゃないか。

 多分それも太郎くんの影響なんだろうけど・・・」


ウサギ「まぁ、そうかも知れないね(俺の影響って言わなかった)」


ネズミ「俺も家に戻ったらこの鈴を吊るしてみるかな!?

 ゆったりした時間を過ごすのも悪くないからね」


ウサギ「いそいそと帰って行ったけど、今日は最後まで拍子抜けするほど穏やかな会話だった。

 こんな不思議なこともあるんだな~

 多分、二度とないんだろうけど・・・ 

 これも風鈴のお陰かな?

 あっちこちでもっと風鈴を吊るしてくれたら、いいと思うんだけどな~

 ネズミくんの性格をよくするためにも、 ね!」


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