第17話 鼻毛(はなげ)

ネズミ「やぁ、 ウサギくん」


ウサギ「やぁ、ネズミくん。今日きょうなんはなし?」


ネズミ「多分たぶんウサギくんにはかんがえもつかない内容ないようだとおもうよ」


ウサギ「それでまたぼく馬鹿ばかにしたいわけ!」


ネズミ「何言なにいってるんだい。おれきみ馬鹿ばかにしたことなんてこれまで一度いちどもないよ」


ウサギ「・・・(そのかたはもう馬鹿ばかにしてる!)」


ネズミ「今日きょう鼻毛はなげについておしえてあげようとおもってね」


ウサギ「鼻毛はなげ? ばくにはそんなもん、ないよ」


ネズミ「んっ! ウサギくんには鼻毛はなげえてないの?」


ウサギ「エッ! なに! らなかったの? ぼくにはえてないよ」


ネズミ「ウサギに鼻毛はなげえていないことは当然とうぜんってたけど、きみ呑気のんきだから、もしかしたらえてるんじゃないかっておもったんだよ」


ウサギ「鼻毛はなげってそういうことでえるんかい!」


ネズミ「じつはね、人間にんげんみたいに進化しんかしたものにだけえてるようなんだな」


ウサギ「じゃあ、ネズミくんにはえているの?」


ネズミ「いいや、おれはこんなに進化しんかしてるんだけど、えてないんだ」


ウサギ「それは残念ざんねんだね」


ネズミ「そんなことはないさ。じつ鼻毛はなげはなんてったってにおいをぐのに邪魔じゃまになる。これはおれにとっての死活問題しかつもんだいなのさ」


ウサギ「なるほど! それでぼくにも鼻毛はなげえていないんだ~ 

 流石さすが物知ものしりだね。ネズミくんは!」


ネズミ「この程度ていどのことなら、おれ自慢じまんとするレベルじゃないけどね」


ウサギ「でも随分ずいぶんはなたかくなってるようにえるけど・・」


ネズミ「そんなことはないだろ! もともとおれはなたかいの!」


ウサギ「ところでなん今日きょうはその鼻毛はなげはなしなの?」


ネズミ「そうだった。ウサギくんがまたへん方向ほうこう誘導ゆうどうするからはなしがどんどんそれちゃう」


ウサギ「またぼく所為せいにしてる」


ネズミ「あのね、このまえとってもきれいにおめかししたおねえさんがいたんだよ」


ウサギ「うんうん、それで!」


ネズミ「そしたらね、そのおねえさんが幼稚園児位ようちえんじくらいおとこそばとおぎたんだ」


ウサギ「それで?」


ネズミ「そしたらそのおとこが『おめかししてるけど鼻毛はなげてる!』っておおきなこえってしまったんだ」


ウサギ「あれ~! そりゃまたすごいことを・・・」


ネズミ「もうそのあとてるのがかわいそうなほどおねえさんはかおしてはしってげていったよ」


ウサギ「鼻毛はなげ、ね~!」


ネズミ「まわりならわざわざツケマツゲまでして、をひけらかすのに。

あのミニーなんかすごいのけてるもんね」


ウサギ「まつはかっこよくって、鼻毛はなげはかっこわるいってことなんだね」


ネズミ「ん~! なやましいところだよね」


ウサギ「なんでそうなっちゃうんだろ?」


ネズミ「ウサギくんは『くそ、はなくそをわらう』っていたことある?」


ウサギ「らない。どういう意味いみ?」


ネズミ「くそがはなくそはきたないってバカにしてわらったってことらしいよ」


ウサギ「それはひどいね。くそだっておなじだとおもうけど・・・」


ネズミ「だってなみだ奇麗きれいぬぐうけど、鼻水はなみずきたないっておもうしさわるのもいやがるよね」


ウサギ「そうだね。なんだかはなからるものって可哀かわいそう」


ネズミ「はな大事だいじはたらきをしてるんだから、これは五十歩百歩ごじゅっぽひゃっぽだとおもうけどね~」


ウサギ「今日きょうのネズミくんはすごいね! まるで聖人せいじんみたいだ」


ネズミ「でもウサギくんにははっきりとっておくけど、おれきみとの能力のうりょくは『つきとスッポン』なんだからね。そこは勘違かんちがいしないように!

 さて、そろそろかえるとするか」


ウサギ「あ~あ! さっきの聖人せいじんはなししだね」


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