（ヒマつぶし）ウサギとネズミの会話

第14話 ルーティン

ネズミ「やぁ　ウサギくん」

ウサギ「やぁ　ネズミくん

　今日（きょう）はネズミくんが何（なん）の話（はなし）をしに来（き）たのか、当（あ）ててみようか！」

ネズミ「ホーッ！　ウサギくんにそんなことが出来（でき）る？」

ウサギ「多分（たぶん）、大丈夫（だいじょうぶ）だと思（おも）うよ」

ネズミ「自信（じしん）ありそうだね。では当（あ）ててみな！」

ウサギ「今日（きょう）ネズミくんは何（なに）か失敗（しっぱい）をやらかして、それでその憂（う）さ晴（ばら）らしで僕（ぼく）に当（あ）たりに来（き）た！？

　そんなところじゃない？」

ネズミ「失礼（しつれい）な！　俺（おれ）は君（きみ）に当（あ）たるなんてそんなさもしいこと、考（かんが）えたこともないよ」

ウサギ「・・・・（いつもやってることなのに自覚（じかく）がない！）」

ネズミ「それにしても、そう思（おも）う根拠（こんきょ）は何（なに）？」

ウサギ「だってネズミくんは気（き）が付（つ）いていないのかもしれないけど、ネズミくんの背中（せなか）とおしりの辺（あた）り、結構（けっこう）汚（よご）れているよ」

ネズミ「エッ！　ほんと？」

ウサギ「ウン！　多分（たぶん）それ泥水（どろみず）じゃないかな」

ネズミ「ウサギくん！たまげたよ。　君（きみ）にそんな観察能力（かんさつのうりょく）があったとは」

ウサギ「これ能力（のうりょく）なんて関係（かんけい）ないと思（おも）うけど。誰（だれ）が見（み）たってそんなの直（す）ぐ分（わ）かるよ」

ネズミ「そうだよね。ウサギくんにそんな能力（のうりょく）、ある訳（わけ）がない」

ウサギ「そりゃまた、手（て）のひらを反（かえ）すような酷（ひど）い物言（ものい）いをするね」

ネズミ「ちょっとおだててみただけさ。褒（ほ）められた君（きみ）がどんな反応（はんのう）するか、見（み）たかったんだ」

ウサギ「・・・・・（もう当（あ）たり始（はじ）めてる）」

ネズミ「突然（とつぜん）だけど、君（きみ）は『ルーティン』って知（し）ってるかい？」

ウサギ「多分（たぶん）それって『験担（げんかつ）ぎ』みたいなものなんでしょ？」

ネズミ「ホーッ！また太郎（たろう）くんの入（い）れ知恵（ぢえ）かな」

ウサギ「まぁ　そうかな」

ネズミ「そうでなきゃ、君（きみ）がこんな言葉（ことば）を知（し）ってるわけ、ないもんな」

ウサギ「相変（あいか）わらずだね。それでどうしたの？」

ネズミ「ウサギくんにはそのルーティンは何（なに）かあるかい？」

ウサギ「無（な）いことはないけど・・・」

ネズミ「それをしなかった時（とき）って、何（なに）か不安（ふあん）になったり、実際（じっさい）にドジを踏（ふ）んじゃったりしたことって、ない？」

ウサギ「そうね～　　あるような、ないような」

ネズミ「俺（おれ）には決（き）めてるものがあるんだよ」

ウサギ「へ～　どんなことするの？」

ネズミ「朝（あさ）起（お）きたらまず一番（いちばん）に東（ひがし）を向（む）いてお日様（ひさま）の光（ひかり）を全身（ぜんしん）で浴（あ）びることにしてるんだ」

ウサギ「よく分（わ）からないけど、それっていいことだって聞（き）いたことがあるよ」

ネズミ「今日（きょう）一日（いちにち）元気（げんき）でいられるように願（ねが）ってのルーティンなんだ。だからとっても大事（だいじ）なことなんだけど、何故（なぜ）だか今朝（けさ）それを忘（わす）れちゃったんだ」

ウサギ「へ～、　優秀（ゆうしゅう）なネズミくんでも忘（わす）れることってあるんだ」

ネズミ「そう、この俺（おれ）が・・・　不思議（ふしぎ）だよね」

ウサギ「（優秀（ゆうしゅう）と言（い）われて全（まった）く否定（ひてい）しない。ネズミくんらしい）」

ネズミ「ん？　何（なに）か言（い）ったかい？」

ウサギ「ううん！　何（なに）も言（い）ってないよ」

ネズミ「あっそう」

ウサギ「それでルーティンを忘（わす）れて何（なに）かあったの？」

ネズミ「あったんだよ！

　実（じつ）はね、今朝（けさ）起（お）きた時（とき）凄（すご）くお腹（なか）が空（す）いていたんで焦（あせ）って食（く）い物（もの）を探（さが）しに行（い）って、そしたら走（はし）って来（き）た車（くるま）が水（みず）たまりの泥水（どろみず）を跳（は）ねて、それが俺（おれ）にひっかかったんだ」

ウサギ「夜中（よなか）に結構（けっこう）雨（あめ）が降（ふ）ったからね」

ネズミ「その時（とき）『ちくしょう！』って言（い）いながらブルブルってやったんだけど、続（つづ）けざまに次（つぎ）に来（き）た車（くるま）にもまた泥水（どろみず）をひっかけられたんだ」

ウサギ「ルーティンをやらないと、予期（よき）しない何（なに）か良（よ）くないことが起（お）こるってことなのかな？」

ネズミ「そのようだね。本当（ほんとう）はこれまであまり信（しん）じていなかったんだけど、やっぱりあるってことがよく分（わ）かったよ」

ウサギ「そういえば、僕（ぼく）は草（くさ）を食（た）べる前（まえ）に毎回（まいかい）必（かなら）ず鼻（はな）をヒクヒクさせるんだ。

　これもルーティンだよね？」

ネズミ「そんなの、ルーティンでも何（なん）でもないさ！ただの習慣（しゅうかん）だろ。一緒（いっしょ）にしないでくれ！」

ウサギ「その違（ちが）いが僕（ぼく）にはよく分（わ）からないよ」

ネズミ「ウサギくんにそんな難（むずか）しいこと、分（わ）かる訳（わけ）ないだろ！

　君（きみ）は檻（おり）の中（なか）のウサギなんだから。

　あ～！　何（なん）だかむしゃくしゃする」

ウサギ「言（い）いたいことを言（い）って、泥（どろ）が付（つ）いたまま帰（かえ）っちゃった。

　それにしてもネズミくん、やっぱり僕（ぼく）に当（あ）たりたかっただけなんだな。

　そういえばさっきネズミくんが来（き）た時（とき）、砂（すな）を何回（なんかい）か蹴（け）っておいたからかな？　あんな酷（ひど）いこと言（い）われても怒（いか）らなくて済（す）んだ。

　もしかしたらこれをネズミくんの姿（すがた）を見（み）たときのルーティンにしたらいいかも！？」