競馬の血統
ツキに見放された人というものはいるものです。
かくいう私もその一人です。
何の話かって? 馬券の話ですよ。本当に当たらないんですよね。単勝を買えば2着。複勝を買えば4着、馬連を買えば1、3着、三連複を買えば1,2、4着。ワイドを買えば2、4着といった具合で。
これが全く的外れなら納得もするのです。このかすり方が数年続いているんですよ。これをツキに見放されたと言わずして何と言いましょう。
というわけで、今回はわかる人にはわかる、わからない人にはちんぷんかんぷんという内容になるかと思います。
初めて競馬というものを見たのが何のレースだったか、今でも鮮明に覚えています。今でも私が大好きなヤマニンゼファーが勝った秋の天皇賞です。ゼファーはいわゆる短距離血統で、父ニホンピロウィナーも、祖父のスティールハートもスプリンター。自身もマイラーでした。
私がこのヤマニンゼファーという馬を好きになったのは、まさにこの点。
当時私は多分に漏れず、競馬の予想の仕方なんてものは何もわかりませんでした。このゼファーの勝った秋の天皇賞を見て、その後有馬記念までレースを見て、傾向、血統という二つを軸に予想をしていく事にしました。
残念ながら、この時点では未成年。馬券は買えませんでしたから予想だけ。
他の方がどんな予想をしているか、大体大きくわけると、血統、タイム分析、傾向、レース展開、当日のパドック観察、この五つくらいが予想の仕方じゃないかなって思うんです。
その内の一つを徹底的に分析する方は本当に凄いなって思うんです。私には到底真似できる類のものではありません。特にレース展開とタイム分析で馬券を買える人はほんとに凄いと思います。馬をざっと見て、こんなレースになるだろうって予想できるんですよ?
そんなプロの馬券師では無い私は、傾向というものを重視して予想をしています。例えば、前走このレースで好走した馬がこのレースは来やすいという感じ。逆にこのレースに出てから出走すると来づらいという感じです。ローテーション予想とでもいうんでしょうか。
それである程度をふるいにかけて、残った馬を血統や長距離では騎手も考慮して印を打っていくんです。
さて、ここからが今回の本題の血統の話。
私は血統の専門家ではないので、ざっくりとした特徴しか捕らえてはいません。素人はその程度で十分だと思うんです。
競馬の血統は基本的に父系という考え方で捕らえます。(最近では2代、3代の母系を重視する方も増えたようです)
父の系統と、母の父の系統で、ある程度その馬をイメージするというのが、血統の一般的な見方です。
最近の日本の競馬の系統で良く出てくるのは、ディープインパクト、ハーツクライ、シンボリクリスエス、ダイワメジャー、キングカメハメハ、ストームキャット、ガリレオ。
それ以外にもいくつかあるのですが、本当にこの7つの系統に属する馬は多いです。
大まかな特徴をパワプロのスキル調で書いていくと、
ディープインパクトはスピード、瞬発力、クラシック、晩成。
ハーツクライはスピード、スタミナ、クラシック、洋芝〇。
シンボリクリスエスは瞬発力、クラシック、晩成、成長長い。
ダイワメジャーはスピード、パワー、中距離、早熟。
キングカメハメハはスピード、パワー、雨〇、中距離、仕上がり早。
ストームキャットはスピード、瞬発力、雨〇、短距離、仕上がり早。
ガリレオはスタミナ、クラシック、洋芝〇。
例えば、父ディープインパクト、母父ガリレオという配合だと、スピードはあるけど、周囲に成長が追い付くのはダービーくらいから、下手すると3歳秋以降、しかも洋芝向きだからじり脚で勝ち味が遅そう、という感じ。
そんな馬が2歳戦に出てくるようであれば評価を下げるという感じです。
逆に人気は無くともダイワメジャーの産駒であれば2歳戦で穴を開けるかもという判断ができるかも。
ここで話を戻してヤマニンゼファーの話をしたいと思います。
現在、系統は辿りに辿っていくと、3頭に行きつきます。その3頭とはダーレーアラビアン、ゴドルフィンアラビアン、バイアリーターク……と少し前まで言われていましたが、残念ながらバイアリータークは絶滅秒読み、ゴドルフィンアラビアンはそれなりにいますが、極めて少数、圧倒的大多数がダーレーアラビアンの系統です。
そのダーレーアラビアンでも淘汰がかなりあり、現在隆盛している系統はナスルーラ、ノーザンダンサー、ヘイルトゥリーズン、ミスタープロスペクターの4系統。
先に上げた系統だと、ディープインパクト、ハーツクライ、ダイワメジャー、シンボリクリスエスがヘイルトゥリーズン系。キングカメハメハがミスタープロスペクター系、ストームキャット、ガリレオがノーザンダンサー系。
……この辺は基礎知識みたいなものなので軽く読み飛ばしてください。
ヤマニンゼファーの系統はこの中のどれでもないサーゲイロード系という血統です。ヘイルトゥリーズン系の親戚みたいな系統ですので、そこまで突飛な系統では無いかもしれません。
このサーゲイロード系というのは、とにかく爆発的なスピードを伝える系統です。そのため、確か今でもオーストラリアでは主要な血統の一つだったはずです。
ですけど、悲しいかな、スタミナを継承しないんです。もしかしたら継承しているのかもしれませんけど、気性の問題で短距離馬ばかり排出するんです。
ヤマニンゼファーの祖父、スティールハートもまさにそんな馬だったそうです。1200mでは敵無し。だけど200m伸びただけで失速する。完璧なスプリンターだったんだそうです。
でも、そんな爆発的なスピードを産駒に伝えられれば、勝ちやすい馬が出るかもしれない。そうなれば種付け料は上がるかもしれない。そう考えて輸入されたらしいんです。
ところが、思ったような馬が出ない。とにかく圧倒的なスタミナ不足の馬ばかり。それなら確かなスタミナを持った牝馬と掛け合わせたらちゃんとした馬ができるんじゃないだろうか?
そんな幼児の計算のような配合でできたのがヤマニンゼファーの父ニホンピロウィナーでした。
母の父はリーディングサイヤーのチャイナロック。
ニホンピロウィナーは1200mでは圧倒的でした。なんなら父がダメだった1600mも余裕でこなしました。2000mも何とか勝てた。だけどGⅢまでなら2000mも勝てるのに、GⅠがどうしても勝てない。
結局ニホンピロウィナーは引退し、2000mのGⅠを勝つという夢はその子に託される事になりました。
こうして生まれたのがヤマニンゼファーです。母父はスタミナ豊富なブラッシンググルーム。
スタミナを底上げしたせいでしょうか。最後まで1200mのGⅠは勝てませんでしたが、1600mのGⅠ安田記念は連覇。残す目標は父が勝てなかった2000mのGⅠを勝つ事。
そして私が初めて見た秋の天皇賞、そこでついに2000mのGⅠを制したんです。
残念ながらこの系統はヤマニンゼファーが後継種牡馬を出せなかった事で消滅してしまいましたが、実は、先ほど挙げた系統にこれと同じような事を成し遂げた系統があるんです。
それがストームキャット系。
ストームバード、ストームキャットは笑っちゃうほど短距離馬ばかりを輩出したのですが、ストームキャットの子ジャイアンツコーズウェイは距離を延長。その子たちも中距離揃いで、今年の菊花賞の4着馬、ゲルチュタールのようなクラシックディスタンスの馬を輩出するようになったんです。
血統は知れば知るほど奥が深いので、この話に興味を持ちましたら、少し調べてみる事をお勧めします。
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