サンタのこないクリスマス

緋糸 椎

1 信じるも信じないも自由

「吉村、おまえ本当にサンタクロースがいると思ってんの?」

 松島善太まつしまぜんたが見下すようにいった。吉村圭人よしむらけいとは鳩が豆鉄砲を喰らったように目をパチクリさせる。

「だって、毎年プレゼント持って来てくれるよ」

 すると善太がやれやれといわんばかりに肩をすくめてみせた。

「そりゃおまえのお父さんかお母さんだよ。だいたい世界中の子供全員にサンタクロースがプレゼント運ぶなんて、だろ」

 誇らしげに胸を張る善太に、オドオドする圭人。そこに同じクラスの相川祐実あいかわゆみが割り行ってきた。

「あのね、なにを信じるかはその人の自由よ。それをするのはよくないわ!」

 いかにも優等生的発言にきまり悪そうな善太。しかし、圭人にとっては悪意のない祐実の発言のほうが真実味を帯びている分、ショックであった。


 ……とある小学校二年生の教室での出来事である。おおよそ、この年代になってサンタクロースへの見解は二分される。そして、善太のような訳知り顔が〝ネタバレ〟を吹聴したがるものだ。

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