第29話 決着――終わりかたって大事だよね。
圧倒的な彼此の差、これが『秩序』の主か、これが宇宙の管理者か、ケイオスはレイとの次元の差をその身を持って痛感し、打ちのめされていた。が、しかし、
「まだだ」
これもまた
「こっからが本番だろうが!!」
その身がいくら打ちのめされようと、ケイオスの心にあるのはただ混沌のみ。諦めや失望、絶望は存在しない。しかし、彼此の差はもはや絶望的その事実は変わらない。なれば、
「あれしかねぇか」
ケイオスは奥の手を使うことを決める。
奥の手、過去に一度『混沌』同士の縄張り争いがあった時に使用し、自身を含めた敵味方全員に大きな被害をもたらし、キレたペインに二度と使うなと言われた禁じ手。
ケイオスは自身のマナにとある属性を付与、両手を用いてひたすらにそのマナを胸の前に送り込み圧縮。
「まだまだぁ!!」
ケイオスはひたすらに属性付与したマナを送り込み続け、圧縮に圧縮を重ねる。やがてケイオスの胸元に極小の黒い球が出現した。
「それは!!」
レイは驚愕した。ケイオスはそんな知識を持っていたのかと。ケイオスは重力の属性を付与したマナを圧縮することによって重力崩壊を意図的に起こし、マイクロブラックホールを作り出したのだ。しかし、マナの可能性はそこでは終わらない。
「これで!!仕上げだあー!!」
ケイオスは最後の仕上げにマイクロブラックホールに巨大化の属性を付与したマナを送り込む、すると、マイクロブラックホールが巨大化、ブラックホールに変化した。
「どうだこの野郎、これならマナの量なんか関係ねぇ。何せ全部吸い込んじまうんだからなぁ!!」
言って邪悪に笑うケイオス。しかし、この奥の手ブラックホールの発生地点が自身を中心とするため、通常であればまず先にケイオス自身が吸い込まれてしまう。だがそんなことはケイオスも知っている。何せ一度吸い込まれかけたのだ故に、ブラックホールから逃れる方法も知っている。
その方法とは、
「うおおおおお!!」
高速移動でひたすらに逃走する。まさにゴリ押し、獣らしい脳筋の発想。だが、だからこそブラックホールから逃れることが出来たのだ。
しかし、ケイオスの残りのマナはこれまでの戦闘でガス欠寸前、今は自身の体を構成するマナまで使用してブラックホールから逃れていた。
「どうだコラ!これで、手前ぇも!!」
言いながらケイオスはレイの方を見る。これなら一矢報いることが、もしかしたら勝利を納めることが出来るかもしれない。
しかし、次の瞬間、ケイオスの作り出したブラックホールが跡形もなく忽然と消え去った。
「な、んで」
ケイオスは本日何度目かの驚愕の表情を浮かべる。
「消失の属性を付与しマナをブラックホールにぶつけて消しました」
レイが当たり前のことのように言う。
「クソが、そんなんありかよ」
ケイオスが頭を抱えて言う。
「アリなんですよ。僕もこの属性を発見した時には、今の貴方のような反応をしました」
言ってレイは苦笑いし、ケイオスもそれにつられるように笑う。
「まだ……戦いますか?」
レイが今一度問う。ケイオスは既に満身創痍、戦うどころか自身の体を保つのもやっとの状態だ。
「まだまだ、って言いたいとこだが、いらねぇよ、もう混沌は腹一杯だ」
「そうですか」
言ってレイは一本の剣を作り出し右手に持った。
「それは?」
ケイオスが訊く
「慈悲の剣です。これで苦しむことなく逝けます」
「ッハ!最後の最後までいけすかねえ野郎だ」
「不要でしたか?」
「いや、ありがたく頂戴しとくよ」
「そうですか」
言ってレイはケイオスに歩み寄り、その剣をケイオスの胸に深く、深く突き刺した。するとケイオスの体が徐々に崩壊していく。
「あ、そうだ」
「ペインの、『
ペインは微笑む。今際の際に思い出した仲間たちのことを想って。
「わかりました」
レイも微笑む。この何処か憎みきれない、禁忌を犯した罪人のことを想って。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます