第2話
公民館でしばらくたって、ユウイチは、困った。
ユウイチは、幸い、ダンボールで寝ていたが、みんなの疲れは、ピークになっていた。そして、実は、A市には、「music share with you」の音楽グループが、来るはずだったが、そうは行かなった。
また、タレントで大手出版社KIの名物上司、ホルスタイン静香も、来たが、何もできなかった。
…
そんな時だった。
避難生活も暫く経ってからだった。
「これから、ここで、誰か歌いませんか?」
と誰かが言った。
実は、ユウイチは、歌手になりたかった。
学生時代は、カラオケボックスの部長だった。
しかし、部員は、3人しかいなかった。
その時、ユウイチは、色んなことを思い出した。
「お前は、何もしていないじゃないか」と何度も言われていた。
本当は、怖くて何もできなかった。
「はい」
「BGMなしで歌います」
と何故か、ユウイチは、言った。
そして、避難所の数名は、ユウイチを観た。
「~はばたいたら戻らないと言って~目指したのは、青い蒼いあの空」と歌い始めた、ユウイチは。
そして、ユウイチは、振付を交えて、いきものがかりのボーカル吉岡聖恵さんの真似をしながら、歌った。
すると、パチパチと手拍子が始まった。
その時、ユウイチの彼女、楓にようやく会えた。
数か月振りだった。
そして、吉岡聖恵さんが、YouTubeで観ると、『ブルーバード』を歌う時は、振りがあるように、ユウイチも、真似して振りを交えて歌った。
「この羽根を広げ飛び立つ」
と歌った。
その後、数名が、拍手をした。
「ユウイチ、頑張ったね」
と楓は、涙ながらに言っていた。
ユウイチは、その歌う前日、東京の食品メーカーが、倒産した。そして、失業保険をもらっていたが、どうしたら良いのか、分からなかった。
これは、避難所の公民館が、閉まる前日だった。
楓も会えてよかったと言っていた。
そして、この3市の死者は、残念ながら、何人かいた。
だが、震災は、終わった。
閉まった次の日、ユウイチは、北陸新幹線A駅から、楓と帰ろうとした。
その時、A駅の改札には、数名の仲間が、見送った。
A駅から東京に向かう北陸新幹線かがやきの車内で、楓は、ユウイチと話をした。
「ユウイチ、歌、良かったよ」
「え」
「いきものがかりの『ブルーバード』が、良かった」
「オレ、実は、歌手になるのが、夢だったんだ」
そして、見慣れた農村で、ユウイチは、おじいちゃんやおばあちゃんの農家の人たちとよく動揺を歌っていたのを思い出した。
その時、北陸新幹線かがやきの車窓から、農家の風景を見た。
麦わら帽子を被ったおじいさんが、トラックに乗っていた。
おじいさんが、「あんた、歌が上手いね」と言ったのを思い出した。
そして、北陸新幹線かがやきが、東京駅に着いた。
この現実は、何だろうって、思った。
「楓、オレさ」
「うん」
「歌手になりたかった」
「え」
「いきものがかりの吉岡聖恵みたいな歌手になりたかった」
とユウイチは、気が付いたら言っていた。
そして、暫くしてから、結婚した、ユウイチと楓は。
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