第八百四十七話 謁見で起きた事態
「静粛に、間もなく陛下が入場されます」
係の人の合図で、一触即発の事態は何とか回避できました。
でも、未だに軍人貴族の怒りは収まっていないみたいですね。
でも、謁見の間で何かをしてきた人って、その後でたいてい自滅しているよね。
臣下の礼を取りながら、僕はそんな事を思っていました。
そして、陛下と共に王妃様、グレッグちゃん、ローナちゃんが入っていました。
「皆のもの、面を上げよ」
陛下の声で、僕たちは顔を上げました。
ローナちゃんは、ちょっと緊張気味な表情で王妃様の隣にいます。
そんなローナちゃんを守るかのように、ユキちゃんとソラちゃんがローナちゃんの隣にいました。
「今回の謁見では、帝国より王国にやってきたローナ皇女を紹介する。知っての通り、現在王国は帝国と停戦交渉を行っている。その一環として、ローナ皇女は帝国より人質としてやってきた。王国は、停戦交渉が完了し和平が結ばれるまでローナ皇女を保護することにする」
陛下の宣言に、さっき僕に喧嘩腰だった貴族は悔しそうに歯ぎしりをしていました。
あー、うん。
何となく、僕に喧嘩腰だった貴族がどんな考えの持ち主なのか分かっちゃいました。
すると、陛下がニヤリとしながらあることを話したのです。
「そうそう、今後の和平の為に正しい情報を伝えないとならない。帝国で院政を敷いていた皇太后は、既にこの世にいない」
「なっ!?」
陛下の話を聞いた僕に喧嘩腰だった貴族は、驚愕の声を上げたのです。
そして、一斉に周りにいた貴族がその貴族に視線を向けました。
「おや、そんな大きな声を上げてどうしたのか?」
「な、何でもございません。失礼いたしました……」
「ふむ、それならよい。この情報は、帝国側の交渉責任者である皇子からも説明された。間違いない情報と捉えて良いだろう」
陛下は、何事もなかったかのように説明を続けていました。
きっと、陛下もこの貴族は怪しいと分かっているんでしょうね。
そして、ここから一気に事態は動きました。
「昨日、ポラリス男爵がドラゴンを操り国境から第一師団駐屯地までローナ皇女を連れてきた。そして軍の編隊でローナ皇女を王都に送っている最中に、魔物百匹以上の襲撃を受けた。ポラリス男爵のコボルトが一瞬で魔物を駆逐したが、この程度軍の兵でも容易に討伐できる」
陛下の告げた情報に、何も知らなかった貴族はざわざわと騒ぎ始めました。
一方で、僕に喧嘩腰だった貴族は再び歯ぎしりをしながら悔しそうな表情をしています。
しかし、まだまだ陛下のターンは続きます。
「そして、ポラリス男爵が集魔香を使って魔物をおびき寄せた実行犯を捕縛している。実行犯はベーベル子爵と共に捕縛されたデビル子爵の関係者だったが、別の者が集魔香を提供した」
さっ。
ドタドタドタ。
陛下が右手を上げると、謁見の間に控えていた近衛騎士が一気に動き始めました。
そして、僕に喧嘩腰だった貴族をあっという間に組み伏せて縄で縛り上げていきました。
「どうやら、貴様はポラリス男爵がいなければ計画が上手くいくと思っていたみたいだな。しかし、そう物事は上手くは行かない。特に悪事はな」
「ぐっ、くそ!」
捕縛された貴族は、尚も陛下を睨みながらジタバタとしていました。
陛下も、貴族を見下したまま視線を反らしません。
「くそ! 貴族の為の貴族の世界を作るんだ!」
「何を戯言を。国を支えているのは、多くの国民に他ならない。我々は、国が上手く動くように日々切磋琢磨していく必要がある。楽して贅沢をしようなど、以ての外だ!」
珍しく、陛下は語尾を強めながら一喝しました。
そして、拘束された貴族はあっという間に謁見の間から退場しました。
犯した罪が罪なだけに、厳罰は必至ですね。
「我々は、国民の為に常に汗をかかなければならない。そうしなければ、帝国のように甘い幻想を抱いて崩壊する運命に合うだろう。ここにいるもの全員が、そのような愚かな考えを抱かない事を切に願う」
「「「はっ」」」
最後に、陛下に集まった貴族が臣下の礼をして今回の謁見は終わりました。
間違いなく、今回の謁見は敢えて謁見の間であの貴族を捕まえるのも必要だったんですね。
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