第七百三十四話 急遽町の人の治療をする事に

 午後も張り切って捜索を行うぞと気合を入れていたら、使用人からある事を頼まれました。


「その、『黒髪の天使様』がお屋敷にいるということで、治療をして欲しいという町の方が来ております」


 使用人が申し訳なさそうに言ってきたけど、よく考えれば屋敷にはソラちゃんに乗ってやって来たし、その後も何回もソラちゃんが悪い人を王都に運んでいたもんね。

 僕やソラちゃんの姿を、町の人は何回も見ていたもんなあ。

 でも、僕だけでは判断できないし、ここは偉い人に聞いてみよう。


「アイリーンさん、クルセイド侯爵、どうすればいいですか?」

「町の人の治療をしても問題ないと思うよ。クルセイドのお爺様に話を聞いたけど、軍としては外患誘致罪の決定的な証拠を抑えているしね」

「それに、レオ宮廷魔導師が住民への治療を行う事で、屋敷の捜索をしている我々への町の人の印象も変わる。その分、レオ宮廷魔導師に負担をかけるがな」


 アイリーンさんとクルセイド侯爵は、それぞれの考えを元にあっさりと治療を許可しました。

 念の為に通信用魔導具で王城にいる偉い人にも確認をしたけど、こちらもアイリーンさんとクルセイド侯爵と同じ理由であっさりと治療の許可が出ました。

 という事で、僕はユキちゃんと一緒に町の人の治療をする事になりました。

 ついでなので、ムホン伯爵家の屋敷の人が町の人から色々と意見を聞いてくれる事になりました。

 町の人がこの町の事をどう思っているかを確認する事も、とても重要なお仕事です。


「シロちゃん、ソラちゃん、アイリーンさんと一緒にムホン伯爵の私室の確認を宜しくね」

「キュー」


 シロちゃんとソラちゃんも、触手と手をフリフリとしてやる気を見せてくれました。

 既にピーちゃんとムギちゃんも守備隊と共に町に繰り出しているので、僕もユキちゃんと頑張って治療をしようっと。

 僕は、ユキちゃんと使用人と共に屋敷を出て門の少し横に並びました。

 既に五十人くらいの人が並んでいるけど、準備が必要だもんね。

 僕は、椅子と簡易ベッドを魔法袋から取り出して必要な所に配置します。

 これで完成です。

 さあ、早速治療を始めましょう。

 町の人は僕が魔法袋から色々な物を取り出したので物凄く驚いちゃったけど、治療を始めたら落ち着いてくれたみたいです。


 シュイン、ぴかー!


「はい、これでどうですか?」

「これは凄い、肩の痛みが良くなったぞ!」


 冒険者って感じの筋肉ムキムキな人を治療したけど、とっても元気になってくれました。

 ついでだから、話を聞いちゃいましょう。


「ここ数年は、さっぱり公共事業が行われてないぞ。その辺の依頼は全くないな」


 うーん、あんまり良くない話ですね。

 町の運営に必要な公共事業のお金まで、グロー伯爵が横領していた事になります。

 あと、悪い人が多いって話も聞きました。


 シュイン、バリバリバリ!


「「「ギャー!」」」


 すると、町の中から雷の光が現れて男の人の叫び声が聞こえてきました。

 間違いなくピーちゃんの電撃だと思うし、念の為に探索魔法で確認してもピーちゃんとムギちゃんの反応が含まれていました。


「な、何だ今の光は?」

「何か、とんでもない事が起きているのか?」


 あっ、ピーちゃんの電撃を見て治療に来た町の人がびっくりしちゃった。

 ここは、直ぐに説明してあげないと。


「あの雷の光は大丈夫ですよ。僕のお友達がこの町の守備隊と一緒に行動していて、悪い人を捕まえているんです」

「そ、そうなのか。『黒髪の天使様』の友達って奴は、竜もいるしとんでもないなあ」

「『黒髪の天使様』だからこそ、とんでもない魔物を使役しているんだ」


 町の人は、何故か僕の名前を出して納得していました。

 あと、ピーちゃん達はお友達だから使役している訳じゃないんだよ。


 シュイン、ぴかー!


「アオン!」

「このコボルトも、すげー治癒師だな。やっぱり、『黒髪の天使様』の従魔はとんでもないぞ」


 ちょっとお腹の大きなおじさんがユキちゃんの頭をナデナデしながら褒めていたけど、ユキちゃんはもう凄腕の治癒師だもんね。

 あと、時々ユキちゃんの事をモフモフして癒されている人もいました。

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