第4話 魔法

 まず、この世界における魔法とはなんなのかについてから説明しようか。


 魔とは魔力のことで、森羅万象を意味する。


 この世界では闇から万象が生じたという思想というか神話か……そんな考え方があり、しかしそこから独立して善たる存在となることが我ら人間に課された使命だという説がある。


 何のこっちゃという人もいるだろうが、そういうもんだと納得してくれぬか?


 そして闇を構成する大部分の物質が魔であり、それ故に時代が下るにつれ魔=森羅万象ということになった。

 魔とは森羅万象である以上、あらゆる現象を起こせる。

 

 ――しかし、人間には魔を操れない。


 魔物や魔族は直感的に操っているのになぜ人間はそうではないのか?


 人々がそう思っていたところで現れたのが魔聖『オルゴンチュア』だ。

 彼は、人間が魔を操れないのは法がないからだ、とした。


 法とは法則のことで、わしなりに噛み砕いて説明すると……魔とは3Dプリンターと材料で、法とはそれを操って物を作り出すための設計図だということじゃ。

 うまく説明できているかは不安じゃな。


 魔物や魔族には生まれつき本能に刻み込まれており、使えるのであるという推測は正しかったらしい。

 設計図にはこの世界においては複雑とされる式が求められるのだが、オルゴンチュアは法を次々と作り出し、弟子たちがそれを広めて興隆させ、大魔法時代と呼ばれる時代を作り出した。


 今では魔法使いの数はだいぶ減ったけどな。


 その特性上、魔法を覚えるにはまず字が読めることが大前提となり、また算術をある程度収めているというのも同じく大前提じゃ。それを瞬時に、完璧に思い出す記憶力も必要となる。


 そしてそれを一字一句、違わず展開することで魔法が発動するのだ。

 わしは頭が良いとはとても言えない、はっきり言っておバカじゃが、学び続けていたから学だけはある。


 そしてなにより、記憶力には相当な自信があった。

 そしてその記憶力もループしてから高まったので、本に書いてあった魔法は全部覚えた。


 しかし、ここからが問題だ。

 魔法の威力を高めたり、消費する魔力を軽減したりするには、何度も何度も繰り返し使用することが重要だ。


 ゲーム風に言うとスキルのレベル上げをしなければならない。

 だが、上げたスキルが周回の後に引き継がれるのかがちょっとわからないのだ。

 …にとりあえずこの周は魔法を使い続けてレベルを上げ、次の周に引き継がれるのかを見てみないといけないな。


 とりあえず村近くの森に来てみた。


 ここに隠れてから逃げるという手もあるが、どうせ辛い目に合うのは同じなので鍛えたほうがマシだ。


 魔力を練って、法を展開して木にぶつける。

 若干揺らいだが、あまり威力は高くなさそうだ。

 そうして何度も叩きつけていると、頭の中でアナウンスが鳴った。


『無魔法のレベルが1になりました』


 普通、こういうアナウンスは鳴らないようだ。じゃが、数百人に一人こういう者もおるらしい。


 必ずしも優れた人間ではないらしいが、そういう人間を天に選ばれた人間と呼ぶこともあるという。

 特に大昔の、半分神話として受け取るべき時代では神官や巫女として敬われていたらしいの。


 アナウンスの声を天の声と見立てているわけじゃな。

 とりあえずステータス画面を開いてみた。


名前:アリア

性別:女 年齢:13

手作業:8 算術:62

読み書き:72 科学:62

故事:87 戦術:11

軍略:14 権謀:8

無魔法:1 異界知識(地球):56


 たしかに無魔法が1になっていた。

 このステータス画面は誰でも見られるので、天の声云々はこまめに見る人にとっては本当に関係がない。


 わしの記憶力は前世でも抜群だったし、この世界では赤ちゃんのときからから良かったが、この世界における記憶力の良さは理由は異界知識や算術なんかのスキルレベルから来るものじゃろうな。


 スキルレベルが上がるにつれて、腕力、耐久力、足の速さなんかが高まる。

 記憶力が高まるものもある。

 算術や故事なんかはまさにそれで、異界知識もおそらくそうじゃろう。


 そのスキルによって高まる能力は変わるが、わしの場合、生まれつき記憶力が相当高まってるんだろう。

 とりあえず、しばらく魔法以外はレベルが高くても意味がないから非表示にしておくかの。


 それから延々と、スキルを打ち続けた。

 そして、山賊にも打ち付けたが威力は低く、一人も倒すことなく死んでいった。


 ――アリア、死亡5回目。無魔法スキルを上げたが意味がなく、死亡。

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