孤独な野良犬

P A L

第1話

しかし、何故、また、あの東中野に住まねばならんのか?


若い頃、さんざん住んだ場所だ。


落合の火葬場が近くにあり、殺風景な地域で、


どれだけ多くの時間を彷徨し、空虚な時間を費やしたことか。



あるときは、近くの公園に行き、あるこきは駅前の青林堂書店。


川久保書店と、とぼとぼと、野良犬のような時間を費やした。



俺は、都心部で生まれ育ったため、そこが自然の恵みに乏しく、


可哀そうな場所だという事すら、まるで気付かなかったのだ。



それに気付いたのは、都下に引っ越ししてからだ。


地方出身者である妻の影響もあった。


豊かな自然というものが大いなる「恵み」であることを教わった。


都会は、舞台のセットのようにアン・ナチュラルで人工的な居住空間だ。



学校時代の知り合いはいたが、友人などいなかった。


友人のように親しくしてくれた人はいたが、連絡はなく、


勝手に去って行った。


都会では、陰険にも、本心を語らない。


全員、金や受験のライバルだ。
















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