120 ハエトリグモ
こんにちは。
昨日の事、私が休憩から戻って来ると、A君の悲鳴があがった。
見ると、天井から蜘蛛がスーッと降りてきている所だった。ちょうど人の顔の辺りまで降りて来ていたので、気が付いたらしい。
多分アンダンソンハエトリグモだろうか。丸っこくてかわいい。
店長もA君も何もしようといないので、私が糸をちぎって、そのまま端っこへ移動させようかとしたのだけれど、危険を感じた蜘蛛が自ら糸を切って、下へ落ちてしまった。
顔があたる位置も危ないけれど、床はもっと危ない。
手は嫌がるだろうし……と思って、とっさにメモ用紙を差し出して、乗せようとしたけれど、ピョンピョンとはねて嫌がる。まぁ当たり前だけれど。
仕方がないから、人前だけど「大丈夫だよ。苛めないから、ここに乗って。安全なところへ行こう。大丈夫」と言っていると紙につかまってくれた。
その紙をもって、ショッピングセンターの外に出そうかと思ったのだけれど、見ると雨。室内で生きている虫を雨の室外に出す事は躊躇われたので、店内をウロウロ。本当はバックヤードに放ってあげたいのだけれど、店長もA君も嫌がるだろうなぁと思って。
大量のチラシの後ろ当りだと大丈夫かな?と紙から降りるように促しても、あまり人が手に取らないように見本が置いてある辺りに下ろそうとしても、嫌がっておりない。その内、好きなところで降りるだろうと「私の服の上に乗っとく?」と腕を差し出すも拒否。じっと、私を見ている。なんか、ジブリに出て来るような、くたびれた道具屋のお爺ちゃんみたいで可愛いんですよねぇ。
でもずっと、その紙をもってウロウロしている訳にもいかないので「端っこにいたほうが安全だから、この辺にいたらどう?」と結局、お店のカウンターの端に紙を下ろしたら、そこから渋々降りて行った。
二人には、どこに下ろしたかはばれていないと思う。同じ店内の近い場所に放ったのだから、ばれたくない(笑)
戻って来た私にA君が「虫が怖くないんですか?」と。まぁ確かに、どちらかと言えば虫は苦手だ。
Gはもちろんムカデも苦手。でも街路樹にくっついている毛虫を見てもかわいいなぁと思うし、トンボも蝶もかわいい。なんか、話が通じる虫と通じない虫がいるんですよねぇ……。妄想というか感覚でしかないんだけれど。
話が通じる虫は大丈夫。蜘蛛は大抵の場合、話が通じる。特に人がいる建物に住んでいる蜘蛛は、人の言葉が分かると思う。だから、家で見つけても話しかけてしまう。……人前ではさすがにしないですよ。頭がおかしいと思われるので。でも、今回、紙に乗ってもらう為に話しかけましたが……
とりあえずA君には「虫でも命だから、大丈夫」と。大原則、そう思っている。神社を歩く時も、出来るだけ虫を踏みつけないように、虫がいそうな場所では下を見たり、声をかけながら歩くようにしている。勝手に彼らのテリトリーに入っているのは私だから。みんな尊いし、愛おしくて仕方ないんですよ。
でもそれが虫たちにとって、良い事なのか迷惑なのかは、分からない。人が良いと思ってやっている事も、迷惑な事だってあるだろう。あのハエトリグモちゃんにとっては、私が端っこへ連れて行ったのも、めちゃくちゃ迷惑行為だっかもしれないし。
だから、良い事をしたとはいつも思わないようにしている。
共存する為にしている事。ただそれだけ。人間も勝手を許してね、と思う。
それでも、また時々は私の前に姿を見せてくれると嬉しいなぁ。また会えますように。
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