第50話 何か落とした音
『属性〈
「っはぁ!はぁ………」
「ま、まさか………」
「………そうみたい」
属性………5個目。
「んんぅっ」
「あ、キュール?大丈夫?」
「はぁはぁ………だ、大丈夫です」
「え、まさか………」
そのまさかの様だ。
「っはぁ、はぁ、はぁ………」
「きゅ、キュールも獲得した?」
「た、多分そうみたいです………」
「え?ボクは?」
何故か、僕とキュールが属性〈慈悲〉を獲得したみたいだ。理由は分からない、いや………多分、人命救助の数とかかな?今日は病気の人を沢山治したし、たった今ナイパーを救った。〈慈悲〉の獲得は人命救助をした数に依存するはず、普通こんな一日に人の命を救うことないからね。納得と言えば納得だ。
回復魔法を使っていないクレジアントはちょっとかわいそうだけれど〈慈悲〉を獲得できてないみたい。まだ病人の人は居るからその人達を治してあげて欲しい。そしたら獲得もできるかもしれないし、人の命も助かるしでウィンウィンだからね。
「じ、〈慈悲〉の効果って………分かりますかね?」
「これね………〈慈悲〉の名を冠するのはちょっとおこがましいような効果だよ」
「え?効果を教えてよ」
属性〈慈悲〉の効果は………見えない攻撃だ。攻撃系の属性効果は〈憤怒〉だけだと言ったか忘れてしまったけれど、〈慈悲〉は〈憤怒〉の対になる属性だ。だから正確には14つの属性の中でこの二つが攻撃系の効果をもって居る属性となる。
〈慈悲〉の効果をもう少し詳しく説明してみよう。〈慈悲〉で攻撃開始をすると最初は相手は何も傷つかないし気が付かない。でも、〈慈悲〉を使用してから5分経つと攻撃をいつでも出来るようになる。時間が経つごとに連れて威力も増す。
それは普通の人だったら一撃必殺となるような攻撃で、この世界の回復術師の人が絶対に助からない患者を安楽死させるために使われることが多い。つまり、この攻撃を戦闘に活かすことが出来れば搦め手として大いに効果を発揮する。
つまり、言ってみれば戦える回復術師の出来上がりというわけだ。それこそ咄嗟の事に対応できないというのはきついけれど、チーム戦ではあまりに強い。でも、これの罠が一つある。そう、属性効果による反動だ。
属性は効果が強いほど反動が強い。〈憤怒〉なんかが良い例だ。そしてその〈憤怒〉の対となる〈慈悲〉の持つ反動は………何回に一回か。本当に低確率で自身にその攻撃が行ってしまう。つまり、ミスでもしたら確実な死が待ち受けている。〈寛容〉を持っていたら対処できるけれど、それでも結構きつい。
以上の事をキュールとクレジアントに説明する。最初は嬉しそうに聞いていたけれど、話が進むごとに連れてどんどん顔色が暗くなっていった。まぁ、使いたかったら僕が〈寛容〉2式で何とかしてあげるから大丈夫とだけ伝えておいた。
「いやぁ、本当に驚いたぁ………まぁ今はそれよりもナイパーを………ナイパーとこの二人と、あと使用人のライさんを運ぶ方が先決だよね」
「そ、そうですね!わ、私も手伝い………や、やっぱ手伝えないかもです………」
「大丈夫、今度は僕に任せて!今日のキュールちゃんは沢山頑張った後だし、逆にボクは今日キュールちゃんに付いていっただけだからね。ボクはライさんを運ぶね!」
「分かった。じゃあ僕はナイパーを先に運ぶよ」
キュールには先に屋敷に入って休んでもらって、クレジアントと僕で取り敢えず1人ずつ運ぶ。申し訳ないけれど、僕にとっては兄二人よりもナイパーの方が大事だから。ほんと………なんでナイパーはこんなことしたんだよ………バカ。
「く、クライトお坊ちゃま!?な、ナイパーさんどうしたんですか!?」
「あぁクララ。ちょっと玄関先で
「そ、そうなのですか………
「あぁ、大丈夫。まだ外に二人いるから………まぁ本当は二人の事家にあげたくないけどね」
「ええと………どなたですか?
「クスマとクスエル」
「えっ………そ、そうなのですか?お二人は大丈夫ですか?」
まぁ、すぐに死ぬことはない。いかんせん、まだ治療してないからこのままだと衰弱死するけれどそこは僕が良い感じに調整してギリギリ死なないけれど下手に反抗は出来ないようにするから大丈夫。
「うん。昼食とか色々とありがとうね。外のテーブルも僕が運ぶから大丈夫だよ」
「いえ、そこまでお手を煩わせるわけには………」
「いいのいいの。クララだって疲れたでしょ?明日も働いてもらうんだから、体調整えて!」
「クライトお坊ちゃま………
「ありがとう。ゆっくり休んで、他の皆にも伝えておいて」
「分かりました!」
ナイパーを安全な部屋まで運んで横に寝かせる。本当に、僕からしたら育ての親なんだから………ナイパーだけは死なないで欲しい。今はユーリアにキュールにクレジアントのパートナーの皆。スタグリアンにマリスタンという友達。心の支えは沢山あるけれど、やっぱりナイパーはその中でも大きい存在だから。
「………無理しないでね」
まだ気を失っているナイパーにそう声をかけて部屋を出る。貧血気味だから、今日の夜ご飯は鉄分とタンパク質が多くて食べやすいものにして貰おう。なんだろう、ビーフシチューとかが良いかも。
「クライト、さっさとあの二人を中に運ぼう!あの二人………なんだかやりたい放題だったよ。止めようとしたら逆にボクがナイパーさんに制止されちゃってさぁ」
「まぁ仕方ない。二人は腐っても貴族だからね、学園でのルールは通用しない」
「そっか………そうだよね」
「でも、ありがとう。止めようとしてくれて。クレジアントが僕達の事を思って動こうとしてくれたように、きっとナイパーもクレジアントの事を思って止めたと思うんだ。だから、あんまり責めないであげてね?」
「それはもちろん!ナイパーさんが優しい人って事はこの何日かで十分知ったよ!」
「それは良かった」
僕達は二人を中に運び入れる。まぁこの二人は一つの同じ部屋でいいや。
「さて、あとは机だけだね!」
「ボクも運ぶよ!」
「ありがと、正直一人だけだと僕の身長とか手の長さ的にもきつかったから助かったよ。一緒に運ぼ?」
「うん!それじゃあそっちの角持っ………」
「おおぃおおぃ、クライトぉ。あいつらはどこだぁ?」
「っ!?」
遂この前聞いた、声に振り変える。
そこにはやはりというべきか、クスタフ・ファイランド・レンメルその人が居た。右斜め後ろには、〈傲慢〉2式で唯一立ってい執事の彼が居た。
「………な、何でここに?」
流石に動揺を隠しきれない。クスタフがこんなところに来るのなんて、何年ぶりだろうか。いや、十何年ぶりかもしれない。でも今はそんな事は良いんだ。何でここにクスタフが居るんだ………?
「しらばっくれるなよぉ?クスマとクスエルがここに来たんだろぉ?さっき聞いてきたんだぁ、さぁ。さっさと二人を出してくれぇ。俺が叱っておくからなぁ?」
「………」
「く、クライト。あの人は………?」
「………父様だよ」
「………えっ」
「おおぃ、なぁにを二人でぶつくさ喋ってるんだぁ?」
………二人を出すことは出来る。でも、今の二人はまだ治療をしてない。くそ、様子を見ようとしていたのが仇になったか………でも、理由を説明すれば大丈夫か?いや、クスタフがそんな事で納得するはずが無い。きっと、『そんな乱暴な事するんだったら税率を下げるなんて要求は呑む必要無いよなぁ?』とか、特に内容のない理由付けをして逃げるだけだ………多分、クスタフはそれを言いに来たんだ。
「………一つ、約束して欲しいです」
「んん?なんだぁ?言ってみろぉ」
「二人がどんな状態でも、いちゃもんを付けないでください」
「あぁ?それは約束しかねるなぁ?だって………」
「………?」
だって、なんだ?その後の言葉が紡がれない。
その代わりにと言ってはなんだが、響いた音が一つ。いや、二つあった。
ゴトンッ
ゴトッゴロ
「………えっ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
読んでいただきありがとうございます!もし面白いと思っていただけたなら、♡・☆・ブックマーク・コメント等してもらえると作者のさっきーオズマが喜びます。
それから☆をしてくれた方はついでにレビューコメントも書いて下さると私はジャンピング土下座で急行直下します。
今後も面白いと思って頂ける作品を書いていこうと思っているので、是非作者フォローもお願いします!同じくさっきーオズマが喜びます。
そして、遂に50話を超えました。
ここまで呼んで下さっている皆様。本当にありがとうございます!!!
【重要】
私、さっきーオズマ。私生活が少し前に始まり、学校での学習やその他の物事に関して時間を割かざるを得なくなってきてしまいました。
今まではタイトルに【平日毎日投稿】と保険をかけておきながら毎日投稿を頑張って続けてきましたが、この作品が終わるまでにもしかしたら、もしかしたらですが何回か本当に【平日投稿】になってしまう可能性が高くなってきています。
そのため、土日に話が上がらなかったら『あ、こいつは今学校の事で忙しいんだな』と思ってどうか許してくださいぃぃぃ………
以上オズマからでした。でも上記の事はあくまで保険を張っておいただけで、出来る限りは毎日投稿するつもりなので今後ともさっきーオズマと拙作をよろしくお願いします!
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