第45話 未だ消えない
「グゥウァァアアアァァアァアア!!!!!」
「は?」
なんだ今の声は。あいつの声に似ていたが………気のせいだよな?
「やぁ」
「なっ!?な、何奴!!!」
見たところ青二才だ。しかし鎧一つ身に付けず、それなのに圧倒的なまでの威圧感。そして、何よりもおかしいのは持っている剣の先に刺さっているものだった。
それは、さっき出て行った付きの奴の頸だった。
「いや、君こそ誰だよ。堂々と人の領地に侵入して」
「クッ!てええぇえええいい!!!」
「はいこれ、君に返すよ」
「ふぐぅっ!?」
相手が剣を降ろしている所に、奇襲を仕掛ける。だが、俺の剣が当たったのはさっきまでだらりと下がっていた剣身だった。相手が剣を素早く振ったせいか、剣先に刺さっていた頸が俺の顔面に直撃する。
「グゥウッ!!!クソがッ!!!!!」
辛うじて、簡易テントごと斬り裂いて脱出に成功する。瞬きするまに俺が斬った簡易テントの残骸は更に細かく刻まれていた。目の前の男の剣には、何故か血がこれといって付いていない。信じたくない。だが恐らく、剣の振りが速すぎて血が振り落とされたのだろう。
「お、お前。名前はなんだ!!!」
「何それ。僕が応えないといけないの?」
「クソ、弱小領じゃないのかよ………!!!」
「ん?そうだね、合ってるさ」
「だったら、何で………ッ!!!」
「ガタガタうるさいな。お前、結局死ぬんだから黙ってて」
な、なんだ!?今、まるで二人になったような………いや、違う!!!本当に二人いるんだ、これ程までに強い敵が二人!!!
「クライト、もう始めようよ」
「分かった。屋敷でキュールだって待ってるし、領民の保護とかもしないといけないからね。それと狩り洩れが合ったら大変だからもう一度見回りにも行かないと………はぁ最悪」
「ま、まて!!!く、クライトだと!?」
その名前は聞いたことがある。いや、魔人軍では有名だ。一人で最上位魔法を扱う事が出来る騎士団や学園教師に並びうる強敵だと………!!!だ、だったらもう一人は………まさか、まさかまさかまさか!!!!!
「く、クレジアント………」
「え?何でボクの名前知ってるの?」
「クレジアント、なんか嫌な予感がする。さっさと倒そう。いや、極限まで痛めつけて情報をとらないといけないかな?」
「分かった!出来るだけ後半はみねうちね!」
「まぁ、余裕があったら」
クソ、クソクソクソクソクソ!!!!!クソが!!!!!ふざけるな、俺は、俺はこんな奴等と戦って勝てる程の実力はない!!!せいぜい一人、こっちのクレジアントと言う奴は万が一の可能性を引いてやっと勝てるかだ、クライトと言う奴の方は万が一にも勝てない!!!!!本能が、本能がそう言っているんだ!!!!!
「ま、待て!情報も吐く!なんでもするから!!!」
「ん~本当に?」
「クライト、油断しないで」
「ほ、本当だ!!!俺じゃお前ら二人には絶対に勝てない!!!歯向かう気にもなれないんだ!!!」
「え~君、一応今攻めてきた魔人達の仮ボスでしょ?」
「クライト、もうやろう」
「うん、そうだね。流石に長いかな」
「あ、あぁぁああああああああああ!!!!!!!!!!」
俺の願いも虚しく、戦闘のゴングは鳴ってしまう。俺にとって目の前の二人は、魔人よりも怪物だと感じた。
剣を執る。死にたくない、死にたくない………!!!!!
隙を見て逃げ出せ、逃げ出すんだ………!!!!!
どこかに絶対ある………あってくれぇぇぇ!!!!!
☆★☆★☆
「あ、あぁぁああああああああああ!!!!!!!!!!」
「騒がないでくれるかな」
「ぐわぁぁああああああ!!!!!」
僕が土剣を何本か投擲すると、一つが魔人の腕に刺さった。体は生憎鎧を纏っていて今はまともに攻撃が通らない。中級魔法をちまちま打ったりもしているけれど、全て鎧に吸収されてしまう。
「クライト、ボクがあの鎧を壊すから。その隙に仕留めて!」
「うん。ありがとう」
「く、くそがぁぁあああああああ!!!!!」
魔人のボスという事もあって、他の魔人に比べて結構守りが固い。攻撃は遅すぎるし、威力だって低いけれどね。
「ふ、ふざけんなよぉぉぉおおおおお!!!!!〈
「なっ………!!!」
そう、たかを括っているとクレジアントが〈
「く、クソ、これで死ね!
「
「
「クソ、クソォォォォ!!!!!」
「く、クライト………ごめん!」
「大丈夫」
クレジアントが魔人の魔法を撃ち消そうとしたけれど、魔力不足で魔法が発動しなかったみたいだ。僕が寸前の所で
「クレジアント、最悪僕一人でも大丈夫だよ」
「い、いいや!まだ戦える!」
「く、クソ!うわぁぁぁあああああああ!!!!!」
「はっ?」
クレジアントが剣を構え直して、魔人に向きなおる。それと同時に魔人は何故か逃げ出した。もしかしたら、疲弊している僕達からなら戦って勝つまでは行かなくても逃げ切ることは出来ると踏んだのかもしれない。
実際、学園戦技祭で開かれたゲートと同じものを出してその中に逃げ込もうとしているみたいだ。そんなの、僕は許さない。
「
「はぁっ、はぁっ、はっ………ぐぅぁあああ!!!!!」
「残念~仮にも僕の領地に踏み込んだ罰はしっかり受けて貰うよ」
「が………ぁあ………」
魔人が倒れると共に、空間が閉じていく。
「ご、ごめん。クライト………」
「ううん大丈夫。僕こそ、こんな面倒な事に巻き込む形になってしまってごめんね」
「こっちこそ大丈夫。クライトが困ってる顔は、ボクは見たくないから」
「ありがとう………帰ろう?」
「うん」
すっかり日も落ちた空の中、二人は屋敷へ戻る。
課題はまだ。何も解決していない。
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