第4話 弱いのは君の方

 今、僕はなぜか決闘するフィールドの上にいる。何が起こったのかは全く分からない、どうしてか僕がぼーっとしてたら決闘を申し込まれていた。


「それにしてもよくこんな雑魚そうな奴が俺よりも上の序列にいるな」


 しかも喋ったことも無いのによく分からない人が結構ひどい暴言吐いてくるし。


「君、結構ひどいこと言うね。僕君のことあんまり好きじゃないかなぁ」

「ははは!雑魚二人を倒して序列が上がるなんてちょろいもんだぜ!」


 僕のお気持ち表明なんか全く聞いて無い、心底人を見下したやつだ。


「それじゃあ、やろうよ」


 でも、あれだけ煽ってくれたんだ。ただ負けてあげる程僕はお人よしじゃない。


「せいぜい失望させないでね」

「はっ!雑魚がなんか言ってるわ!」

「それでは双方位置について、試合開始!」


 まずはギーアの攻撃、炎魔法の最下級であるファイアを打ってきながら剣で切りかかってきた。まぁまぁの動きだ、でも流石に遅い。


「チョップ」

「ぐはっ!?」


 ギーアの攻撃を体だけ捻って躱し、逆にギーアの首元に軽いチョップをする。ギーアとしては予想外の攻撃だったためか、無様に顔から地面に着地する。でもこれは決闘だから僕の攻撃はやめない。


「〈傲慢〉1式、発動」


 。しかし、その力は使い様によってはあまりに危険なため、何らかの発動制限がある。そしていま発動した〈傲慢〉1式、これの制限は1日一回まで、効果は


「相手を強制的に恐怖状態にする」

「ひっ!ぁ、あぁ、助けて!助けてくれ!」


 ギーアが恐怖状態になったためか、錯乱してフィールドから逃げ出そうとする。しかし今は決闘中、決闘中は相手が戦闘不能になるか降参と言わない限り終わることはないためギーアがフィールドから出ることは出来なかった。


「これで、終わりだ」

「ぁあ!こ、こっ!降参だ!」

「ギーアの降参宣言確認!勝者クライト!」


 ふう、まぁこんなもんか。家でコツコツと小さい頃から鍛錬を積んできた僕に勝てるはずがない。それに、クライトはもともと顔と魔力量だけは良かったんだから。才能の原石ではあったのだ。

 というか、なんか僕の方に視線集まってる気がするんだけど気のせい?まぁ気のせいか、だって別にそんなに凄いって言われるようなことじゃないしね。上級魔法とか、剣術を使ったわけでもないし。勝ったから見られてるだけだよね。


「勝者のクライトは彼から欲するものを一つ手に入れられます、何が良いですか?」

「うーん、特にないからお金で。生活に困らない程度で良いですよ」


 僕の目的はギーアから金を搾り取ることじゃないからね。それより、ギーア君まだ震えてるけど大丈夫かな?


「まぁ、もともと悪役だった僕にちょっとは似合ってるんじゃないかな」


 悪役らしく相手のことは気にしない。気にしても意味が無いしね、だってこの効果の続く期間はその時々によって違う。属性技は熟練度が高ければ高いほど制限が緩くなったり効果が上がったりするから、熟練度のあまりない今はギーアを心配する必要はなさそうだけど。


「他に決闘をする人はいますか?居ないのであれば教室に戻りましょう」


 ナヴァール先生がそう言うと皆が一斉に立ち上がって教室に戻り始めた。僕も教室に戻る。ギーアは………お、治った。良かったね。


「ギーアくんも戻りましょう」

「は、はい」

「それと、後でギーア君はクライト君にお金を払ってください。生活できる程度のお金で良いそうですよ」

「ぇ、それ、僕が直接?」

「はい、その通りです」

「う、うわぁああ!」


 あぁ、学生に属性の特殊効果を使うのはやりすぎたかな?でも、B組とかA組の人たちはほぼほぼ持ってそうだし普通だよね?


 しばらく歩いていると教室に着いた。さっきまで座っていた席に座る、たださっきとは違うことが一つあった。それは


「………」


 隣に勇者クレジアントのハーレム要員最有力手のユーリアが隣に座ってきたのだ。この教室は自由席だし、ダメなわけではないけれど。何でさっきまで座ってなかったのにわざわざ後ろの角にまで来たのかがイマイチ分からない。


「ねぇ」

「………あ、僕ですか?」

「うん。あと同級生だし敬語使わなくて大丈夫。私ユーリア、メイヤー伯爵家の長女だよ」


 しかも声をかけてきた、これはまずいかもしれない。ユーリアに話しかけられたという事は、勇者クレジアントとなにか関わりを持ってしまうかもしれないからだ。


「えっと、どうしたの?」

「ううん、別に。でもさっきの試合が凄かったから興味が湧いたの。しかもあなた、入学式の日私の隣だったでしょ?結局話さなかったけれど」

「は、はぁ。なるほど」


 興味が湧いたって、どうして?だって僕、剣も魔法も使わなかったじゃん。剣とか魔法で凄い!ってなるのははかるけど………


「私ね、強い人がタイプなの。しかもクライト君って謙虚で顔もカッコいいし」

「あはは、ありがとね」


 クレジアントが偵察してるのか?いや、でもこの段階のユーリアとクレジアントは関係が無いはず。だったらどういう目的だ?


「えっと、だからクライト君のことがね?え、えっと………!!!」


 何故かちょっと顔を赤らめてモジモジしだすユーリア。トイレに行きたいのかな?別に行ってもいいのに。取りあえず相槌でも打っておこう。


「うん、そうだね。僕は(まだ先生も来てないしトイレに行っても)良いと思うよ」

「え!ほんと!?えへへ」


 モジモジしたかと思ったら今度はモジモジするのを止めて笑った。漏らしては…無いね、変な事思ってごめん。でも尿意は大丈夫なのかな?


「じゃあこれからよろしくね、クライト君!」

「え?あ、あぁ、よろしく」


 まぁ大丈夫そうならいいや、クレジアントとの関係も多分無さそうだし。多分ただ友達が欲しかっただけだろう。僕が一人で勝手に深読みしすぎただけだ。

 それより少し周りが騒がしい気がする。何だかチラチラとこっちを見られているような………気のせいかな


「おい、あいつメチャクチャ強かったしあんな可愛い子引き連れてやばくないか?」

「ほんとにそうだよな、顔も男の俺でもほれるくらい整ってるし」

「小柄だし女装しても違和感無さそう。というか頭で想像したら無かった」

「ギーア倒してくれてちょっとスカッとしたわ」

「私の方が先に好きだったのに…」

「いや、まだ大丈夫!別に1番目じゃなくてもいいんだから!諦めちゃダメだよ!」


 なんだか所々しか聞こえないから何を言っているのか全然検討が付かない。でも、特に気にするようなことでもないだろうからいっか。


「クライト君!今度王都に遊びに行かない?」

「あぁ、全然良いけど」

「じゃあ明後日!えへへ、初デート楽しみだな~!」

「?」


 デート…?え、何で?僕たちって友達だよね?うーん、ということはユーリアは友達と一緒に遊びに行く事をデートって言うタイプなのかな?前世にプレイしてた僕でも知らなかったことだ

 もしくは、本当に僕の事が好きなのかな………?いや違う違う、変な事考えるな僕。ユーリアはシナリオ的に、まだ出会って無いだろうけどクレジアントのことが好きなんだから。僕のことは好きだとしても友達としてだろう。


 お、ここでナヴァール先生が戻ってきた。


「はい、今さっきクライト君とギーア君が戦った影響でギーア君は保険室にいます。誰か仲いい子がいたらお見舞いに行ってあげてください」


 ギーアと仲いい奴なんているのかな?まぁ1人2人くらいはいるか。


「あとクライト君。君は後で職員室に来て下さい、大事な話があります」


 え、僕呼ばれるようなことした?学校の備品だって壊してないし、ギーアに怪我もさせてないんだよ?どうして………


「きっと良い話だよ!だってクライト君だもん!」

「そうだと良いけど………」


 本当に、面倒事だけは勘弁してほしい

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