第18話 社畜、最後のスキルポイントを振る ※一部別視点

【スキルポイントを振ってください】


 次の日、俺は早速何にスキルポイントを振るのかを決めていた。


 昨日ゴボタとも話し合ったが、自分達に一番必要なのは食料だと思った。


 毎回イチゴもどき、キウイもどき、バナナもどき、マンゴーもどきなど食べるものを順番に変えていた。


 だが、果実ばかりでは飽きてしまう。


 水の代わりに果実ジュースを飲んでいたのもあって、さらに飽きがきてしまったのだろう。


 ちなみに池に関しては、綺麗な水でペットボトルに入った水と比べてもそこまで違いはなかった。


 ただ、飲み水と生活用水は分けたいため、別のところに小さな池をまた作った。


 そこで水浴びや洗濯をしている。


 久しぶりに体を洗って、服も綺麗にしたら心地良かった。


 昨日は全裸で寝ることになったが、爆睡できたから、人は慣れたら外で裸でも気にならなくなるのだろう。


「じゃあ、スキルポイントを振るか」


 俺は半透明の板に手を伸ばし、ある項目にタッチした。


【スキル】

 魔物召喚 1

 └ゴブリン 1

 └コボルト 1

 地形変更 1

 └地形変更セット 1

 トラップ設置

 環境設備 2

 └植樹系調整 1

 └生態系調整 1

 資源召喚 1

 └魔宝石召喚 1


 環境設備にポイントを振ってから木が生えたのを覚えている。


 ならもう一度環境設備に振ったらどうなるのかと思ったのだ。


「生態系調整ってなんかやばい気がするぞ……」


 俺はすぐにゴボタとリーゼントに抱きついた。


 ただ、今度は揺れることもなく何かが起こる様子はなかった。


 ひょっとしたらこれは失敗なんだろうか。


 そう思っているとゴボタは何かを指さしていた。


「とーたん、あれ?」


 目を凝らして見ていると、何かが動いているように見えた。


「んー、俺にはあれが何かわからんな」


 ただ、俺はそこまで目が良いわけでもないため何かはわからない。


「ここは生粋のツッパリが突っ張ってこようか」


「ん? それはどういうことだ?」


 何を言っているのかわからなかったが、リーゼントはスクーターに座るとエンジンをかけた。


――ギャオギャオ!


 今日もスクーターのエンジン音が普通ではない気がする。


 最近エンジン音のバリエーションが増えてきたのか、違う音が毎回出てくるようになった。


 スクーターにもその日の気分があるのだろうか。


 リーゼントはそのままスクーターを走らせて、何かわからない物に向かっていった。


「リーゼント大丈夫かな?」


 俺はすぐに追いかけようと思ったら、ゴボタに腕を掴まれた。


「とーたん、メッ! たべりゅ!」


 どうやらまだ果実を食べていないのに、立ち上がったことに怒っているようだ。


 食べ終わるまでは遊びに行かないように言っていたため、ゴボタはそれを言っているのだろう。


「ああ、俺が守らなかったらダメだな」


 俺達は急いで果実を食べることにした。


 そんな中、何かが声をかけてきた。


【スキルポイントを振り終わったため、明日からダンジョンが解放されます】


 ゴボタを見るが、やはり聞こえていないのか果実を齧っていた。


 今日も口元がベタベタになっている。


 初めて聞く〝ダンジョン〟という言葉と〝解放〟が気になって仕方ない。


「とーたん!」


「ああ、すぐに食べるよ」


 考え事をしていたのがバレたようだ。


 俺は急いで果実を食べることにした。


 ただ、後にスキルポイントの割り振りがどれだけ重要だったかを知ることになった。


 ♢


「新しいダンジョンがどこかで解放されたぞ!」


 私は探索者ギルドで情報を集めに来ていると、突然のダンジョン誕生に注目が集まった。


 約20年前に突如ダンジョンが現れてから世界が変わった。


 日本も資源不足でエネルギーの節約が毎日嫌なほど言われている。


 そんな中、突如現れたダンジョンが資源の宝庫だと知られることになった。


 中には魔物と呼ばれる謎の生物が存在していた。


 その魔物を殺すと胸から出てくる〝魔法石〟が資源の代わりになったのだ。


 特に雷属性の魔法石一つで企業半年分の電気が賄えるほどだった。


 そんな資源を人間達が有効に使わないわけがない。


 ただ、そこには問題がいくつかあった。


 その中で一番驚いたのが武器や銃器、機械が全く使えないということだった。


 謎の生物を倒さないといけないのに、その対抗手段が人間にはなかった。


 だが、ダンジョンが現れたタイミングと同時に、一部の人間で特殊な能力に目覚める物達がいた。


 それが私もなった〝能力者〟と呼ばれる人達だ。


 能力者は突然変な力が使えるようになった。


 私の場合は空手の技が強くなった。


 空手を習っていたが、習い事の時に軽く型の練習をしていたら、空気弾を飛ばせるようになっていた。


 道場に穴が空いた時は、驚いて私自身が腰を抜かしていたからね。


 突然の出来事に驚いたが、世界中でそういうニュースが流れたため、私もその人物の一人だと知ることができた。


 幸い空手をしなければ普通の人間のため、すぐに私は空手をやめた。


 ただ、そんな能力者達に目をつけた国の上層部が、国のために〝探索者〟という国家公務員を作ったのだ。


 ダンジョンを探索して、魔法石を持ってくる仕事。


 それが探索者の仕事だった。


 探索者ギルドはそんな探索者をまとめるグループのようなものだ。


 こんな世の中に就職先もなく、スキルもない私は必然的に探索者になるしかなかった。


 命懸けの職種のため、ほぼ危険手当で生活はできる。

 

 ただ、ダンジョンから魔物が溢れ出すこともあるため、その都度呼ばれて本当に命がいくつあっても足りない。


 それよりも魔法石を持ち帰った時の利益の方が高いため、良い生活をしたいなら探索者はダンジョンに行くのが基本だ。


「また良い魔法石が持って帰れるといいな」


「あっ……生田さん」


「心菜ちゃんお久しぶりです」


 生田さんはダンジョン産業の第一人者と言われている。


 ダンジョンから出てきた武器や鎧、素材はなぜかダンジョンでは使えた。


 一般的にダンジョン産アイテムやダンジョン産武器と呼ばれている。


 魔法石やダンジョン産アイテムを売買をしたり、探索者を守る装備品を作ったりしているのが生田さんだ。


 ちなみに生田さんは近所に住んでいたお兄ちゃんの前職の同期らしい。


 お兄ちゃんが消息不明になってから、約20年になった。


 ダンジョンが出来てから、一部被害に遭う人もいたためそれに巻き込まれたか、自殺したと言われている。


 当時のお兄ちゃんは社畜だったらしい。


 生田さんの話を聞いた時も嘘のような話だと思った。


 まだ幼少期だった私はそんなことも知らずに、お兄ちゃんのお母さんと一緒に町でビラ配りをしたこともあった。


「それで心菜ちゃんもダンジョンに行くのかい?」


「私は情報を手に入れてからにするよ」


「確かに一番目初めのダンジョンは危険が多いからな。去年見つかったダンジョンはトラップばかりで入った瞬間に矢が1000本も飛んできたらしいからな」


「今じゃ魔物がいないダンジョンとして有名ですけどね」


 ダンジョンには種類がたくさんある。


 とにかく強い魔物が多いダンジョン。


 トラップの種類が多いダンジョン。


 悪天候で全く身動きの取れないダンジョン。


 今回はどんなダンジョンになっているのだろうか。

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