第4話 さらに2人の夜は更けていく

 「わかったから、そろそろクエストやっていくぞ……」


 30分近く柚羽のイタすぎる妄想話を聞かされてきたが、そろそろ疲れてきたのでゲームへと戻ることに。


 「もしかして、私の旦那に嫉妬しちゃった?」

 「してねーし、これからもする予定はねーよ」

 「えー、してくれないとつまんないじゃん!」


 柚羽は不満そうに口を尖らせていた。

 

 対処のクエストはプレイヤーたちが住む人たちの依頼をこなしていくことがほとんどだった。


 「何か地味なクエストばかりだね、そろそろこの大剣をブンブン振り回したいんだけど」

 「いつからお前は戦闘に飢えた民族になったんだ……」

 「私の剣は血に飢えとる! さあ、お前の血を捧げるのだ〜!」


 突如、柚羽はおかしな電波を受けたかのような怪しいセリフを口にしながら、ボタンを連打していた。

 押しているのは攻撃ボタンだと思うが、残念ながら町の中では剣を振ることはできない。

 柚羽の珍行動を適当に流しながら、着々とクエストを進んでいくと柚羽ご所望のボス戦が始まった。


 「それじゃ私が剣でぶった斬っていくから、アシストよろしくね!」


 柚羽のキャラであるライガは意気揚々と大剣を振りながらボスへと駆け出していく。

 ちなみに、他のゲームでは彼女は魔法使いや僧侶など後方支援を行うキャラを使うことが多い。

 だが、今回はライガが再現できるという情報を事前に得たので珍しくアタッカーのキャラを使っていた。


 何が言いたいかというと……

 

 「ぎゃあー! 私の旦那様が倒れたー!」


 前衛のキャラを扱うのが下手なのである。

 画面にはライガと表示されたキャラが前のめりになって倒れていた。

 

 「ったく、だからいつものように後方キャラ使えって言っただろ……」


 小言を言いながら、復活アイテムを使ってライガを復活させる。

 

 「ふふふ、今のは相手の実力をしるためのちょっとしたお遊びよ、ここからは本気——」


 ボスの強力な一撃を受けてライガは再び前のめりに倒れた。

 案内でガードしろと表示されていたが、くだらないセリフをいうのが精一杯で見えてなかったようだ。


 「柚羽、そっちの本体を貸せ、このままじゃ埒があかない」


 自分のキャラでライガを復活させると、自分のウイッチ本体と柚羽の本体を交換する。

 体験版では前衛キャラでプレイしていたので、問題なく操作することができた。


 数分して、ボスを撃破することに成功した。

 俺やゲームの中の町の住民たちや俺たちの分身であるキャラクターは勝利したことに喜んでいたが、唯一1人だけ悲しみにくれていた。


 「私の旦那が汚されちゃった……」


 いかにも目に光をなくしたような雰囲気を醸し出しながら呟く柚羽だった。


 「はいはい、くだらないこと言ってないで返してくれ」

 「だったら、私も奏翔の嫁を汚してやる! ふへへへ、恨むなら奏翔を恨むんだなぁ!」


 狂気じみたことを口走った柚羽は俺のキャラであるセシリアを操作して、町中を歩き回った挙句ある建物へと入っていった。


 「なんでコスチューム屋なんだよ……」


 コスチューム屋というのはキャラに服を着せたり、逆に脱がせたりと……自分のキャラクターのドレスアップを行えるところだ。


 「わお! 何この子スタイルめちゃくちゃいいじゃん! そうなったら下着はエロくいかないと! ってことはやっぱり黒だよね〜!」


 勝手に俺のキャラのドレスアップをし始めた。


 「ねえねえ見てみて奏翔! セシリアちゃんがエロくなったよ! これで夜のお供に困ることはないね!」


 画面を見せつける柚羽からウイッチを取り上げる。

 すぐに彼女のウイッチを返した。


 画面には下着姿のセシリアが映っていたが、その姿を見ていると自分ごとのように恥ずかしくなってきたので、キャンセルをしてコスチューム屋を後にした。


 「ふっふっふ、私の旦那を汚した罰じゃ!」


 低い声で笑う柚羽を見て俺はため息をつきながら内心思ってしまうことがある。


 ——ファンクラブの連中にこの姿をみせてやりたい……と。


 それからしばらく、2人でクエストやレベル上げをやっていた。


 「ふわぁぁぁ……」


 隣で柚羽が大きくあくびをしていた。

 部屋の時計を見ると、良い子も悪い子もとっくに寝ている時間だった。


 「いい時間だし、そろそろ寝るか?」

 「まだまだ、夜はこれから〜!」


 そう返す柚羽の声は今にも眠たそうな声だった。


 「……ちょっとトイレ行ってくる」

 「いっといれ〜!」


 柚羽はのんびりとした声を出しながら、手を振っていた。


 

 「……やっぱりな」


 用を足して部屋に戻ってくると、柚羽はウイッチを持ったまま夢の世界へと旅立っていった。

 首がリズミカルに前後に揺れている。


 「何が夜は寝かせないだ……自分が真っ先に寝てるじゃねーか」


 文句を言いながら、自分と柚羽のウイッチの電源を切ってから、頭が船を漕いでいる柚羽の体を抱え、部屋をでて真正面にある『YUZUHA』とプレートが貼られた扉を開ける。


 「普通、女子の部屋って入るだけでドキドキするんだけどな……」


 指では数え切れないぐらい入っているため、そんな感情は遠い彼方へと旅立ってしまっていた。

 柚羽をベッドに下ろし、布団と毛布をかけるとそのまま部屋から出ようとする。


 「くっ! 奏翔ってやっぱり胸は大きい方がいいのね!」


 突然柚羽が大声をあげ始めた。

 起きたのかと思い、ベッドに目を向けるが柚羽は目を閉じていた。


 「寝言かよ……ってか夢で俺とどんな話をしているんだ」


 再度ため息をつきながら、彼女の部屋をゆっくりと出ていったのだった。


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【あとがき】

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