9 そうだ、仕事しよう(ゴブリン退治編 後編)
――これはひょっとすると……!
私はうっすらと半透明の1の書かれている方向に向かった。この1が意味するものが想像通りなら、ここは通れる! 予想は当たった。数値の0と1は通れる場所の当たり判定の数値だったのだ。茂みの木の隙間を通り過ぎた私はその辺りにあった木や石をありったけてんこ盛りにして道を防いだ。
私はふと気が付くと、先ほどうっすらと見えていた0と1の数値が知らない間に見えなくなっていた。先ほど見えたのは特殊な条件下で発動するのだろう。先ほどと状況が違うとすると、私は閉じていた片目を今は両目とも開いた状態だった。何故なら血と汗でしみていた目の痛みが少し落ち着いたからだ。
私は片目を手で隠して先ほどの木でてんこ盛りにした茂みの方を見てみた。
00000000000000
やった! どうやら私の能力では片目で世界を見るとその場所が通れるかどうかの当たり判定が見れるらしい。まるでゲームのデバッグモードそのものだ! 元マップエディターにはこの能力は鬼に金棒ともいえる。
「追いかけられないようにするには通れる場所を通れなくすればいいわけだな」
私は片目であたりを見ながら1が一つだけある場所を探した。どうやら丸木橋のところが0の川の上に1の一列がある唯一の場所のようだった。
ガン! ドン! ゴスッゴスッ!
キギギギギ ギャウギャウ!
ゴブリン達が先ほどのてんこ盛りの木の枝や岩のバリケードを壊そうとしていた。私が片目でその場所を見ると、数値が0と1が何度も点滅するように入れ替わっていた! このままではバリケードを壊して追いつかれる!! 早く丸木橋の向こう側に逃げないと!
私は丸木橋を渡り、残っていた油を丸木橋いっぱいに垂れ流した。環境がどうのとか言ってられない、私が生き残ることの方が今は重要だ。
ドンッ ゴブリン達はついにバリケードを破り、丸木橋の近くまで迫ってきた。しかしゴブリンは先ほど私の撒いた油に足を取られ、何度も転倒して川に転落しては橋を渡るを繰り返していた。
私はその状況で丸木橋の根元の岩を蹴り飛ばし、丸木橋を力の限り体当たりして橋を落とした。ぐらりと丸木橋は揺れながら川の中に落下した。何匹かのゴブリンが川に流されていく。
私は片目で川を見ると
0000000000000
数値が1で通れる場所が無くなっていた、これでゴブリンから逃げられた! 私がそう思っていると……
ギャギャギャー!
ゴブリンは落下しかけた丸木橋から小柄な体を思い切りバネのように体を縮めてから大ジャンプをして私のそばまで着地してしまった。
これ以上逃げれない! 万事休す、もう逃げ道はない。それでも逃げないと殺されてしまう、こんなところでは死ねない。私はすでに痛みすら感じないくらいの精神で逃げ続けた。
私はすでに体力の尽き掛けた体を、精神力と気合とだけで逃げ続けた。
この時の私は痛みすら感じないくらい焦っていて、途中で溶岩や毒の水たまりを踏んだ事すら気が付いていなかった。
誰か助けてくれ! ここに毒の沼地や溶岩でも有ってゴブリンが落ちてくれるといいんだが!
私はそう念じた、しかしそんな奇跡が起きるわけないんだよなぁ……。
私はもう既に第二の人生の最後を覚悟していた。
しかし、奇跡は起きた!
「「ギャギャギャギャギャーー!」」 ゴポゴポポ
ゴブリン達はどうやら私が逃げまくった中で踏まずに済んだ溶岩に足を取られたようだった。
ここが火山の近くだから溶岩があったのか、運がよかったのか、私は溶岩に足を取られて動けなくなったゴブリンを踏みつけながら、脳天に剣を突き立てた。
ザシュ! ブギュギュ……
ゴブリンは脳天から汚らしい体液を噴水のように吹き上げながら絶命した。
「残りはお前だ!」
もう一匹のおびえるゴブリンを私は横になぎ払った、肩口から切り付けられたゴブリンは首から上を水平にぶった切られて絶命した。
『レベルが上がりました』
ゴブリン二匹に勝利した事で私はレベルが一つ上がったのだ。
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