第49話 愛し子たち


「ファミールさん! わざわざスイーツの為に竜人国に来たの?」


 なぜ竜人国にいるのか、まさかスイーツの為だけに? っと驚き質問する。


「竜人国にとても美味しいスイーツのお店があるって、獣人国でも話題になっていて、どうしても食べたくて来たのです」


 なるほど、だからあんなに騒いでいたのか。

 わざわざ遠くから来て入れないのは悲しいもんね。だけど、騒ぐのはどうかと思うけど。


「……ですが、竜王様とルチア様の邪魔をする事になるとは、大変申し訳ございません」


 愛し子三番勝負に勝ってるせいか、私に対してだけ、態度が全然違う。さっきまでキーキー騒いでた人と同一人物だと思えない。

 私の前ではものすごくしおらしい。


 ううう……本心はすっごく嫌だけど。せっかく獣人国から来ているわけだし。

 ……仕方ないよね。


「分かった良いよ! ファミールさんも一緒に食べよ。シェラ様も良いよね?」

「ええっ! 良いのですか?」


 私がそう言うとファミールさんが満面の笑みをして喜ぶ。単純だなぁ。

 もしかしたら、心がまだ小さな子供なのかも知れない。

 そう思うと我儘な態度も少し許せる。


『ふぬぅ……ルチィが良いのなら我はかまわぬ』


 ちょっと不機嫌になりながらも、シェラ様がオッケーしてくれたので、ファミールさんも一緒のテーブルに座る事に。


 すると、再び玄関が騒がしくなり……?


「また?」

『なんじゃ?』


 シェラ様の眉間に皺が入る。これは機嫌が悪くなりそうな予感しかない。

 そんな様子を察して、オーナーのヒュイさんが慌てて入り口に走って行く。



「ちょっと! ねぇっ、通してよ! 今ね知り合いが入って行くのを見たんだから!」


 どうやらまたかなり揉めているようだ。

 あまりにも騒がしいので、ファミールさんが「ちょっと見てきます」と気を利かせて入口の方に歩いて行った。

 

 すると、ファミールさんが急に甲高い声をあげる。


「あー!? ちょっと待って……シャリオンじゃない?」


 そう言って入り口へと走っていく。んっ? 今……シャリオンって言った? 


 ——ちょっと待ってシャリオンさんまで来ちゃったの?


 それに、シャリオンさんとファミールさんって知り合いなの?! そこも気になる。だって見てる限り仲良さそうだし。


 ファミールさんが説得し店内に入れて貰ったのか、シャリオンさん達が入って来た。


 オーナーのヒュイさんは可哀想なほどに、涙目でシェラ様に何度も頭を下げ平謝りしている。愛し子に振り回されてほんと何だかすみません。


「ファミール! こんな人気店を貸し切りにするなら、何で私も誘ってくれないのよ!」


 どうやら……シャリオンさんには、私達の姿が目に入っていない?

 店内をキョロキョロしながら私たちのところに歩いてくる。


「いや貸し切りにしたのは、私じゃなくて彼方の竜王様で……」


 そんなシャリオンさんに対し、ファミールさんは少し困りながら、私達をチラリと見る。


「え?! シェラ様!!」


 やっと私たちに気が付いたシャリオンさん。

 シェラ様を見て目を輝かせる。マンガで例えるなら目がハートになってるほどに。


「まっ……んまぁ! 竜王シェラザード様もいらしたんですね! ファミールがご一緒しても良いなら、私も良いですよね!!」


 頬を染め強引にシャリオンさんがシェラ様の横の席に座る。


 この人、毎回嫌な絡みをして来るし、私と目が会うと睨むしで……ちょっと苦手だし、膝の上に座っている私の姿は目に入らないのだろうか?


「竜王様、大切なお時間を私が至らぬばかりに、この様な事になり申し訳ございません」


 オーナーのヒュイさんのせいではないのに、ずっと平謝り状態。ここまでくると流石に申し訳なくなってくる。


 シェラ様の表情が、あからさまに機嫌が悪くなったので、ヒュイさんも気が気じゃないだろう。


 私だってこの空気、正直どうしたら良いか分かんない。

 

 

 ……この愛し子の三つ巴状態……どうしたらいいの?

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