第32話 竜王シェラ様の都合


 三人の竜人はシェラ様の前で勢いよく跪くと、われ先にと発言する。


「良いですか? シェラザード様がちょっと獣人国に遊びに行って来ると言って……何日経ってるかお分かりですか?」


「そうですぞ、我々は獣人国まで迎えに行ったのです!」


「そうしましたら……! 獣王様から、シェラザード様はすでに国に帰ったと言われ、竜人国に戻って来ましたら、シェラザード様はいつまで経っても帰っていない……︎」



 竜人国の人達が、代わる代わる早口で捲し立てる。それをシェラ様は少し鬱陶しそうに聞いている。

 あまりにも興奮冷めやらぬ様子で捲し立てるのでシェラ様が落ち着かそうと声をかけるも。


『お前達、ちょっと落ち着けい……︎声もデカいしだな』


 そんなシェラ様の気持ちが伝わらず、竜人たちの興奮はおさまらない。


「落ち着けませんぞ? 我々どれだけシェラザード様を探したか……!」


「シェラザード様の影護衛アレクとヴィクにも、なぜか連絡が取れない! こんな事今までなかったんですぞ︎?」


『ん゛……んん?』


 アレクさん達の話を出され少し目が泳ぐシェラ様、まさか……獣人国ここにいることを口止めしていたのかな。


「シェラザード様にも、魔法鳥を何度も飛ばしたのに、返事は全く帰って来ないし……我々は途方に暮れていた所に!」

「先程、獣王様から魔法鳥で連絡があり、急いで飛んで参ったのですよ!」

『なっ!? ジュドール! お主っ……いらぬ事を!』

「お前が聖獣様たちの事を、俺にちゃんと話さなかったからな! これは、し、か、え、し、だ。」


 獣王様がしたり顔で、シェラ様の肩を指でツンツンと突く。


『なっ? ぐぬう……ジュドールめ!』


 ジュドールさんに言われた言葉が悔しかったのだろう。シェラ様の顔が歪む。


「ささっ! 竜王国に帰りますよ? シェラザード様︎、仕事が山のように残ってます」


 竜人の人たちはシェラ様の背中を押し、手を拘束し、今すぐにでも竜王国に連れて帰りたい様子。だけどシェラ様をその手を振り解く。


『嫌だ︎! 我はまだ帰らぬ』


「はっ? なっ……嫌? 何を言ってるんですか! シェラザード様のお仕事が、山の様にあるのです!」


「そうです! 我らは意地でも連れて帰りますからね!」


『い、や、だ。絶対に嫌だ! 帰らない!』


 三人が必死に頼んでいるけど、シェラ様が嫌だと断固として譲らない。

 これにはどうしたらいいのか分からず、困っている三人。もう涙目だ。


 これは帰ってあげないと、可哀想だよ……それに仕事サボるのはダメだよ?


「シェラ様? あのう……帰ってあげた方が良いと思うなぁ?」


『なっ!? ルチィまで帰れと!?』


 しまった。私が帰ったらと言ったから、今度はシェラ様までが今にも泣きそうな目になっている。


『…………我は、ルチィと離れたくない。ずっと一緒に居たいのだ』


 シェラ様……その気持ちは嬉しいし、嫌じゃないけど、どう返事をしたらいいのか正直分からない。


 赤くなる顔を見られるのが恥ずかしくて、つい下を向いてしまう。


 そんな私の存在に、やっと気付いた竜人の人たち。下を向いた私と目があった。


「シェラザード様? あのっ、この抱っこされているお方は……?」


 どうやらシェラ様の事で頭がいっぱいで、今の今まで私の事など目に入って無かったらしい。そんなことある?

 どれだけシェラ様しか見えてないのよ。


『我の愛しい番ルチアだ!』


「「「えっ!?」」」


 シェラ様の言葉に、目をまん丸にして驚く三人。

 そりゃそうなっちゃうよ。全体的に説明が全く足りてない。


『だから、俺のつがい・・・


 シェラ様がもう一度つがいとゆっくり言うと。

 竜人の三人が口を漫画みたいにあんぐりと開け、固まってしまった。


 少しの沈黙の後。


「なっ!? 番様!!」

「ああーーーーっ……‼︎」


 ——えっ?


 お迎えに来た竜人の人達が、全員泣き出した……⁈


 何で? 今度は急に号泣!?


「うぉぉ~んっ。そうだったのですね……シェラザード様……ウグッ…すんっ良かった!」

「番様が見つかるなんて……すんっ……何とめでたい!」

「仕事より……番様です!」



 号泣し、ずっと泣いている竜人の人達……。


 ちょっと? どーなってるの? 仕事は?


 そんなに番って凄い存在なの?

 私がどうしたらいいものかと、困惑しながら三人を見ていたら。


 竜人の人三人が私に向かって一斉に土下座した。


「番様お願いします! どうかシェラザード様と一緒に竜人国に来てくれませんか? ヒグッ…お願いします!」


 全員大号泣です……。


 そんな涙と鼻水でグチャグチャの顔で、足にすがり付かれてお願いされて……嫌って言える?

 この状況下で断れる人いる?


「…………はい。分かりました。竜人国に行きます」


 この状況でノーと断れる手段があるなら、誰か教えてください……。


 私は涙の訴えに負け、竜人国にシェラ様、白ちゃん、黒ちゃん達で行く事になるのだが……。


 まさかこの時は、このまま竜人国に六年も居る事になるとは、思いもよらなかった。






★★★


 

 読んでいただきありがとうございます。

 次話から成長した16歳ルチィの魔法学園編のお話になります(*´꒳`*)♡竜王シェラ様とのイチャイチャ溺愛が加速します♪

 

 ここまで読んで面白かったよー16歳のルチィのお話楽しみにしてるよって思って頂けたなら★★★のレビューをいただけると嬉しいです。執筆の励みとなってます。


作者別作品

「悪役令嬢アルビダは溺愛されたい 〜断罪フラグをへし折りたいので皆様愛してくださいませ〜」こちらの作品もどうぞよろしくお願いします。

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