2-2

 人だかりが出来ている間を進んで行くと、周りから注目を浴びている子がいた。ほとんどが社員からだ。騒ぎは起きていない。


(どうしたんだろう?ああ……、綺麗な子だから?)


 そこには自分よりも少し背の高い男の子がいた。明るい茶色の髪の毛に、真っ白な肌をしている。人形のように整った顔立ちに、恥ずかしそうな笑みを浮かべている。みんなから見られて、居心地が悪そうな様子だ。おずおずと、エレベーターのある方向へ歩いている。嫌な視線じゃないが、ああまで見ることもないだろう。


 気になって見ていると、その先に会いたい人を見つけた。記憶の中に居る人と同じ人物だ。最後に会ったのは5年前だから、中学二年生の時だ。


「裕理君!」

「……ん?」

「理久だよ!」


 俺からの呼びかけに、裕理君が振り向いた。すぐに笑顔を返してくれた。そして、そばに立って向かい合った。俺の背が伸びたことで、目線が近くなって嬉しい。裕理君が俺を見て驚いている。


「大きくなったね。インターンシップの参加をする年か……」

「それだけ裕理君が年を取った証拠だよ。……ねえ?ジロジロ見られている子がいるんだ」

「ここの関係者の息子だ。いい経験をするために参加するんだよ」

「そうなんだ……。親に言われて無理やりかな?俺みたいに拒否できなかったのかな?」

「そういうわけじゃ……」

「声を掛けるよ。二人いればジロジロ見られにくいし。みんなから見られてかわいそうだよ」


 裕理君にそう伝えると、自分が行くと言い出した。そして、会場で会おうと言い、男の子の元へ行った。彼が顔を赤くして小さくなっている。裕理君がそばへ行き声を掛けると、社員達が会釈をしつつ道を開けていた。見られなくなったようだ。


(よかった。それにしても、かっこいい子だなあ……。あ……)


 ホッとして見ていると、今度は俺の方が声を掛けられた。さっきの男性が立っていた。


「よかった、間に合った。一緒に行こう」

「は、はい!」


 電話を終えたようだ。受付は再び混雑が始まった。断る事もないから連れて行ってもらおう。しかし、こういうところも直したいと思った。やっぱり断ろうと思った。


「ありがとうございます。トイレに行って来ます。失礼します」

「向こうのトイレは混雑している。二階の社員用を使うといい。はい、行こう」

「いえ、お構いなく」

「気を悪くした?変な事を聞いたからだろう」

「違います!」

「そう?」


(ああ……。世話をかける。トイレに行きたいのはホントなんだよなー。混んでるよね)


 向こうは何人も立っている。寒いし会場に入る前に使いたいだろう。ここは割り切って頼ろうと思った。


「遠慮なく。俺が一緒なら怪しまれないぞ」

「ありがとうございます」

「奥の階段を使う。どうぞ」

「はい」

 

 男性から促されつつ、奥の階段へ向かった。

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