殿下! 溺愛する相手がまちがっています!

にのまえ

プロローグ

「ラビット、かわいい」

 

 狐くんに頬へキスされた。

 その夜、前世の記憶を思いだした。

 

(嘘、ここって大好きだった乙女ゲーム「けもも愛」じゃない)


 肩までのゆるふわな黒髪、長い耳と赤い瞳、丸いフワフワな尻尾。いまは子供だけど悪役令嬢で兎族のラビット・ノワール。


 それじゃ。キスをした茶色の髪、耳と琥珀色、モフモフの尻尾の男の子は。婚約者で、狐族の第一王子のフォックス・グレイス?


(彼は愛してやまない、前世での推しキャラだ)


 そんな推しキャラにキスされことに気付き。

 私の鼓動が跳ねてポンと、ベッドの上で黒ウサギにかわる。


(え、ええ?  獣化? 獣化ってヒーローとヒロインだけじゃないの?)

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