ゼロレベル
日影 光
【 Ⅰ 】0から始まる魔王討伐!
【Lv0】勇者と魔法使い
十年前、とある町が魔王軍による襲撃を受けた。
町の兵隊はほぼ壊滅状態。
周辺を魔物が徘徊していて、
住宅や商店街は火の海となっている。
王都からの救援にはまだ時間がかかると聞いた。
ここがバレるのも時間の問題だろう……
いきなり母上が両肩を掴んでこう言った。
「この力を持って逃げなさい。
大使館の裏口から出て森を西……
左手に真っ直ぐ進めば、あなたの祖母の家がある。
そこへ向かいなさい、分かった?」
そう言って少年は眩い光に包まれ、
力が少年に継承された。
少年は杖を持って逃げ出した。
背後で魔物が侵入した音がしたが、
振り返ることはしなかった……。
走っている道中で雨が降り始めた。
少年は石に躓いた。
その時、背後から何か気配を感じ取った。
馬の足音だ。王都の救援だろうか?
それなら良かったが、よく見ると追手のようだ。
少年は酷く絶望した。
そして、辺りは爆散した……。
少年が倒れていると、
そこにローブにマントを身に着けた
人物が少年をじっと見ていた……。
十年後……
「……ろ……きろ……起きろ!!」
「うわっ!?」
体を揺さぶられ
起きろという声と共に目を覚ました男は、
椅子から転げ落ちた。
「酒場で寝るのはマスターに迷惑だぜ?」
彼がそう言うとカウンターの奥に立つマスターは
尻尾を振りながら、こちらを睨んだ。
尻尾を振ってるからと言って
喜んでいると思ってはいけない
あれは怒りを表現していると
隣に座ってケラケラ笑っている
ウォルターと言う男が教えてくれた。
よく見るとマスターは顔を赤らめ、
喉を鳴らしている。
あれは、
[そろそろ殺すぞ。ツケを払え]という意味と
ウォルターが言っていた。詰んだわ
「はぁ………」
「どうしたんだよ?
お前の新しい門出を祝いに来たんだぜ?
もっと喜べよぉ!」
そう言って肩をバシバシしてくる
ウォルターの鳩尾(ミゾオチ)を全力で殴った
うめき声をあげるウォルターに俺は
「喜べるかぁ!!
勇者パーティーから解雇されたんだぜ?
俺は今日から無職!人生詰んだアァァァァ!!」
そう言いながら俺は酒を一気に飲み干し、
額をカウンターに擦り付けながら泣いた
すると、テーブル席に座る男から話しかけられる
「お前ほどの凄腕魔法使いが解雇されるなんてな!
よっぽど無能だったんだなーお前!」
「うるせぇ!」
そう言うと酒場から笑いが起こる。
後で酒場ごと吹き飛ばしてやる。
「新しくパーティーも作ったんだ!
見ていろ!!勇者の野郎!!!
俺は絶対にお前より先に
魔王を討伐してやるよぉ!!」
「へぇ?そのパーティーは何人いるんだ?」
「………俺一人」
そう言うと、また酒場から笑いが起こった。
普段は良い奴らなのに、
今回ばかりは本当に腹が立つ。
そんな時。
なんと!嫌われてるはずのマスターが
飲み物を一つ置いてくれた
「え?マジか?マスターの差し入れ?」
「………あちらのお客様から……」
そう言って全身をローブに包み。
頭に輪っかの様な兜を身に着けた
勇者のような少年がちょこんと座っていた。
「……あと……これも……」
マスターが顔を赤らめながら
赤いチューリップを渡してくれた。
チューリップには毒があるから、
[死んでくれ]と言う意味だと
前にウォルターが
腹を抱えて笑いながら教えてくれた。
………とりあえず食べた。
すると、マスターに正拳突きされた。なんで?
そうしていると、その少年がこちらに近づいて来た
ゴゴゴと音を立てそうな
雰囲気でこちらを睨んでいる……
なんだ?喧嘩か?そう考えていると、
スケッチブックに文字を書いて見せてきた。
【あなたのパーティーに入りたい】
俺は驚きと共に涙が溢れた。
希望の光が舞い込んできたようだ!
「え……本当に良いのか?」
すると少年はコクリと頷く。俺は目を見開いた!
「やったぞウォルター!
俺のパーティーに新メンバーだ!」
「んあ?新メンバーァ?マジか」
「嘘じゃない!ほら彼だ!」
そうすると彼はペコリとお辞儀をする
「良かったじゃねえか……それはそうと、
鳩尾(ミゾオチ)痛いんだが……?」
ウォルターの真っ赤な顔から察するに、
ここにずっと滞在していると
ウォルターのハンマーで殴られる確率が高い……
早くこの少年のパーティー登録をして
出ていかなくては……
「そ、それじゃあ君!
この書類に名前記入してくれ!
できるだけ手短に!」
少年は書類に記入をした。
「覚悟は出来てるんだろうなァ?」
「よし!記入したな!
俺のサインも書いて……よし!
マスター!これ受理しといてくれ!
あ、あと!今日の飲みの分もツケでよろしく!!
それじゃ!!」
そう言うと俺は少年の手を掴んで
酒場から颯爽と出て行った
逃げる最中でウォルターがハンマーを投げてきて、
俺の頭に命中してデカい瘤(コブ)を作りやがった。
森の入口付近まで逃げて来た辺りで俺は足を止めた
振り返ってみると、少年は激しく息切れをして、
今にも死んでしまいそうだったので、
とりあえず水を与えてみた。
ハムスターのように飲んでいる。ちょっとかわいい
「俺の名前はフード。
魔法使いでレベルは20だ。君は?」
水を飲み干した少年はこちらに顔を向け、
またスケッチブックに文字を書いて見せてきた。
【僕の名前はクーム。勇者で、レベルは0】
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