ワタシ悪役令嬢、いま無人島にいるの。……と思ったけどチート王子住んでた。
ぷり
①無人島生活1日目01■ お前らの顔フグにしてやろうかと思うけどスルーする。
「最悪ね」
「最悪だ!」
「最悪ですう!」
我々は悪役令嬢とクソ王子と腹黒ヒロインである。
我々は今、おそらく無人島にいる。
――なぜこんなことになったのか。
我が学園の卒業パーティーは、豪華客船にて行われていた。
この国の粋と税金とその他色々を集めて作られし豪華客船は、対魔物、対嵐、その他様々なトラブルに対応して安全安心絶対沈まない船として発表されていたものだった。
見た目もキラッキラの成金船だった。
――ですが。
もうこの時点でお察しですよね。ええもう、沈みましたとも。
沈む直前、ここにいるヒロイン、クソ王子withその他攻略対象の皆さんに私は船上で婚約破棄イベントで断罪されていた。
私の名前はアナスタシア=エルヴェスタム。公爵令嬢でいわゆる悪役だ。
金髪に紫の瞳。魔力はあって闇属性です。
ありがちですが、この世界には魔法やスキルなんてものがありますのよ。
そこのアーモンド色の髪のクソ王子、ドミニクス殿下の――まだ婚約者。
ヒロインの名前はサンディ。名字は忘れた。
ピンクの髪に青い瞳で控えめボディ……じゃなかった華奢な小動物系のレディだ。
こいつは私の婚約者をNTRし、かつ攻略対象全員でハーレムを形成しようと学園へ転入してきたありがちなヒロインだ。
なんで知ってるかっていうと、こいつがブツブツ言ってるのを聞いたからだ。
ここまで説明しているとおわかりだろうが、私には前世の記憶がある。
前世ではOLやってました。
なんで死んだかは憶えてない。
ただ、この世界に産まれた時から記憶があったものですから、赤ん坊からの人生やり直しはきついものがありました。
何故、毎日ミルク生活、ハイハイ、立ち歩き、おむつ換えを、大人の意識がある状態でされる必要が!
新しい扉開いたらどうしてくれるの?
そう。その時点で既に苦行なのに、超良いとこのお嬢さんに生まれたせいで、好きでもない王子と婚約させられて、血を吐くようなな王妃教育をされ、ともかく地獄でしたわ。
――そして不運って重なるものね。
私はこのゲームはやったことはないのだけれど、どうせ断罪されるだろう、と思っていた。
だから、死んだことにしてこの国からトンズラする予定だった。
ところがどっこい、先述の通り、船は沈んだ。
なぜ船が沈んだか。
それは超巨大魔物に襲われたからです。
あれは、タコだった。
魔法を使える教師や生徒、騎士もいたけれど、突然の奇襲に大型船は真っ二つ……だれかウル◯ラマン呼んでこいと言いたかった。
船は大きな渦を描いて沈んだ。
大多数の人間はそれに巻き込まれ――私達はこの島に流れ着いて助かったクチだけれど、他の人達のことは考えたくない。
全員助かっていることを、祈る。
さて。
3人になってしまったものの。
こいつらどうしようか。
実は私はこれまで厳しく様々な状況に対応できるように育てられてきた。
決してか弱くない公爵令嬢だ。
なお、逃亡した末は冒険者になろうとサバイバルのことも学んではいた。
お忍びで何度かダンジョン探索も経験している。
だからこの状況はさして悲観してはいない。
少なくともこいつらよりは。
「ど、どみにくぅ……っ。こんな状況になってしまって、私、私……っ」
「サニー、大丈夫だよ……オレがついてる。きっと助けはくる。二人で助け合っていこう」
こいつらは……放っておくと死にそうだな……、とか思ってたけど、今、"二人で"って言った?
ほーん。なるほど。
私は手近に見えた森へ向かって一人歩き始めた。
ここは砂浜。
太陽の位置からして、今はまだ昼間の二時くらいか。
夜までに少し状況を整えないと。
魔物もでるかもしれない。
ざっと見た所、砂浜には役に立つものも落ちてないし。
「ま、待て! アナスタシア! どこへ行くんだ!!」
「どこへ……って、私の勝手じゃない?」
「こ、こんな状況だし皆で固まっていたほうが!」
こんな状況なのに、私のことハブってたじゃん!
「あなた達が、"二人"で助け合うって言ってたから、邪魔者の私は消えるわよ」
私は公爵令嬢としての仮面を捨てて、前世の自分を表に出す。
ああ、なんか開放感。
「アナスタシア、その喋り方はなんだ!?」
「うるさいわね。ここは無人島。私はもう公爵令嬢ではなく、ただのアナスタシアなのよ」
「ふ、ふん、そうだな。そういえばお前はオレによる裁判の最中だった。お前は死刑もしくは地位剥奪して追放予定だった。なるほど、平民らしい喋り方だ」
「まあ、アナさん! さすがは元公爵令嬢様。対応が早いですぅ~」
……こいつら、顔はったいてフグにしてやろうか。
まあいいや、こいつらと揉めて余計なトラブルを起こすよりは早く一人になろう。
運がよければ舟を作って、こいつら置いてこの島を出ていこう。
逆にこいつらといれば、なんせ王子と聖女だからな。
迎えがくるかもしれないけれど、そこに一緒にいたら王国へ連れ戻されてしまう。
「そうね、そうかもね。じゃ、私はこれで。お二人共お幸せに」
「ふ、ふん!! お前など、野垂れ死ぬがいい!」
「殿下かっこいいです~~」
なんか言ってる二人を置いて、私は森へと入っていった。
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