第91話「ドキュメント 72時間」

 今、NHK+で「ドキュメント 72時間 阿佐ヶ谷の酒屋」を見た。年末にやっていたのの再放送らしい。

 このドキュメント、同じ場所に72時間、カメラを置いてその場所に集まる人にインタビューする。なかなかお気に入りの番組である。

 東京、阿佐ヶ谷の駅前の商店街。その一角にその酒屋はある。「角打ち」と呼ばれる飲み屋のスタイルで営業する酒屋。「角打ち」とは、酒屋が店内に飲酒スペースを作り、仕切って立ち飲みの場所を提供するというもの。

 この酒屋、店の奥の奥に進むと、飲酒スペースがある。昼12時開店、夜10時閉店。大抵は、皆、仕事帰りにぶらっと立ち寄る。

 十年前からこの店主は「角打ち」を営業し始めた。最近はコンビニやスーパーでビールなどを買う人がほとんどなので、この酒屋のビールを置いていたスペースが空いた。そこで店主、このスペースを使って角打ちをやろうと思い立った。

 ここには様々な人が通う。倉庫で働く中年の男性。若い頃、対人恐怖症になり、人と関わることが怖くなった。しかし、ふと立ち寄ったこの角打ちで、気さくに話しかけてくれた人がいて、ここが自分の居場所となった。現在は仕事を頑張って、年老いた母と一緒に暮らしているという。

 とある女性はイラストレーター。コロナ禍で仕事が減り、家でモンモンとしていたが、この角打ちに通うことで、なんとか気持ち的に苦しさを乗り越えられたという。

 とある老夫婦は、親の介護からも解放されて、悠々自適。たまにここに来て、二人で飲むという。なんとも仲がよさそう。楽しげな雰囲気がとてもいい。

 ここに来る人たちは、人と人との温もりを求めてやってくる。お互いに深い話はしないが、バカ話をしつつ、気持ちをリセットして、また明日も仕事に向かう。

 人生いろいろ、人と人が交わる場所には、笑顔が生まれるのだなぁ。

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